韓国映画『裸足の夢』が観客賞を獲得! ヨコハマ・フットボール映画祭2014閉幕

キュートな笑顔も印象的だった橘ゆりか氏 [写真]=酒井陽

「加藤選手~」
「おっちーさ~ん」

 知的障がい者サッカー世界選手権に挑む日本代表を追った感動のドキュメンタリー映画『プライド in ブルー』の上映後、同映画に登場した知的障がい者サッカー日本代表の加藤隆生氏、ブラインド(視覚障がい者)サッカー日本代表の落合啓士氏の登場に会場が沸いた。

「A代表、ブラインド、知的障がい、どのカテゴリーでも、国歌斉唱のときにはみんなで並ぶというところにジーンとくるものがありました」(落合氏)

 互いに障がいを持ちながらもサッカーに打ち込む選手同士の話には、映画だけでは伝わらない“リアル”があった。

「目が見えないなかでボールを追っかけているのは、自分たちにはない感覚なので、意識を高く持たないとできないんだろうなと感じます」(加藤氏)

「知的障がいの人は、障がいの程度、種類、いろんな人がいると思いますけど、そのなかでコミュニケーションをとってやるのは、ブラインドサッカーより時間がかかるんだろうなと思いましたね」(落合氏)

 映画を見終わったあと、その興奮や楽しさをさらに深めるための味付けをするトークショーが魅力のヨコハマ・フットボール映画祭。2月8日(土)から4日間にわたり開催され、11日(火・祝)に、最終日を迎えた。

「監獄の中が、ちょっとした別荘でしたよね。あれを見ても、ヤルゼルスキ将軍は本気で連帯の幹部を罰する気はなかったんじゃないかと思いましたね」とは、10歳からポーランド映画が好きで、東欧事情に詳しい、『オシムの言葉』の著者・木村元彦氏。共産圏のサッカーの内幕を顕わにした『クレムリンに立ち向かった男たち ポーランド代表 ベスト4の真実』上映後に登場し、コアなポーランド事情を語り来場者は傾聴した。

 インドネシア・サッカーの裏側を明らかにした『インドネシア・コネクション -サッカーを蝕む男たち-』上映後は、日本代表サポーター・ちょんまげ隊のツン隊長が、落合氏とともにブラインドサッカーの魅力を語った。

「普段サッカーでは審判に文句を言う光景をよく目にすると思いますけど、ブラインドサッカーではそれがひとつもない。目が見えないわけだし、当然のように倒れたり、ひどいときはケガをするんですけど、スッと立ち上がって次のプレーに入るんです」と、ツン隊長が言えば、「審判よりボールに集中します。ボールから意識が外れると、一歩目が遅れるし、イメージができなくなるんです」 と落合氏が真剣なまなざしで続けた。

 本映画祭、最後の上映作品『サッカーに裏切られた天才、エレーノ』のあとでは、アイドリング!!!19号のサッカー好きアイドルとしてお馴染みの橘ゆりか氏が、一風変わった空気をもたらしつつ、感想を語った。

「エレーノ選手の考え方は、日本人の感覚から大きく離れていてまったく共感できないですね。けど、サッカー選手としてその時代を生き抜いた人としてはすごく輝いていたと思います。それを見て、若いうちに、全盛期をまっとうしなきゃ、大切にしなきゃなって思いました」

 映画祭では、上映作品の感想を勝ち点方式で集計、最も評価が高かった「裸足の夢」に観客賞が贈られることになった。内戦終了後間もない東ティモールで奮闘する少年チームと韓国人コーチの真っ直ぐな挑戦が、ファンの心を掴んだようだ。

また、昨年公開されたサッカー映画を対象にしたYFFFアワードは柳下毅一郎審査委員長により、以下の通り決定した。

最優秀作品賞
『ソカ・アフリカ -欧州移籍の夢と現実-』
“Soka Afrika”

ベストマッチ賞
BSV アル・デルシムスポル 対イラン代表チーム
『フットボールアンダーカバー -女子サッカー・イスラム遠征記』
BSV AL-Dersimspor vs Iran National team with “Football under cover”

最優秀監督賞
ジョージ・ドライヤー 『スマイル・アゲイン』
George Dryer with “Playng for Keeps”

最優秀チーム賞
東ティモール少年サッカーチーム『裸足の夢』
Tim Jogador Timor-Leste with “A Barefoot Dream”

 初日は大雪に見舞われたものの、ブラジルの名門サントスの栄光のヒストリーを描いた『サントス ~美しきブラジリアン・サッカー』、日本初公開の『ロスト・ワールドカップ -消えた1942年大会-』、サッカー映画の定番『ベッカムに恋して』など、全4日間で計9作品が上映され、多くのサッカーファン、映画ファンが足を運び、大盛況のうちに幕を閉じた。

 ワールドカップ・イヤーである2014年は本映画祭以外にも様々なイベントを企画しているとのこと。今後の活動にも是非注目してもらいたい。

文●酒井陽

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