[写真]=Getty Images
かつては国内で最も人気のある“Kリーグの顔”だった
Kリーグ屈指の名門クラブは凋落の一途をたどるのだろうか。
Kリーグは今シーズンもスプリット・システム(ホーム&アウェイ総当りのレギュラー戦を終えたあと、上位6チームと下位6チームによる順位決定ラウンドを行う)を採用しているが、水原三星はレギュラー戦22試合を終えて5勝6分け11敗の勝ち点21で11位と低迷。5試合制のファイナル・ラウンドでは7~12位で構成されたBグループ行きとなってしまった。
前回のコラムで紹介したとおり、今シーズンは
かつては国内で最も人気のある“Kリーグの顔”だった。韓国が世界に誇る大企業サムスン電子を親会社にして産声を上げた水原三星は、1996年にKリーグに加盟。1年目でリーグ準優勝を果たし、1998年には創設3年目にしてKリーグ制覇を成し遂げた。以降もリーグ優勝を3回(1999年、2004年、2008年)、FAカップ優勝を5回(2002年、2009年、2010年、2016年、2019年)経験している。ACLの前身であるアジアクラブ選手権も2度(2001年、2002年)制覇した。
初代監督にキム・ホ、2代目監督にチャ・ボムグンと、韓国サッカー界の名将たちが指揮官の座に就き、GKチョン・ソンリョン(現・川崎フロンターレ)、DFイ・ジョンス(元鹿島アントラーズ)、MFキム・ナミル(元ヴィッセル神戸)、FWアン・ジョンファン(元横浜F・マリノス)など、豊富な資金力をバックに韓国代表クラスの選手を次々と獲得。その豪華さから、「レアル・スウォン」と呼ばれた時期もあった。
ただ、現在のチームに当時の面影はない。MFのヨム・ギフンやキム・ミヌ(元サガン鳥栖)といった代表経験者はいるものの、かつてのような大型補強に乗り出すことはなく、今シーズンはチーム唯一の現役韓国代表選手であるホン・チョルを
「サムスン・スポーツの没落」
もっとも、かつての名門の凋落の原因は、監督や選手だけによるものではない。かつてはサムソン電子という大きな後ろ盾があったが、2014年から同じサムスングループ傘下の大手広告代理店「チェイルキフェク」(第一企画)がチーム運営の母体に。すると、年間300億ウォン(約30億円)以上もあった支援金が大幅に縮小し、2019年度は年間180億ウォン(約18億円)にまで減額したのだ。選手の補強もままならず、今シーズン開幕前にはイ・イムセン前監督が「選手を売って赤字を埋めなければチームを維持できない」と漏らしていたほどだ。
ちなみに、プロ野球チームの
そんななかで水原三星がKリーグ2降格となれば、「没落の象徴」となるのは確実だ。パク・コナ監督も「2部降格は想像したことすらない」とコメントしているが、Kリーグ名門クラブの底力を見せることはできるだろうか。
文=慎 武宏(ピッチコミュニケーションズ)