今季のCL決勝ではマンチェスター・C(左)とインテル(右)が激突 [写真]=Getty Images
6月10日、今シーズンの欧州サッカー界を締め括るチャンピオンズリーグ(CL)決勝が行われる。欧州ナンバーワンの称号をかけてマンチェスター・Cとインテルがイスタンブールで激突するのだ。長かった今シーズンの欧州サッカーもこれでフィナーレを迎えるが、果たして最高の栄誉はどちらの手に渡るのか。それでは注目のチャンピオンズリーグ決勝をプレビューしよう。
■初対戦
マンチェスター・Cが欧州のカップ戦に出場するのは今季で22シーズン目。一方のインテルは通算50シーズンも欧州の舞台に立ってきたが、両チームが公式戦で対戦するのは初めてのこととなる。CL決勝の対戦カードが「初顔合わせ」となるのは2004-05シーズン以来、18年ぶりのことだという。
2004-05シーズンのCL決勝と言えば、今回と同じトルコ・イスタンブールの『アタテュルク・オリンピヤト・スタドゥ』にて行われたリヴァプール対ミランの伝説のゲームである。ミランが前半のうちに3点のリードを奪うも、後半に入るとリヴァプールが6分間で3点を奪い返し、試合はPK戦までもつれた。最終的にリヴァプールが5度目の欧州制覇を達成するという、CL史上最高の決勝戦に挙げられる名勝負となった。
今回もイスタンブールで初の顔合わせ。しかも、再びイングランド北西部のクラブとミラノのクラブが相まみえる一戦だ。そう考えると、18年前に負けないほどのドラマチックな展開を期待したい。
■親善試合では…
公式戦では初めての対戦だが、親善試合では過去に対戦経験がある。2010年夏のアメリカツアーで初めて対戦した際には、数カ月前に欧州王者に輝いたばかりのインテルが元ナイジェリア代表FWヴィクトル・オビンナなどのゴールで3-0と快勝。当時マンチェスター・Cでプレーしていた元フランス代表MFパトリック・ヴィエラが元イタリア代表DFマルコ・マテラッツィへの危険なプレーで前半のうちに退場になるという、親善試合とは思えないような騒動もあった。
2度目の対戦は翌年のプレシーズン。アイルランドで開かれたダブリン・スーパーカップでぶつかった際には、シティが3-0で前年の借りを返した。ゴールを決めたのは元イタリア代表FWマリオ・バロテッリやボスニア・ヘルツェゴビナ代表FWエディン・ジェコといったインテルに所縁のあるプレーヤーだ。当時の選手で今回も出場の可能性があるのは、今はインテルで背番号9を背負うジェコだけである。
親善試合の対戦は1勝1敗で、どちらも3-0という一方的なワンサイドゲームになったが。果たして、公式戦の初対戦はどんな展開になるだろうか。
■イングランド対イタリア
マンチェスター・Cがイタリア勢と対戦するのは2019-20シーズン以来のこと。当時はグループステージでアタランタと対戦し、1勝1分という成績に。これまでマンチェスター・Cはイタリア勢を相手に16戦を戦い、6勝6分4敗という成績を残している。一方、インテルは2シーズン連続でイングランド勢と対戦することに。昨シーズンはラウンド16(決勝トーナメント1回戦)でリヴァプールと対戦し、2戦合計1-2で敗れた。
前身大会のチャンピオンズカップ時代を含め、CL決勝でイングランド勢とイタリア勢が対戦するのは5度目のことだ。過去4度は全てリヴァプールが決勝に進出したゲーム。リヴァプールは1983-84シーズンのローマ戦と2004-05シーズンのミラン戦に勝利するも、1984-85シーズンのユヴェントス戦と2006-07シーズンのミラン戦に敗れているため「イングランドvsイタリア」の決勝戦は今のところ2勝2敗のイーブンだ。
■CL含めたトレブルorカップ戦3冠
マンチェスター・Cは1998-99シーズンのマンチェスター・Uに続き、イングランド史上2チーム目となるCL制覇を含めた3冠を目指す。最近のマンチェスター・Cの強さは圧巻で、既に優勝が決まっていたプレミアリーグ最終節のブレントフォード戦こそ0-1で落としたものの、直近27試合で敗れた公式戦はその1回だけ。FAカップ決勝でも宿敵マンチェスター・Uを2-1で退け、プレミアリーグに続く今季2つ目の栄冠を獲得。そして今回のCL決勝では、念願の欧州初制覇と共に“トレブル”を目指す。
