[写真]=Getty Images
「ゼロコロナ政策」によって生じた混乱
代表がカタール・ワールドカップ最終予選から早々に敗退し、暗いムードが漂っている中国サッカー界に、さらなる落胆が訪れている。政府の「ゼロコロナ政策」によって、国内リーグの開催が大幅に遅れてしまっているのだ。
2022年シーズンの中国スーパーリーグ(CSL)は当初、アジア予選最終戦のオマーン戦の25日後となる4月23日に開幕する予定だった。しかし代表の練習拠点がある上海で、予想外のロックダウンが施行されたことにより、チームは別ルートでの帰国を余儀なくされた。数日の待機を経て、中国代表の面々は4月4日に海南島へ着陸し、21日間の隔離生活を送った。これにより、多くのチームの主力選手が予定よりもかなり遅れてクラブへ戻ることとなり、リーグ側は開幕の延期を決めている(現時点では5月6日)。
過去2シーズンは延期の後に、集中開催の2シーズン制で王者を決めることになったが、今季のフォーマットは今のところ不透明だ。過去最大の18チームが争うことは決まっており、そのチーム数でホーム&アウェー制のシーズンを進めていく意向を、中国サッカー協会は各クラブに書面で伝えた。
しかしながら、それは遂行可能な計画というよりも、願望に過ぎないのではないか。政府が厳しいコロナ対策を採り続ける限り、単発のスポーツイベントを開くことさえ難しいのに、各チームが頻繁に長距離移動をしながらシーズンを消化していくことなど、不可能に近い。
おそらく現実的には、過去2シーズンと同様の形に修正されることが予想される。だがそれさえも、実現性には疑問符が付く。ここ数カ月、中国政府は新型コロナウイルスの蔓延を抑え込もうとして、主要都市を次々に封鎖。各省もスポーツイベントの開催に消極的で、昨シーズンの集中開催の会場となった広州と蘇州は、早くも今季の開催地になる可能性を否定している。それら以外に、まっとうなインフラを備え、前向きで協力的な都市を見つけるのは、困難に違いない。
金満オーナーが群がる時代は過去のものに
財政面にも、暗雲が漂っている。協会はもともと、各クラブに「前シーズン分の未払い経費は当シーズン前に必ず完済すること」を命じ、「さもなければリーグから除外されることになる」と伝えている。過去2年、実に22ものクラブが財政面の問題により、解体されるか、リーグ不参加の処分を受けた。
ただし今季は、昨シーズン分の未払いを完済していないのは、4クラブしかないと報じられている。また協会も態度を軟化させ、完済時期をリーグ開幕日から年末に変更。昨シーズンの選手の人件費については、7月31日までに3割を返済しなければならず、できなければ、新戦力をシーズン半ばに登録することが許されなくなり、勝ち点3も剥奪される。残りの7割は10月31日までに完済する必要があり、できない場合は、勝ち点6が剥奪される。そして12月31日を過ぎても、そのほかの支払いが滞っていれば、降格か、プロ資格の剥奪となってしまう。
金満オーナーがこぞってサッカーに群がってきた時代は、中国ではすでに終わってしまったため、各クラブの財政面の未来は暗い。過去10年ほど、大手不動産業者や大型家電メーカーなどが広告としての意図だけでなく、このスポーツを好む国家主席との距離を縮めるために、札束を際限なく費やしてビッグネームを獲得してきた。しかし、そうした日々はもう過去の話だ。
CSLの各クラブはオーナーの資金だけに頼ってきたケースが多く、本当の意味でこの競技を発展させようとしてこなかったように思える。そんなクラブの姿勢に、政府もしびれを切らし、その結果としてクラブ名の変更(企業名を含むことが禁じられた)や、サラリーキャップが導入されたのかもしれない。
一難去ってまた一難――。混乱のなか、19回目のCSLが始まろうとしている。
文=Ming Zhao(趙明)
翻訳=井川洋一
By サッカーキング編集部
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