(左から)シアラー、ケイン、ルーニー [写真]=Getty Images
トッテナムに所属しているイングランド代表FWハリー・ケインが偉大な記録に迫っている。チームの絶対的エースとしてゴールを量産し続けるストライカーは、今週末に開催される宿敵アーセナルとの“ノースロンドン・ダービー”でクラブの歴代最多得点記録を塗り替えるかもしれない。それだけでなく、プレミアリーグ史上3人目の通算200ゴールを達成する可能性もある。
ロンドンで生まれ育ったケインは、1年ほどアーセナルの下部組織に所属した経験もあるが、11歳でトッテナムに加入してからはローン移籍期間を除くと“スパーズ”一筋でゴールを決め続けている。とはいえ、すぐに結果を残せたわけではない。下部リーグへの武者修行で経験を積み、チームメイトとの熾烈なポジション争いに競り勝って、ようやくストライカーとして結果を出せるようになったのだ。
気が付けばプレミアリーグ通算ゴール数は「198」に到達。アラン・シアラー(260ゴール)、ウェイン・ルーニー(208ゴール)の2人しか達成していないゴール数「200」の大台まであと2点に迫っている。それでは、先人2名と比較しながらケインの歩みを振り返ってみよう。
[写真]=Getty Images
■プレミアリーグ初ゴール
最も華やかな“初ゴール”を決めたのはルーニーだろう。16歳にしてエヴァートンでプロデビューを果たした“神童”は、2002年10月19日のアーセナル戦で終了間際に強烈なロングシュートを叩き込んでチームに勝ち点3をもたらすと共に、アーセナルの無敗記録を30試合で止めて見せたのだ。今では伝説として語り継がれている「16歳360日」でのプレミアリーグ初ゴールだった。
リーグ歴代最多ゴール数を誇るアラン・シアラーはというと、プレミアリーグが発足される4年前にトップリーグ初ゴールを決めていた。1988年4月9日、彼が初ゴールを決めた相手もアーセナルだった。リーグ戦で初スタメンを果たした若武者は、ストライカーらしく味方のクロスに合わせて3連発。「17歳240日」でイングランドトップリーグの最年少ハットトリック記録を打ち立てた。プレミアリーグでの初ゴールはというと、プレミアリーグ初年度の開幕節クリスタル・パレス戦での2ゴールだ。既にブラックバーンに移籍していたシアラーは、初戦で2ゴールを決めると、そのシーズンは得点ランク5位の16ゴールを叩き出すのだった。
一方で、ケインは先輩2名と比較すると遅咲きだろう。2012年8月に19歳でプレミアデビューを果たすも、あまり出番を貰えずにローン移籍を繰り返すことに。そしてデビューから1年半後の2014年4月、サンダーランドとの一戦でリーグ戦初先発のチャンスを貰ったケインは、クリスティアン・エリクセンのクロスに飛び込み、右足で軽く触って記念すべき初ゴール。「20歳253日」でのプレミアリーグ初ゴールだった。
ケインはそこから3戦連続ゴールを決めるも、シーズン終了後の監督交代でゼロからの再出発を強いられることに。新たにトッテナムの監督に就いたマウリシオ・ポチェッティーノ体制では、再びスタメン落ちを味わうことになったのだ。納得できなかった21歳のストライカーは監督に直訴したという。しかしポチェッティーノは様々なデータを用意して、何が足らないかケインに詳しく説明。それが飛躍のきっかけになったようだ。監督の意図を理解してランニングやフィジカル強化に取り組んだケインは、見事に新指揮官の期待に応えていく。
2014年11月2日、アストン・ヴィラ戦で終了間際に決勝ゴールとなる直接フリーキックを決めてみせた。当時、新体制のトッテナムは開幕9試合で勝ち点「11」の11位。なかなか波に乗れず、ポチェッティーノ体制にとって最初の正念場を迎えていた。そんな状況下でスパーズは先制ゴールを許す苦しい展開に。だが84分に何とか追いつくと、90分に得たFKを蹴ったのは途中出場していた21歳のストライカーだった。シュートは敵の壁に当たってコースが変わり、そのままゴールネットに。のちにポチェッティーノ監督も「ハリーは私の元で169ゴールを決めたが、私にとってはヴィラ戦のフリーキックが1番のゴールだ。私のキャリアを救ってくれたのさ」と振り返っている。
■スタイル