そのトレブルを成し遂げたことがあるクラブこそインテルだ。チャンピオンズカップ時代を含め、これが6度目のファイナルとなるインテルは、前回決勝まで勝ち上がった2009-10シーズンに3度目となる欧州制覇を果たした。ジョゼ・モウリーニョ監督(現:ローマ)に率いられ、バイエルンとのファイナルを2-0で制した彼らは、同シーズンにセリエAとコッパ・イタリアも制してイタリア勢として史上初の3冠を達成している。
インテルは今季セリエAで3位フィニッシュに終わるも、コッパ・イタリアでは決勝でフィオレンティーナを2-1で下し、既にトロフィーを掲げている。スーペルコッパ・イタリアーナでは“宿敵”ミランを3-0で下していたため、CL決勝は今季の3冠目を懸けた戦いとなる。
■無敗か、勝負強さか
トレブルを目指すマンチェスター・Cは、これが今季の公式戦61試合目。これまで今季の公式戦では7敗を喫しているが、CLでは無敗を維持している。グループステージを4勝2分け0敗で首位通過すると、ラウンド16でライプツィヒを2戦合計8-1で粉砕。準々決勝ではバイエルン、準決勝ではレアル・マドリードという難敵を退け、今大会ここまで12試合で7勝5分け0敗だ。
CLで無敗優勝となると、コロナ禍の影響で特別なレギュレーションとなった2019-20シーズンのバイエルン以来となる、史上8チーム目の快挙だ。チャンピオンズカップ時代まで遡っても、これまでの大会史67年で無敗優勝を成し遂げたのは14チームしか存在しない。
対するインテルは、今季CLで既に2敗を喫している。決勝トーナメントに入ってからは負けていないが、グループステージではバイエルンを相手に2度も0-2で敗れているのだ。ここまでCLでは12試合で19得点10失点。マンチェスター・Cの31得点5失点と比較すると物足りなく感じるが、それを補っているのが勝負強さだ。
今年に入ってからセリエAでエンポリ、スペツィア、モンツァなど格下に敗れているが、前述の通りCL決勝トーナメントでは無敗を維持。さらにトーナメント方式のコッパ・イタリアでは、リーグ戦で敗れた相手(ユヴェントスやフィオレンティーナ)を倒して頂点まで上り詰めた。CLでも、ゴール数を見るとマンチェスター・Cに後れを取っているが、勝利数はマンチェスター・Cと同じ7勝。さらにマンチェスター・Cの倍となる10失点を喫しているにもかかわらず、クリーンシートはマンチェスター・C(7)を上回る8回を記録している。特に決勝トーナメントの6試合では、準々決勝ベンフィカ戦のセカンドレグ(3-3)しか失点していない。
ちなみにインテルは今季CLの初戦(バイエルン戦)に敗れているが、初戦を落としたチームが決勝まで勝ち上がるのはCL史上4チーム目。しかし、過去3チームはいずれも決勝で敗れている。チャンピオンズカップ時代を含め、これまで67年の歴史において初戦を落としたチームが優勝したのは過去に2回しかないという。
■ゴールスコアラー
マンチェスター・Cの得点源はノルウェー代表FWアーリング・ハーランドだ。今季プレミアリーグで36ゴールを叩き出して得点王に輝いたハーランドは、CLでも12ゴールで得点ランキングの首位を独走しており、ほぼ間違いなく得点王に輝くこととなる。CL決勝でゴールネットを揺らすと、ノルウェー人としては1998-99シーズンにトレブルを達成したマンチェスター・Uのオーレ・グンナー・スールシャール以来となるそうだ。
一方のインテルには、FIFAワールドカップカタール2022に続いてCLでも頂点を目指すアルゼンチン代表FWラウタロ・マルティネス(マンチェスター・CのFWフリアン・アルバレスもではあるが…)、エヴァートン時代にマンチェスター・Cから5ゴールを奪っているベルギー代表FWロメル・ルカク、さらにマンチェスター・C在籍時に公式戦189試合の出場で72ゴールを叩き出したジェコがいる。
下馬評ではマンチェスター・Cが圧倒的に有利となっているが、今季のCL決勝ではどのような結末が待っているのだろうか。今季の欧州サッカーを締め括る“欧州王者”を決める戦いに注目だ。
(記事/Footmedia)
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※訂正とお詫び
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初出時、インテルの獲得タイトル数に誤解を招く表現がありました。
大変失礼いたしました。訂正してお詫び申し上げます。
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By Footmedia