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今季唯一マンUを2度撃破…“ウェールズ最強”スウォンジー、快進撃の12年を振り返る

2015.03.09

今季も好調を維持するスウォンジー [写真]=Getty Images

文=藤井重隆

 今シーズンのプレミアリーグでマンチェスター・Uを2度撃破したチームがある。

 イギリスを構成する4つの国の1つ、ウェールズの頂点に君臨するスウォンジーが、2月21日にホームで行われたプレミアリーグ第26節でマンチェスター・Uから2-1で逆転勝利を収めた。スウォンジーは今シーズン開幕戦にも同じく2-1でマンチェスター・Uを下しており、これまでに同クラブから2連勝を収めた唯一のクラブとなっている。

 遡ること12年前、スウォンジーはイングランドのプロリーグの底辺である4部で残留争いをしていた。そんなチームがどのようにしてプレミアリーグの常連クラブへと上り詰め、同リーグを牛耳ってきたマンチェスター・Uを攻略するチームへと成長したのか。スウォンジーの過去12シーズンを振り返る。

<2002-03シーズン>
最終成績:4部21位

 当時イングランド4部に在籍したスウォンジーは、2003年1月まで最下位に低迷し、「ノンリーグ(アマチュア)降格間違いなし」とされていた。最終節までもつれ込んだ残留争いでスウォンジーはハル・シティにホームで4-2と勝利を収め、降格圏から勝ち点1差で残留を決めた。この残留劇が驚愕に値する快進撃の始まりとなった。(ハル・シティも現在プレミアで戦っている)

<2003-04シーズン>
最終成績:4部10位

 スウォンジーは当時、現役終盤を迎えていたスペイン人の守備的MFロベルト・マルティネス(現エヴァートン監督)を3年契約でクラブの中核に迎え入れ、シーズン途中まで上位争いを繰り広げたが、終盤に6連敗を喫して失速し、10位でシーズンを終えた。

<2004-05シーズン>
最終成績:4部3位=3部昇格、ウェールズ・プレミアカップ優勝

 地元ウェールズ人のケニー・ジャケット監督(現2部ウォルヴァーハンプトン監督)体制で臨んだフルシーズンは、1912年から使用していた旧本拠地ヴェッチ・フィールド・スタジアムでの最後のシーズンとなり、首位ヨーヴィル・タウンと勝ち点3差のリーグ3位で終え、3部昇格を果たしたほか、ウェールズ・プレミアカップ(1997年-2008年)を制し、4年ぶりの栄冠を手にした。

<2005-06シーズン>
最終成績:3部6位、ウェールズ・プレミアカップ優勝、フットボールリーグ・トロフィー優勝

 マルティネスの最後のシーズンとなった同シーズン、スウォンジーはラグビー・ユニオンのオスプレイズと共に、2700万ポンドを投じて新設した2万1000人収容の現リバティ・スタジアムへと移転。スウォンジーはシーズン序盤から上位争いに食らいつき、後半戦に失速したものの、6位で昇格決めのプレーオフ出場権(3位から6位によるトーナメント戦)を獲得した。プレーオフ決勝ではバーンズリーにPK戦の末に敗れ、昇格を逃したものの、スウォンジーはプレミアカップで2連覇を達成したほか、イングランド3部と4部の48チームによって争われるフットボールリーグ・トロフィーを12年ぶりに制した(2度目)。

<2006-07シーズン>
最終成績:3部7位

 スウォンジーはシーズン終盤まで上位争いに食らいついたものの、ホームで行われた最終節でブラックプールに3-6で敗れ、2年連続のプレーオフ進出をあと一歩の所で逃した。

<2007-08シーズン>
最終成績:3部優勝=2部昇格

 スウォンジーはトリニダード・トバゴ代表FWジェイソン・スコットランドが通算24ゴールをたたき出し、同リーグ得点王に輝く活躍を見せ、2位ノッティンガム・フォレストに勝ち点10差をつけて優勝を果たした。シーズン途中にはジャケット監督か前年にクラブを去ったマルティネスへバトンが渡され、マルティネスは監督初就任で優勝という快挙を成し遂げた。

<2008-09シーズン>
最終成績:2部8位

 マルティネス監督体制で臨んだフルシーズンは、昨季活躍したFWスコットランドが再び21ゴールを挙げる活躍を見せ、リーグ8位という好成績で終えた。同シーズン終了後にマルティネス監督はプレミアリーグのウィガンに引き抜かれ、スコットランドも後を追うようにして、当時のクラブ史上最高額となる移籍金200万ポンド(約3億2000万円)でウィガンへ移籍した。

