クロップの眼鏡、悪童の貢献、「アグエローーー!」、プレミアリーグの歴史に刻まれた“カムバック劇”
プレミアリーグ史上最も劇的の“カムバック劇”とは? 最も印象的な逆転劇と言えば「アグエローーーー」の実況が歴史に刻まれた2011-12シーズンの最終節だろう。しかし、他にも大量失点から追いついたチームや劇的な逆転勝利を掴んだチームがある。
どんなドラマがあったのか。英国放送局『BBC』の「Match of the Day: Top 10」が選出した名勝負10番を振り返ってみよう。
[写真]=Getty Images
■2003年10月25日 ウルヴァーハンプトン 4-3 レスター
“狼”と“キツネ”の野生動物対決は7ゴールが飛び交う激しい打ち合いとなった。しかしハーフタイムの時点では、これが名勝負として歴史に名を刻むとは誰も想像しなかったはずだ。
19位ウルヴズと最下位レスターによる“逆天王山”で先手を取ったのはアウェイのレスターだった。元イングランド代表FWレズ・ファーディナンドの2ゴールなど、前半のうちに3点のリードを奪ってそのままハーフタイムを迎えた。だが“狼”も負けておらず、52分のコリン・キャメロンのゴールで息を吹き返すと、同選手の2点目で1点差。ちなみに元スコットランド代表MFキャメロンはプレミアリーグで通算4得点だが、そのうち2点をこの試合で決めている!
その後、アレックス・レイの同点弾で追いついたウルヴズは、85分に元セネガル代表FWアンリ・カマラの決勝ゴールで大逆転。見事に3点差をひっくり返したのだ。やはり“キツネ”よりも“狼”の方が牙は鋭かったようだが、最終的には両チームとも降格の憂き目に遭うのだった。
■2011年2月5日 ニューカッスル 4-4 アーセナル
首位マンチェスター・Uを追走するアーセナルは、ノースイーストで快勝するはずだったが、思わぬ形で2ポイントも取りこぼすことになった。アーセナルは開始44秒にセオ・ウォルコットのゴールで先制すると、前半3分には元スイス代表DFヨハン・ジュルーが追加点。ジュルーにとっては、これがプレミアキャリア99試合で唯一のゴールだった!
さらにロビン・ファン・ペルシの2得点で4-0の大量リードを奪ってハーフタイムを迎えた。しかし後半5分、激しいタックルを受けたアーセナルのMFアブ・ディアビが激高して相手MFの首を掴んで押し倒してしまいレッドカードを出されることに。その時、ディアビを退場に追いやった選手こそ、この後にも登場するジョーイ・バートンなのだ。
その退場で試合の流れが変わると、ニューカッスルがバートンのPKなどを含む3得点で1点差に迫り、迎えた87分に元コートジボワール代表MFシェイク・ティオテがクリアボールをボックスの外から直接ボレーシュートで叩き込んで同点。実はティオテもプレミアキャリア138試合でそれが唯一のゴール。こうしてアーセナルは首位ユナイテッドに迫るチャンスを逃すと、それが尾を引いたのか3週間後のリーグカップ決勝で格下バーミンガムに敗れてタイトルを逃し、そのままずるずると4位まで後退するのだった。
■2016年1月23日 ノリッジ 4-5 リヴァプール
この一戦は逆転劇よりも「クロップの眼鏡」として有名になった試合だろう。2015年10月に就任したユルゲン・クロップ監督にとってリヴァプールでの24試合目は、まさにドラマチックな展開だった。
前半から打ち合いのシーソーゲームとなった一戦は、リヴァプールが先制するもノリッジが3-1と逆転。だがリヴァプールも負けておらず、そこから3得点して75分には試合をひっくり返して見せた。しかし、リヴァプールが4-3とリードして迎えた後半追加タイム2分、ノリッジの元カメルーン代表DFセバスティアン・バソングがこぼれ球を左足で叩き込んで土壇場で試合を振り出しに戻したのだ。
これにはクロップも肩を落としたのが、その3分後の95分、今度はMFアダム・ララーナが相手のクリアボールに反応して左足でボレーシュート。これがゴールに吸い込まれて5-4。ゴールを決めたララーナはユニフォームを脱いで走り出し、ベンチから飛び出してきたクロップ監督に抱き着いた。他のチームメイトも歓喜の輪に加わってもみくちゃ状態。気づけばクロップ監督の眼鏡が壊れていた。
