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プレミアも大きく関係…イギリスのEU離脱がサッカー界に与える影響とは

2016.06.25

イギリスがEUを離脱することが決定した [写真]=Getty Images

 イギリスがEU(ヨーロッパ連合)から離脱することが決定的となった。サッカー界への影響を24日付のイギリス紙『メトロ』が報じている。

 23日に行われた国民投票で離脱支持票が約52パーセントとなり、反対派を上回った。これにより、イギリスはEUの枠組みから外れることになるが、この決定は同国のサッカー界にどのような影響を及ぼすのだろうか。

■移籍
 EU離脱が確実となった24日から通貨ポンドは下落に転じ、1985年以来の水準まで下げている。経済規模でもイギリスはフランスに抜かれ世界第5位の座から転落した。EU圏内の自由貿易の枠組みから外れることで、同国が今後どのような貿易を展開していくのか、不安感が広がっていることが主な原因だという。

 この情勢が続く間、プレミアリーグのクラブにとっては、海外選手の獲得にかかるコストが増大することになる。今夏の移籍市場にも影響が出かねない。

 先日ユヴェントスからの買い戻しが発表された、レアル・マドリードのスペイン代表FWアルバロ・モラタを例にとってみよう。同クラブは一旦モラタを買い戻した上で、再度売却して利益を得ようと考えている。獲得を狙っているチェルシーが支払う移籍金は、6000万ポンド(約84億円)と報じられてきた。しかしこの一件を受け、同クラブが支払う金額は6700万ポンド(約94億円)まで膨れ上がるとみられている。

モラタ

イギリスのEU離脱は、モラタのプレミアリーグ移籍にも影響を及ぼすのだろうか [写真]=Getty Images

 他国のリーグにとっては、逆にプレミアリーグなどでプレーする選手の獲得が容易になる。スター選手の取引を考えているリーガ・エスパニョーラやセリエA、ブンデスリーガなどのクラブは、この機会を利用してイギリスからの選手補強に動く可能性があるだろう。

 一方でイギリス人選手にとっては、海外挑戦のチャンスを狭めることになる。スペインのリーガ・エスパニョーラでは、25名のスカッドのうちEU圏外のプレーヤーは5名までしか登録することが許されていない。つまりイギリス人選手は今後、数少ない枠を中南米やアフリカ、アジアなど様々な地域の選手と競合しなければならないのだ。

 スペインの強豪レアル・マドリードが登録しているEU圏外の選手はコスタリカ代表GKケイロル・ナバス、ブラジル代表DFマルセロ、同代表DFダニーロ、同代表MFカゼミーロ、そしてコロンビア代表MFハメス・ロドリゲスの5名。しかし今後は、ウェールズ代表MFギャレス・ベイルもここに名を連ねることになるため、同クラブはこの中から1人を放出することを余儀なくされる模様だ。

ベイル

今後、MFベイルはEU圏外選手としての登録になる [写真]=Getty Images

 ビッグクラブが多く、多額の資金を投じ世界各国のスター選手を集結させているプレミアリーグ。しかし、海外からの移籍にかかるコストの増大、そして自国出身選手のEU加盟国への移籍が難しくなることを考えると、イングランド人選手がこれまでよりも活躍するリーグへと変わっていく可能性がある。

■投資
 日本代表FW岡崎慎司が所属するレスターのオーナーは、タイ人のヴィチャイ・スリヴァッダナプラバ氏が務めている。このように海外からの投資で経営が成り立っているクラブは決して少なくない。同リーグは経済的に魅力的で、2年連続で総収益が上昇していた。

スリヴァッダナプラバ

レスターのタイ人オーナー、スリヴァッタナプラバ氏(左) [写真]=Leicester City FC via Getty Images

 すぐに現在のクラブ経営体制への影響が出ることは考えにくい。しかしポンド安がこのまま続けば、外国人オーナーにとってはこれまでほど利益を得られないことになるため、海外からの投資は減少することが予想される。

■選手契約
 プレミアリーグは実に65パーセントの選手が海外出身で、このことがリーグをグローバル・ブランドに引き上げる一因となっている。

 これまでは、EUパスポート所持者であれば労働許可は関係なく、プレーすることが可能だった。しかしこのルールの適用外となれば、外国人選手はイギリスのビザを取得する必要が出てくる。そのためには選手が、代表でFIFA(国際サッカー連盟)が定めるランキングに応じた試合数に出場していることが求められる。レスターに所属するフランス代表MFエンゴロ・カンテは、昨夏に渡英した時点で代表招集経験がなかった。このような取引が難しくなることが予想されており、このことがリーグとしての魅力の減少につながるのではないか、という懸念の声も上がっている。

カンテ

レスターに入団した時、カンテに代表招集の経験はなかった [写真]=AMA/Getty Images

 なおイギリスは、ビザに関する規定に関してこれまでのルールが継続できないか、交渉を行っている最中だという。だが、問題はそれだけではない。

 FIFAが定める規程では、18歳以下の選手の国際的な取引は禁止されている。しかし、EU圏内ではこれが認められており、欧州各国リーグはこの恩恵を存分に受けてきた。

 ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドがマンチェスター・Uに入団したのは18歳の時。スペイン代表MFセスク・ファブレガスは16歳の時にバルセロナからアーセナルへ加入した。今後はこういった移籍も見られなくなる可能性が浮上している。

セスク,ヴェンゲル

2003年、アーセナルのヴェンゲル監督(左)と16歳のセスク・ファブレガス(右) [写真]=Getty Images

 加えて、二重国籍の選手たちもこの影響を受けることになる。EU加盟国の国籍をもつ南米出身選手などは、これまでは外国人選手として扱われなかった。現在パリ・サンジェルマンに所属するアルゼンチン代表MFアンヘル・ディ・マリアは、イタリア国籍も所有しているため、マンチェスター・Uに所属していた際も他の欧州出身選手と同じ扱いだった。これもEU離脱によってルールの適用外になる可能性が高い。

ディ・マリア

イタリア国籍も所持しているアルゼンチン代表MFディ・マリア [写真]=Man Utd via Getty Images

 ここまで見てきた通り、この一件は英国のサッカー界に多大な影響を及ぼすことが予想されている。もちろんサッカー協会やリーグも対策を講じることは考えられる。サッカーの母国はこの混乱をどう乗り越えていくのだろうか。

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