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【コラム】「王者の風格」を見せたレスター…ラニエリ監督解任で何が変わったのか

2017.03.05

ラニエリ監督解任後の初戦でリヴァプールを下したレスター [写真]=Getty Images

「ラニエリは家のテレビを蹴り飛ばしたと思う」

 そう口にしたのはイギリスメディア『BBC』で解説者を務める元イングランド代表DFマーティン・キーオン氏だ。

 2月27日に行われたプレミアリーグ第26節のレスター対リヴァプール戦で、5連敗中で下位争いに瀕するレスターが5位の相手に3-1で快勝した。

 一方、この試合の4日前に電撃解任されたクラウディオ・ラニエリ氏は、故郷ローマで孫と動物園を訪れる姿が目撃されたが、レスターの本拠地キングパワー・スタジアムでは、試合前に昨年5月の優勝トロフィー授与式の映像が流され、大きな拍手喝采が巻き起こったほか、「Grazie」、「Thank you」などと、ファンによるラニエリ氏への感謝のメッセージを掲げた横断幕が掲げられ、終始ラニエリ氏のチャントが鳴り響いていた。

 この日、昨年12月以来のゴールで2得点を叩き出し、前線で躍動したイングランド代表FWジェイミー・ヴァーディは次のように話している。

「今日の試合に向けて、チームにはいろいろな思いがあった。僕らはメディアからアンフェアな批判を受け続けていたし、今日はそれに対する示しを付けた。今後も同じパフォーマンスを維持し続け、勝ち点を築き上げていけるかどうかは僕たち次第だ」

「何が変わったかは、ハッキリと分からないし、なぜ今日のようなパフォーマンスを今まで見せられなかったかもわからない。僕らはずっと全力を尽くしてきたけど、結果に出なかった。今日は運よく全てが上手くいった。」

 ヴァーディは続けて、助監督から昇格したクレイグ・シェイクスピア暫定監督とのやり取りについて、「彼は僕らにできるだけ前線からプレスを仕掛け、僕には前線に張って相手の弱点を突けと言った。僕も相手の裏を取ることができた」と語り、シーズン終盤戦へ向けて、「今シーズンはあまりゴールを決めていないから、今日の2ゴールが起爆剤になればと思う。勝とうが負けようが、最高のパフォーマンスを見せられるなら、前を向いて胸を張ればいい。今日のパフォーマンスは確実に勝ち点3に値した。僕らはシーズンが終わるまで戦い続けるという意志を示した」と話した。

 シェイクスピア監督が実行した戦術は、リーグ優勝を成し遂げた昨シーズンのものに戻すという至ってシンプルなものだった。レスターは昨シーズンの優勝に大きく貢献した大黒柱のフランス代表MFエンゴロ・カンテをチェルシーに移籍させてしまい、後釜不在を理由にシステム変更に迷走してきたが、チーム全体の平均走行距離も過去5試合と比べて10キロメートル近く上回った。

 冒頭の解説者キーオン氏も、リヴァプール戦で激変したレスターをこう評している。

「彼らは王者の風格を見せた。彼らは今まで子猫のようだったが、今日は虎のようだった。運動量も上がり、前線からのプレスでリヴァプールにプレーさせなかった。彼らのパフォーマンスは劇的に変化した。だが、監督解任直後のこの勝利は後味の悪いものになった」

 現状、カンテの後釜は1月の移籍市場で補強した20歳のナイジェリア代表MFウィルフレッド・ヌディディが務めているが、経験値不足がタマにキズだ。しかし、シェイクスピア監督が試合前にビデオ解析で明確な指示を出したこともあって、リヴァプール戦で成功した11回のタックルは、今シーズンのスタッツでチェルシーのカンテが1月に記録した14回に次ぐ2位に入るなど、その実力は評価に値する。

 復活の狼煙となる1勝を挙げたレスターだが、リヴァプールも年明けから負傷者続出で不調だったという事情もある。続く3月4日のハル戦でも白星を挙げて今シーズン初の連勝を飾ったとは言え、『前回王者の降格』という悪夢が実現すれば、1938年のマンチェスター・C以来の不名誉な記録となるだけに、今後も一貫したパフォーマンスと結果が求められることに変わりはない。

文=藤井重隆

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