バルセロナの擁する強力3トップ [写真]=Getty Images
文=西部謙司
マルティ・バラルナウ著の『ペップ・グアルディオラ』によると、ジョゼップ・グアルディオラは「U字のボール回し」を嫌っていたそうだ。ウイングからバックパス、さらにバックパス、DFを経由して反対のサイドへ。こうしたポゼッションのためのポゼッション、生産性のないパスワークに対してペップは、「クソだ」とバイエルンの選手たちを前に嫌悪感を露わにしたという。
チャンピオンズリーグ決勝でバルセロナがユヴェントスを葬ったのは、まさにこの「U字のボール回し」だった。
リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの威力は「違い」であってユヴェントスの敗因とは言えない。それが敗因なら試合をやる前に勝負は決まってしまう。ユヴェントスはバルセロナの強力な3トップにスペースを与えないための守備をしていた。がっちりとブロックを組んで守り、終始試合をクローズな展開にする、その中で少ないチャンスを生かして1点とって勝つ。これが基本的なゲームプランだったはずだ。
しかし、バルサは開始4分でユヴェントスのプランを打ち砕いてしまう。
U字のパス回しで左右に揺さぶり、最後はメッシのサイドチェンジで守備陣のスライドが遅れた隙をついてアンドレス・イニエスタが侵入、最後はイヴァン・ラキティッチが決めた。
ユヴェントスの中盤はダイヤモンド型。4-3-3のバルセロナとのマッチアップではバルセロナの両サイドバックがフリーになる。バルセロナのサイドバックが守備ゾーンに入ってきたら、通常はサイドハーフが対応して余っているアンドレア・ピルロがマークを引き取る形になるが、ユヴェントスの場合はトップ下のアルトゥーロ・ビダルが引くことで対応していた。同時に2トップも引いてセルヒオ・ブスケツをマークする。守備力は高くないが司令塔として欠かせないピルロを戦術的に成立させるための仕組みである。
ただ、この守り方ではバルセロナのセンターバックがまったくのフリーだ。バルセロナはバックパスを使いながらサイドからサイドへ、ペップが忌み嫌うとされているU字ポゼッションを続ける。その結果、フィールドの横移動を繰り返したビダルが消耗。20分経過した時点でビダルは横移動できなくなり、ピルロと並ぶボランチと化してしまった。
中盤がフラットになってユヴェントスのブロック内での圧力が下がる。ただし、リスクを負っても攻めようという姿勢は鮮明になり、モラタの同点弾で五分の流れにはできていた。しかし、それで墓穴を掘ったともいえる。
ゲームをオープンにすればユヴェントスに勝ち目はない。実際、オープンになってからは双方にチャンスがあったが、メッシを筆頭としたFWの威力で勝るバルセロナが2点を追加した。
打ち合ったら勝負にならないユヴェントスがそれをやってしまったのは、バルセロナに先制されてしまったからであり、その要因となったのは例の生産性ゼロであるはずのU字パスワークだった。U字パスに生産性はなくとも、敵のシステムを根腐れさせる破壊力はあったわけだ。
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