<2009-10シーズン>
最終成績:2部7位

 マルティネス監督の後任となったのは、元ポルトガル代表MFのパウロ・ソウザ監督(現バーゼル=FW柿谷曜一朗所属)だ。ソウザ監督はプレーオフ進出圏内6位と勝ち点1差の7位でシーズンを終えた。スコットランドの離脱により得点力は低下したものの、ソウザ監督は組織的な守備を構築し、シーズンを通してホーム失点数を12にとどめ、リーグ最少を記録するなど、チームの基盤を築いた。

<2010-11シーズン>
最終成績:2部3位、プレーオフ優勝=プレミアリーグ昇格

 スウォンジーは、ソウザ監督がプレシーズン中に当時2部のレスターへ移籍したため、後任にブレンダン・ロジャーズ監督(現リヴァプール監督)を1年契約で就任させた。するとスウォンジーは2部3位で昇格プレーオフへ進出し、ウェールズのクラブとして史上初のプレミアリーグ入りを果たした。ウェールズの首都に本拠地を置く宿敵カーディフより先にプレミアリーグ昇格を決めたことは、歴史的にも大きな意味を残した。

<2011-12シーズン>
最終成績:プレミアリーグ11位

 ロジャーズ体制2年目にしてプレミアリーグデビューを飾ったスウォンジーは、開幕4戦未勝利でトップリーグの洗礼を受けたものの、当時のクラブ移籍金最高額350万ポンド(約4億5000万円)で獲得したイングランド人FWダニー・グレアムが通算14ゴールという好成績でチームの攻撃陣をけん引すると、マンチェスター・C、アーセナルリヴァプールから金星を挙げるなどし、11位でプレミアリーグ残留を決めた。

<2012-13シーズン>
最終成績:プレミアリーグ9位、リーグ杯優勝

 前シーズンのロジャーズ監督の功績が評価され、リヴァプールが同監督を引き抜くと、スウォンジーは元デンマーク代表MFのミカエル・ラウドルップ監督(現カタール1部レフウィヤ監督)を招聘。メディアや批評家らは一様に「スウォンジーは降格する」と予想したが、ラウドルップ監督は下馬評を大きく覆した。

 スウォンジーは前シーズンのチームの中核だったイングランド人MFスコット・シンクレアとウェールズ代表MFジョー・アレンをそれぞれマンチェスター・Cとリヴァプールへと放出。2選手から捻出した2300万ポンド(約30億円)でラウドルップ監督はスペイン人の攻撃的MFミチュ、CBのチコ・フローレス、オランダ代表の守備的MFジョナサン・デ・グズマン、韓国代表MFキ・ソンヨンら即戦力を補強し、史上初のリーグ杯制覇を成し遂げ、UEFA(欧州サッカー連盟)ヨーロッパリーグへの出場権を手にした。

<2013-14シーズン>
最終成績:プレミアリーグ12位

 史上初のヨーロッパリーグ参戦に向け、補強を進めたスウォンジーは、コートジボワール代表FWウィルフリード・ボニーをクラブ移籍金最高額となる1200万ポンド(約18億円)、イングランド代表MFジョンジョ・シェルヴェイを500万ポンド(約7億5000万円)で補強。新たに12選手をチームに迎えてシーズンに臨んだが、過密日程の影響でシーズン半ばの10試合を1勝3分6敗という成績不振に陥ったため、ラウドルップ監督を解任した。

 スウォンジーはクラブに10年間在籍したガリー・モンクを監督に昇格させると、チームはFAカップ5回戦でエヴァートンに、ヨーロッパリーグ32強でナポリにそれぞれ敗れるも、リーグ戦では5勝3分6敗と無難な成績を残し、リーグ12位でシーズンを終えた。

<2014-15シーズン>

 モンク監督体制で臨む初のフルシーズンに向け、チームは12選手を放出し、11選手を補強。アーセナルからポーランド代表GKウカシュ・ファビアンスキ、リヨンからフランス代表FWバフェティンビ・ゴミス、トッテナムからMFギルフィ・シグルズソン、ナポリからアルゼンチン代表DFフェデリコ・フェルナンデスら即戦力を獲得した。

 1月の移籍市場では、スウォンジーのクラブ移籍金最高額となる2500万ポンド(約46億円)でボニーを前シーズンのプレミアリーグ覇者であるマンチェスター・Cへと放出し、新たに即戦力としてイングランド人DFカイル・ノートンとMFジャック・コークを補強。現在チームは第28節を終えて勝ち点40の9位と、2013年に記録したクラブ史上最高位と同じ順位につけている。

 ウェールズ南部の海沿いに位置し、首都カーディフに次ぐ第2の都市として知られるスウォンジー。人口約24万人の街はハリウッド女優キャサリン・ゼタ・ジョーンズの出生地としても知られている。過去12年でプロの底辺である92位から8位まで上り詰めたスウォンジーが今後、プレミアリーグで上位争いを繰り広げ、欧州戦に参戦する常連チームになれば、世界的知名度も格段に上昇することだろう。

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