3名ともタイプの違うストライカーだ。シアラーは王道の背番号9だった。屈強な体を誇り、ゴール前での競り合いを制してゴールを量産したほか、少し離れた位置から豪快に右足を振り抜いてネットを揺らした。
ルーニーは背番号10の王様タイプだった。1人で攻撃を完結できる突破力を併せ持ち、ドリブルから巧みなミドルシュートを叩き込むなどゴールのバリエーションも豊富だった。さらに10番としてチャンスを作ることもでき、彼の103アシストはケイン(44)の倍以上の数字となっている。
対してケインは、典型的なイングランドのストライカーになるはずだった。極めてスピードがあるわけでも、絶対的な体躯を誇るわけでもない。磨き抜かれた右足のシュート精度という武器はあったが、188㎝の長身フォワードといった平凡な選手で終わる可能性もあった。現にポチェッティーノも「見た目は昔ながらの9番だった」とイギリスメディア『The Athletic』で説明している。だが、ポチェッティーノは彼を平均的な選手で終わらせるつもりはなかった。だからこそ、走らせ、プレスをかけさせ、様々なエリアへ動くことを求めたという。ポチェッティーノは万能型ストライカーへの変貌を遂げたケインについて、「そうやって彼はボックス外でも勝負できる選手になった。彼のゲーム理解度は素晴らしかったしね」と振り返る。
無論、恩師のおかげだけではない。ポチェッティーノ退任後の2020-21シーズンには23ゴール・14アシストで「得点王」と「アシスト王」の二冠を達成した。ルーニーには後れを取っているものの、近年は飛躍的にアシスト数が増えてチャンスメイクでも貢献できるようになったのだ。その背景には高みを追い求め続けるケインの飽くなき向上心がある。昨年の大晦日、ケインは「過去10年間の新年の抱負」とSNSに記した。そこに書かれていたのは「ゴール数」や「アシスト数」ではなく10年連続で「Improve(上達)」だった。
■100ゴールと200ゴール
ケインのプレミアリーグ通算100ゴールは2018年2月のリヴァプール戦だった。1点のリードを許して迎えた後半のアディショナルタイム、同点に追いつくPKを沈めたのだ。ゴール右隅に落ち着いて決めたゴールだったが、決して簡単なPKではなかった。というのも、ケインはこの試合で既にPKを1本失敗していたのだ。87分にPKを獲得したのだが、その時はGKが先に動くと考えて正面に蹴ったが止められてしまったのだ。
それでも、再びチャンスが来ることを「祈っていた」というケインは、2本目を落ち着いて沈めてプレミアリーグ史上27人目の100ゴールを達成した。141試合での達成はセルヒオ・アグエロ(147)やティエリ・アンリ(160)、モハメド・サラー(162)を抑えて歴代2位のスピードとなっている。
100ゴールの最速記録を持つのは歴代最多ゴールスコアラーのシアラーで、124試合で100ゴールという“化け物級”の得点ペースだった。だが、間違いなくケインはシアラーに迫ってきている。150ゴールの達成スピードを見るとシアラーの「212試合」に対してケインは「221試合」。そして今シーズンに入ると、ケインはシアラーのゴールペースを抜き去って見せたのだ。現在ケインはプレミア通算300試合で198ゴール。一方でシアラーは300試合時点では196ゴールだった。
あと2ゴールで史上3人目の200ゴールに到達するケイン。15日にホームで開催されるアーセナル戦で2ゴールを決めれば、シアラーの記録(306試合)を抜いて最速となる301試合での達成になるのだ。だが、ケインが追いかける記録はプレミア通算200ゴールだけではない。現在ケインはトッテナムで公式戦通算265ゴールを決めている。クラブの歴代得点ランキングで2位につけているのだ。1位のジミー・グリーヴズの得点数「266」まであと1ゴールに迫っている。
次のゴールでクラブ記録に並び、その次のゴールでクラブ記録を更新するとともにプレミア通算200ゴールも達成するのである。もちろん、それを達成してもケインにとっては通過点に過ぎない。「上達あるのみ」のストライカーは、数年後にはアラン・シアラーが持つプレミアリーグ歴代最多の260ゴールという記録さえも抜き去っているかもしれない。
(記事/Footmedia)
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By Footmedia