[写真]=Getty Images
欧州No.1クラブを決める戦いも佳境を迎え、いよいよ4チームに絞られた。準決勝ではトッテナムとアヤックス、そしてバルセロナとリヴァプールがそれぞれ激突する。決戦の地ワンダ・メトロポリターノに辿り着くのは果たしてどのチームなのか――。
ロマンチストは“クライフ・イズム”決戦を望むかもしれない。それはそれで興味深いし、話題に事欠かない。だが、真剣で斬り合うような張り詰めた空気を味わいたいなら、史上2度目の“イングランド勢”対決のファイナルが打って付けだろう。
リヴァプールが実践する“理想の戦術”
では、トッテナムとリヴァプールが揃って勝ち上がる可能性はどの程度あるのか。まずはリヴァプールだ。彼らの場合、たとえ準決勝の相手が本命バルセロナでも、2シーズン連続となる通算9度目の決勝進出に向けて視界良好と言えるだろう。グループステージこそアウェイ3連敗と苦しんだが、決勝トーナメントに入ってからは攻守のバランスが明確になり、安定感が増している。
相変わらずの要塞ぶりを誇るアンフィールドでは、今シーズン公式戦24試合で20勝3分け1敗。唯一の敗戦も先発8名を入れ替えた“捨て試合”のリーグカップ・チェルシー戦だ。もちろん、チャンピオンズリーグではホーム無敗(4勝1分け)を維持しており、失点したのもグループ初戦のパリ・サンジェルマン戦だけだ。
彼らはオランダ代表DFフィルジル・ファン・ダイクを中心とした堅守と“地の利”を活かし、「ホームで手堅く、アウェイで打ち勝つ」というアウェイゴール方式における理想の戦術を実践している。ラウンド16のバイエルン戦と準々決勝のポルト戦でも、ホームゲームで無失点に抑えたあと、敵地で得意の高速カウンターを炸裂させている。
しかし、今度のバルセロナ戦はアウェイゲームが先なので少し勝手が違う。それでもユルゲン・クロップ監督は「策を練る」としつつ、CLのホームゲームで31戦無敗の大会記録を誇るバルサに対しても「近年誰も成し得ていないことを」と真っ向勝負を匂わせている。
ここにきてFWロベルト・フィルミーノの出場が危ぶまれており、それがどのくらい戦術プランに影響を及ぼすか分からないが、勝機はカンプノウでの打ち合いにあると思う。そうなると鍵を握るのはGKアリソンだ。カンプノウでは彼のビッグセーブが最低2本は必要になるだろう。もし本当に「GK」と「怪我人」がキーワードならば、昨シーズンのファイナルで学んだ教訓を活かす絶好の機会だ。
5年間の試行錯誤で培った一番の強み
一方のトッテナムは、ドルトムントやマンチェスター・Cという難敵を退けて勝ち上がってきた。彼らのベスト4進出は、いささかサプライズに思われがちだが決してそうではない。マウリシオ・ポチェッティーノ監督の変幻自在の手腕で勝つべくして勝ってきたのだ。
確かに「補強0人」のスパーズは選手層が心配された。それでも彼らは、今季プレミアで3番目に多い28選手を起用している(マンチェスター・Cは21名で2番目に少ない!)。この戦力の“やりくり”が、アウェイゴール差で決着がついた準々決勝のマンチェスター・C戦で運命を分けた。
トッテナムは、マンチェスター・Cとのホーム&アウェイに挟まれたハダースフィールド戦で先発7名を入れ替え、さらにフォーメーションまで変更して4-0で快勝した。そして、セカンドレグでは5名を入れ替えた。一方のマンチェスター・Cは4枚、続いて1枚だけのスタメン変更に留まった。3戦とも先発出場した選手の数は、シティの7名に対してスパーズはわずかに4名だった。結局、両者の対戦は2試合ともスパーズがチーム走行距離で上回った。これが全てとは言わないが、勝因の1つに挙げられるはずだ。
過密日程だからローテーションしたいのに、過密すぎて選手・システムの変更を慣らす時間がない。全ての指揮官が抱える悩みだが、ポチェッティーノは「準備期間がないときこそ、プレシーズンで培ったことが物を言う」と英断を下す。就任1、2年目は高いインテンシティのせいでシーズン終盤の失速を指摘された。「ハリー・ケインのワンマンチーム」と揶揄されたこともあった。その度に彼らは試行錯誤してきたのだ。選手の出入りが少ないままポチェッティーノの下で過ごした5年間。これがトッテナムの一番の強みなのだ。
しかし、それでも今回のアヤックス戦は条件が厳しすぎる。絶対的エースのハリー・ケインは怪我で不在。その穴を埋めてきた韓国代表FWソン・フンミンまでもファーストレグは累積警告で出場停止となる。両選手が揃ってスタメンから外れたのは今季4試合あり、結果は2勝2敗。その2敗でスパーズは2つのカップ戦(リーグ杯とFAカップ)から敗退している……。
さらに両チームのコンディションの差は計り知れない。トッテナムがファーストレグの3日前にウェストハムとの熱いロンドン・ダービーを繰り広げる中、アヤックスはオランダ・サッカー協会の配慮で直前のリーグ戦が延期になった。スパーズの中2日に対し、アヤックスは中6日でファーストレグを迎えることになる。これには、さすがのポチェッティーノも「不公平だ」と不満を漏らしている。
こうなると、最大のミッションは“飛車角落ち”となるホームでの初戦を何とか乗り切ること。それができれば、クリスティアン・エリクセンやヤン・フェルトンゲンらの凱旋ゲームとなるアムステルダムでのセカンドレグで、充電完了のソン・フンミンが躍動するはずだ。
こうして考えると、イングランド勢の2チームはどちらもファーストレグが肝になる。初戦を思惑通りに運べれば、11年ぶりに“英国勢対決”のファイナルが実現するだろう。
文=田島大(フットメディア)
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By Footmedia