「もう2年前のチームじゃない。今シーズンのチームは一新されている」
6日にホームで行われたプレミアリーグ第11節で、ワトフォードを6-1で粉砕した後にそう語ったリヴァプールのユルゲン・クロップ監督は、不敵な笑みを浮かべながら確かな手ごたえをかみしめていた。昨シーズン8位でリーグを終えたリヴァプールが、2014年5月以来となる首位に返り咲いた。
2年前と言えば、元イングランド代表主将のMFスティーブン・ジェラード(現ロサンゼルス・ギャラクシー)がリヴァプールに在籍した最後のシーズンで、2トップのウルグアイ代表FWルイス・スアレス(現バルセロナ)とイングランド代表FWダニエル・スタリッジがリーグで合わせて52得点を叩き出すなど、終盤まで優勝争いをし、惜しくも2位で終えたシーズンだ。
「2、3年前、優勝まであと一歩だったリヴァプールがどのようなシーズンを過ごしていたかは知っている。だが、今のチームはあの時とは違うし、25年前のチームとも違う。首位に立ったことはこの上ないことだが、やっていることは変わらないし、我々は冷静だ。11試合を終えたが、重圧は全く感じない。我々はチーム内で『リーグ首位』という言葉を口にしたことは一度もないし、それより重要なことは、毎試合で勝てるチームになるということだ」
一方、11節を終えて8位と中堅の地位を固めつつある対戦相手、ワトフォードはこれまでにアーセナル(1-3で敗北)、チェルシー(1-2で敗北)、マンチェスター・U(3-1で勝利)ら強豪を相手にしてきたが、同クラブのワルテル・マッツァーリ監督はリヴァプールについて次のように語る。
「彼らは今シーズン、我々が対戦してきた中で最も強かったチームだ。戦術面、技術面に優れ、互いのためにプレーしている。あのパフォーマンスと攻撃力は素晴らしい。今の彼らにはすべてが備わっているし、このまま継続すれば、彼らは優勝できるだろう」
リヴァプールの攻撃力を裏付けるデータがいくつかある。
2003年からプレミアリーグの記録を管理しているスポーツデータ会社『オプタ』によると、リヴァプールがワトフォード戦で放った枠内シュート数17本という記録は過去最高となった。さらに、リヴァプールが今シーズンのリーグ戦で4ゴール以上を記録したのはワトフォード戦で5回目となっており、2013-14シーズンの同記録が38試合を通して11回であっただけに、リヴァプールが現状を維持できれば、確率的にあと12試合で4ゴール以上を記録する計算になる。11節を終えてリーグ最多の10選手が計30ゴールをたたき出していることも特筆すべき点だろう。
一方で気がかりなのが失点数だ。11試合中無失点に抑えたのは1試合のみとなっており、故障や出場停止などで攻撃陣に離脱者が出て不振に陥った場合、脆い守備が災いする可能性も出てくるだろう。
「我々は勝ち点を積み上げ始めているが、それを継続させる必要がある。それができれば自ずと結果もついてくる」
クロップ監督がそう語る通り、1989-90シーズン以来となる悲願の優勝を実現させるためには、攻撃力の維持と守備面での改善が成功へのカギとなる。
文=藤井重隆