今季からマンチェスター・Cを率いるグアルディオラ監督。チームには早くもその戦術が浸透し始めている [写真]=Getty Images
「魂でプレーすることに時間はいらない。選手たちには楽しんでプレーしてほしい」
プレミアリーグ開幕直前の会見でそう話したマンチェスター・Cのジョゼップ・グアルディオラ新監督は、自信に満ちていた。13日に行われたホームでのサンダーランド戦で、苦しみながらも2-1と勝利をモノにした同監督は、新システムを着実に吸収しつつあるチームに確かな手ごたえを感じていた。
「我々は試合前、何度もチームとしてどうプレーすべきかを話し合った。新体制の初戦を勝利で飾れたことはチームの自信になった」
グアルディオラ監督はバルセロナ、バイエルンで構築した「4-1-4-1」の変則的かつ柔軟なフォーメーションをマンチェスター・Cにも取り入れた。
攻撃時には、守備的MFのフェルナンジーニョが3バックの中央に下がり、両サイドバックのバカリ・サニャとガエル・クリシーが守備的MFの位置でプレーする「3-2-4-1」ないし、「3-2-3-2」へと変化するシステムだ。相手の速攻を受ける際にはGKがスイーパーの役目を担うという点もこのシステムの特徴である。
グアルディオラ新体制になって間もないマンチェスター・Cのこのシステムは、いまだ調整段階にあるが、着実にチームに浸透しつつある。
開幕戦こそ、攻守において新システムに対するぎこちなさを見せたものの、3日後に敵地ルーマニアで行われたステアウア・ブカレストとのチャンピオンズリーグ・プレーオフ・ファーストレグでは、欧州の格下相手に5-0で大勝を納めた。FWセルヒオ・アグエロのハットトリックを含め、システムの最終確認とも言わんばかりの貫禄あるプレーで、本選進出に大きな一歩を踏み出した。
「チームの出来にはかなり満足している。選手たちの質は素晴らしい。私はこのチームを強くできる自信があるし、マンチェスター・Cの関係者全員が誇れるチームにできる自信がある」
グアルディオラ監督はS・ブカレスト戦で好感触を得た一方、昨シーズンまでレギュラーだったイングランド代表GKジョー・ハートを先発から外している理由について、次のように説明している。
「ハートにスイーパー・キーパーができないと言っている訳ではない。練習を積めば彼にもできるだろう。だが、問題なのは今現在できるかどうかであり、今後半年でそれができるようになるかどうかではない。(ウィリー・)カバジェロは、プレシーズン初日から練習に参加していたし、ハートよりもシステムに順応しているというのが最大の理由だ」
残り約2週間と迫った移籍市場の期限日までに、グアルディオラ監督は最後のピースであるGK補強に全力を注ぐことになるが、現在のところバルセロナの2人、ドイツ代表GKマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンか、チリ代表GKクラウディオ・ブラボのどちらかを獲得する可能性が報じられている。
いずれにせよ、好スタートを切ったマンチェスター・Cは早くも地元ブックメーカーや批評家の間で今シーズンの優勝最有力候補となった。今後、グアルディオラ監督による新たな戦術がいかに進化していくか、周囲の期待は高まっている。
文=藤井重隆