ブラジルの STJD(上級司法スポーツ裁判所)がコリンチャンスの選手に下した判決が物議を醸している。その判決とは、試合中に主審の背中を殴ったMFペトロスに180日間の公式戦出場停止に処するもの。判決を受けた被告側とコリンチャンスは即日控訴している。ブラジルのスポーツサイト『Globoesporte.com』が伝えた。
問題となったシーンは、8月10日に行われたブラジル全国選手権の第14節「サントスvsコリンチャンス」の前半。ペトロスが右足で蹴ったボールをジャジソンは足元でトラップしようとしたが、近くにいた主審のハファエウ・クラウス氏と接触。主審は決してジャジソンのトラップを邪魔しようとしたのではなく、ボールを避けようとしてのアクションであったが、結果的にジャジソンのトラップを妨害。そしてペトロスのパスは相手選手に渡ってしまった。
すると次の瞬間、ペトロスは背後から主審に近づき左腕で主審の背中を殴打。主審は殴られて体勢を崩したが、ペトロスの暴力を咎めることもなく試合を流し、殴ったペトロスは何事もなかったかのように主審から離れていった。ちなみに、主審に妨害された当事者のジャジソンは右手を振り上げて苛立つ様子を見せたものの、主審に対して明確な暴力行為には及んでいない。
ペトロスが主審の背中に暴力を振るった場面は、ブラジル国内のニュースでも複数回放送。テレビ番組の出演者の中には「このプレイはレッドカードが出されるべきじゃないのか」と苦言を呈する者も続出した。
事態を重くみた STJD(上級司法スポーツ裁判所)は上記について審議を開始。そして問題の発生した日から8日が経った8月18日、ペトロスの行為がブラジルスポーツ法の第254条に違反しているとして、3対2の多数決でペトロスに180日間の公式戦出場停止という重いペナルティを科す判決を下した。
上記判決を不服とするコリンチャンスとペトロスは即日中に控訴。コリンチャンスは「全会一致でないのなら判決は覆せる」と豪語したほか、ペトロスは判定を覆すべくジョアン・ザンフォルリン弁護士に弁護を依頼したことを公表した。補足までにジョアン・ザンフォルリン弁護士は、昨年12月に規則違反でセリエB降格の処分を下されたポルトゥゲーザの主任弁護人を務めた弁護士だ。
同弁護士は「ペトロスの行為は暴力に該当しない。FIFAはこの判決を容認してはならない」として判決の撤回を主張。そしてペトロス本人は記者会見で目に涙を浮かべながら身の潔白を強調した。
「あの日以降、報道が過熱して私は犯罪者、殺人者、果ては連続殺人犯のような扱いを受けている。私はそんな報道と世間の風潮に異議を唱えたい。私の利き手は右手であり、左手では主審を殴ろうとしても殴ることはできない。私は主審と衝突しそうになったのを回避しようとして出した左腕がぶつかってしまっただけであり、あれを暴力と捉えるのは誤った見解だ」
STJD の判決が確定してペトロスは今季絶望となるのか、それとも被告側の反論が認められて判決が覆るのか。
(文/Cartao Amarelo)