今冬の移籍市場で移籍した選手たち [写真]=Getty Images
今冬のプレミアリーグは物凄く熱かった。チェルシーが英国の移籍金記録を塗り替えるなど、多くのクラブが積極的な補強に乗り出した。リーグ全体で支払った移籍金の合計額は、冬の移籍市場としては過去最高の8億1500万ポンド(約1300億円)にも上るという。
それでは、どのクラブが補強に成功したのか。英ラジオ局『talkSPORT』がウェブサイトで「冬の補強の採点」をつけているので2回に渡って紹介しよう。今回は10位から1位までを見てみる。
[写真]=Getty Images
■10位 ブライトン 6点(10点満点中)
トップ10に入ったのは日本代表MF三笘薫(25歳)が躍動するブライトンだ。同クラブはスウェーデン代表MFヤシン・アヤリ(19歳)やアルゼンチンU-20代表MFファクンド・ブオナノッテ(18歳)といった若い才能に投資。実力は未知数だが、ブライトンの補強実績を考えると、注目の若手になること間違いない。だが、彼らがトップ10入りした最大の理由は補強内容ではない。「総合的に見て成功」と『talkSPORT』が評価したのは、エクアドル代表MFモイセス・カイセド(21歳)を最後まで手放さなかったからだ。
ベルギー代表FWレアンドロ・トロサール(28歳)を引き抜いたアーセナルが、カイセドにも触手を伸ばしてきたのだ。すると選手本人もSNSで移籍を希望する事態に。それでもブライトンはアーセナルのオファーを頑なに却下し続けたのである。「2度の正式オファーと1度のインスタグラムの投稿(カイセドの移籍志願)」にも屈することなく主力を手放さなかったと、記事もブライトンを称えている。
■9位 レスター 6.5点(10点満点中)
ワールドカップ以降、リーグ戦で1度も勝てておらずに14位に低迷するレスターは、移籍市場でも苦戦が予想されたが最終的には健闘した。まずはイングランド代表MFジェームズ・マディソンとベルギー代表MFユーリ・ティーレマンスの残留に成功。そして移籍市場最終日には、ワールドカップでも高さを発揮した198㎝のオーストラリア代表DFハリー・サウター(24歳)をストークから獲得。さらにシャフタールからブラジル人ウィンガーのFWテテ(22歳)を加えたことで、マディソンを中央で使えるようになるそうだ。
戦力外の選手をもう少し処理できていれば、さらに高い評価も望めたと『talkSPORT』は総評している。
■8位 トッテナム 6.5点(10点満点中)
8位に入ったのは比較的に大人しい冬を送ったトッテナム。マット・ドハーティとジェド・スペンスを放出した右ウィングバックには、追い求め続けてきたスポルティングのスペイン人DFペドロ・ポロ(23歳)をローン契約で獲得してファンを安心させた。それから、これまで“ハイジャック”の被害者になることが多かったスパーズだが、今回はエヴァートン入りが濃厚とされていたビジャレアルのオランダ代表FWアルノー・ダンジュマ(26歳)の強奪に成功。同選手はスパーズでのデビュー戦となった1月28日のFAカップのプレストン戦でいきなりネットを揺らしている!
■7位 ウルヴァーハンプトン 7点(10点満点中)
11月にウルヴズの監督に就任したフレン・ロペテギは、自分の色を出すチャンスを逃さなかった。アトレティコ・マドリードからブラジル代表FWマテウス・クーニャ(23歳)、パリ・サンジェルマンからスペイン代表MFパブロ・サラビア(30歳)と実力者を確保。さらに最終ラインにはリーダーシップが期待できるベテランのDFクレイグ・ドーソン(32歳)をウェストハムから連れてきた。
そう考えると、7位よりも高いランキングになりそうだが、記事は「生粋の点取り屋」を獲得しなかったことを指摘。「ラウル・ヒメネスとジエゴ・コスタが二人合わせてリーグ戦0ゴールなので点取り屋を獲らなかったのは逸機では?」
■6位 サウサンプトン 7.5点(10点満点中)
リーグ戦で最下位に沈むサウサンプトンは、前線の強化に成功。ベルギーリーグでゴールを量産して得点ランク1位に立っていたヘンクのナイジェリア代表FWポール・オヌアチュ(28歳)を捕獲。身長201㎝という“超大物”だ。さらにクラブ記録の移籍金2200万ポンド(約35億円)でレンヌからガーナ代表ウィンガー、カマルディーン・スレマナ(20歳)を確保した。同選手は残留争いのライバルであるエヴァートンも狙っていただけに、サウサンプトンにとっては素晴らしい一手となった。