映像を見直すと、みんなで抱き合った際にFWクリスティアン・ベンテケの腕がクロップの眼鏡を破壊していた。「普段は替えの眼鏡を持っているのだが見つからない。眼鏡をかけずに眼鏡を探すのは大変なんだ!」とクロップ監督は試合後に振り返り、ドルトムント時代にも同じようなことがあったことを明かした。「初めてバイエルンに勝ったときにはヌリ・シャヒンに眼鏡を壊されたのさ!」
■2012年5月13日 マンチェスター・C 3-2 QPR
2011-12シーズンのプレミアリーグ最終節は、永遠に語り継がれるドラマチックな幕切れだった。マンチェスター勢の2チームが同じ勝ち点のまま迎えた最終節、得失点差で上回るシティは44年ぶりのリーグ制覇に王手をかけていた。そして対戦相手は残留争いに身を置くQPR。誰もがシティの勝利を確信していた。
シティはパブロ・サバレタのゴールで先制するも、後半に入りFWジブリル・シセに同点ゴールを許してしまう。すると、そこから試合は乱気流に飲み込まれていく。55分、QPRのMFジョーイ・バートンがFWカルロス・テベスに肘打ちをかまして退場に。古巣対戦だったバートンはすぐにピッチを去らず、セルヒオ・アグエロを蹴った後、他の選手にも喧嘩を売ってから渋々ピッチを後にした。
これで数的優位になったシティが勝ち越すかと思いきや、2点目を決めたのはQPRだった。66分にジェイミー・マッキーがヘディングシュートを叩き込んでQPRが勝ち越し。試合は1-2のまま後半追加タイムに突入すると、感動のフィナーレが待っていた。
90+2分、シティはコーナーキックからFWエディン・ジェコがヘディングシュートを決めて同点。それでも引き分けでは優勝を逃してしまうシティは、試合再開後にすぐにボールを奪うとアグエロが仕掛けていった。そしてFWマリオ・バロテッリとの壁パスでボックス内に侵入すると右足一閃。「93:20」の劇的な逆転ゴールでシティが44年ぶりに戴冠。そしてマーティン・タイラーの「アグエローーーー!」という実況が歴史に刻まれることになったのだ……
『BBC』の番組がピックアップした残りの“カムバック劇”は以下の通り:
■1994年1月4日 リヴァプール 3-3 マンチェスター・U
マンチェスター・Uが前半24分までに3-0と大量リードを奪うも、リヴァプールが名将ブライアン・クラフの息子、ナイジェル・クラフの2得点などで追いついた。
■1994年5月7日 エヴァートン 3-2 ウィンブルドン
降格圏にいたエヴァートンは、最終節の劇的な逆転勝利で残留を手繰り寄せた。エヴァートンは2点を先制されながらも3-2で勝利して何とか残留。今のところプレミアリーグから一度も降格していないが、果たして今シーズンは?
■1997年2月2日 ニューカッスル 4-3 レスター
一時はレスターが3-1でリードするも、試合残り23分でアラン・シアラーがハットトリックを達成してニューカッスルが逆転勝利。
■2008年4月26日 マンチェスター・C 2-3 フラム
フラムが残り20分間で0-2から大逆転。その後も連勝して見事に残留を決めた。
■2014年5月5日 クリスタルパレス 3-3 リヴァプール
シーズン最後から2番目の試合で、パレスが0-3から残り10分間で追いついてドロー決着。このシーズン、リヴァプールは最終的に2ポイント差で優勝を逃すのだった。
■2014年9月21日 レスター 5-3 マンチェスター・U
激しい打ち合いとなり、一時はマンチェスター・Uが3-1でリードするも、そこからレスターがFWジェイミー・ヴァーディーなどのゴールで逆転勝利。この翌シーズン、レスターはもっと大きな奇跡を起こすのだった。
(記事/Footmedia)
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By Footmedia