2014年12月、ルーブル急落の抗議をするロシア国民 [写真]=Getty Images
■ルーブルと原油価格下落は当分続く
昨年末から今年の初めにかけて、ロシアの通貨・ルーブルが急落している。2014年初めには、1ドル=32.9ルーブル付近だったが12月16日には急落し、一時1ドル=80ルーブルを超えてルーブルの最安値を更新。価値が半分以下になってしまった。2015年に入ってロシア中央銀行の大幅利上げを受け、一時は戻ったものの、2月9日時点では1ドル=66ルーブル付近に値をつけている。
これは、複雑かつ長期化するウクライナ問題に加え、原油価格の下落が大きく影響している。ロシアは世界でもトップクラスの原油生産国であり、最近の経済成長の原動力も原油生産と輸出によるものだったため、急落はそのままルーブルの暴落へと直結している。
2014年1月に1バレル=104ドルだった原油価格が12月には1バレル=60ドル台となり、42%も下落した。OPECが減産しないことを決定したため、その後も下がり続け、現在は1バレル=40ドル台で推移しており、昨年の半値以下だ。原油価格の下落にはシェールガスとのシェア争いもあるといわれており、市場ではさらに価格下落が進む可能性が高いと予想されている。
■潤沢オイルマネーでプレミアリーグを席巻した外資オーナー達
このような状況は「オリガルヒ」と呼ばれるロシアの新興財閥や、産油国の大富豪の資産にもマイナスの影響を与え始めており、彼らが所有するサッカークラブも多少の影響は免れないだろう。特にロシアに関しては、原油安と通貨安のダブルパンチを喰らっており国内経済は深刻な状況にある。
影響がありそうなクラブと言うと、すぐさま頭に浮かぶのはイングランド・プレミアリーグで、ロシア人の実業家ロマン・アブラモヴィッチ氏がオーナーのチェルシーや、ロシア一の大富豪といわれているアリシェル・ウスマノフ氏が大株主のアーセナルあたりであろう。
また、同様の理由で本田圭佑もかつて所属したロシアの名門CSKAモスクワ、石油会社を所有するレオニード・フェドゥン氏が会長を務める強豪スパルタク・モスクワ、そして近年大型補強で話題をさらったモナコらも影響を受けているだろう。モナコのオーナーも石油系ではないが、ロシア人だ。
■ルーブル暴落でオーナーが巨額損失
イギリス紙『ガーディアン』など複数メディアによると、今回のルーブル暴落で、アブラモヴィッチ氏は保有資産に対して48時間で約535億円の損失、ウスマノフ氏にいたっては48時間で962億円を失ったとされている。庶民にはまったく想像もつかない巨大な損失額であるが、今後さらに損失が膨らむ状況になるのは容易に予想される。
■クラブの補強戦略に大きく影響か
現時点では、為替下落や原油価格下落が直接的にクラブに影響をおよぼすことはない。UEFA(欧州サッカー連盟)に所属する各クラブでは、2011年よりファイナンシャル・フェアプレー(以下FFP)が導入されており、オーナーのポケットマネーによる移籍金の支払い、および赤字補填は禁止されているためである。
それでもオーナーの資金力に頼る各クラブはあの手この手で抜け道を見出しており、オーナーの持つ影響力は依然存在する。
例えば、夏にジエゴ・コスタ、セスク・ファブレガス、フィリペ・ルイスらを獲得し、今冬にはフアン・クアドラードをチームに加えたチェルシーは、天然ガスの生産・供給において世界最大の企業とも言われる「ガスプロム」とスポンサー契約を締結している。ガスプロム社の経営陣にアブラモヴィッチ氏の名前は見当たらないが、氏が取締役を務めていた石油会社「シブネフチ」は現在ガスプロムの傘下にあり「ガスプロムネフチ」と名称を変えており、関係性がまったく無いとは言えないだろう。
また、中東の大富豪がオーナーを務めるマンチェスター・C、パリ・サンジェルマンなどのクラブでも、オーナーとクラブスポンサーの関係性が指摘されている。
たとえば、これらチームの補強候補とされるビッグネームと移籍金の噂は、DFマッツ・フンメルス(ドルトムント)の約88億円、MFポール・ポグバ(ユヴェントス)の約103億円、MFガレス・ベイル(レアル・マドリー)の約157億円と、どれも巨額な資金が必要となっている。さらに移籍金としては過去にないぐらい天文学的数字になりそうなのが、言わずと知れたスーパースター、FWリオネル・メッシ(バルセロナ)だ。バルセロナ監督との確執が噂されているメッシを獲得するために、一説にはチェルシーやマンチェスター・Cが、約350億円を準備しているとも報じられていた。冬の移籍市場は先日終了したが、今後も大きな金額が動く有名選手の移籍情報には注目である。
世界経済の動きとリンクする各クラブオーナーの懐具合に、これからも目が離せない。
(記事/ZUU online)
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