それだけではなく、ディナモ・ザグレブ時代にヨーロッパリーグでトッテナムからハットトリックを奪い、昨年のワールドカップではベスト16の日本戦にも出場したクロアチア代表FWミスラフ・オルシッチ(30歳)も獲得。充実の冬となった。
■5位 アーセナル 7.5点(10点満点中)
シーズン開幕時、ミケル・アルテタ監督は冬の移籍市場に興味がなかったかもしれないが、首位で冬を迎えて19年ぶりのリーグ制覇が見えてきたとなれば話は別だ。前線(レアンドロ・トロサール)、センターバック(ヤクブ・キヴィオル)、セントラルMF(ジョルジーニョ)の強化に成功。適材適所の補強だが、少し気になるのは彼らが“第一希望”の選手ではなかったこと。
獲得濃厚と言われながらもチェルシーに横取りされたウクライナ代表FWミハイロ・ムドリクの代わりにブライトンからトロサールを獲得。さらにブライトンのエクアドル代表MFモイセス・カイセドを熱望するも、獲得できずにチェルシーの経験豊富なMFジョルジーニョで手を打った…。
■4位 ノッティンガム・フォレスト 8点(10点満点中)
夏に1億5000万ポンド(240億円)を投じて「23選手」を獲得した昇格組のフォレストは、冬の移籍市場でも元気だった。ブラジル人トリオ(MFダニーロ、MFグスタヴォ・スカルパ、DFフェリペ)を加えたほか、負傷したGKディーン・ヘンダーソンの穴を埋めるためにパリ・サンジェルマンからコスタリカ代表GKケイラー・ナバス(36歳)を連れてきた。
残留を目指すチームにとって何より心強いのは、ニューカッスルから獲得したニュージーランド代表FWクリス・ウッド(31歳)と元イングランド代表MFジョンジョ・シェルヴィー(30歳)かもしれない。
■3位 ボーンマス 9点(10点満点中)
ここからは“トップ3”だ。まずは12月に買収されたボーンマスである。新オーナーはギャリー・オニール監督を支持して大型補強を遂行。GKダレン・ランドルフ、DFイリア・ザバルニー、DFマティアス・ビーニャと次々に選手を連れてきた。
さらに、サッスオーロで1月に入ってからレギュラーに定着していたコートジボワール代表MFハメド・トラオレ(22歳)をローン契約で獲得。そして課題でもあった得点力の強化には、今季リーグ・アンで6ゴール5アシストと活躍していたロリアンのFWダンゴ・ワッタラ(20歳)、さらにはワールドカップにも出場していたガーナ代表FWアントワン・セメンヨ(23歳)を連れてきた。
もしローマのイタリア代表MFニコロ・ザニオーロを獲得できていたら「完璧な移籍市場」と記事も絶賛している。
■2位 リーズ 9点(10点満点中)
クラブの首脳陣はジェシー・マーシュ監督を全力でサポートしている。リーズはアメリカ人指揮官の古巣ザルツブルクからオーストリア代表DFマクシミリアン・ヴーバー(24歳)を獲得したほか、ユヴェントスからはアメリカ代表MFウェストン・マッケニー(24歳)をローン契約で確保。監督と所縁のある選手を集めている。
そしてケガが多いFWパトリック・バンフォードの代役として期待されるのが、ホッフェンハイムから獲得したフランスU-21代表FWジョルジニオ・リュテル(20歳)だ。今季ブンデスリーガで2ゴールの選手にクラブの移籍金記録となる3500万ポンド(約56億円)は払い過ぎかもしれないが、それだけ期待しているということだ。「失点の多いDFラインの強化」ができていれば最高評価になっていたという。
■1位 チェルシー 10点(10点満点中)
今冬の移籍市場の“王者”はチェルシー以外に考えられない。今回の移籍市場だけで3億2300万ポンド(約515億円)も補強費に投じる大奮発。夏と合わせると計6億ポンド(約960億円)もの補強を行ったことになる。
今回の目玉は…何名もいる。1月上旬にアトレティコ・マドリードからローン契約でポルトガル代表FWジョアン・フェリックス(23歳)を獲得したことを忘れてしまうくらい、その後も派手な補強を続けた。アーセナルが狙っていたシャフタールのウクライナ代表FWミハイロ・ムドリク(22歳)を横取りすると、移籍市場の最終日には英国の移籍金を塗り替える大仕事。ベンフィカから1億680万ポンド(約170億円)でアルゼンチン代表MFエンソ・フェルナンデス(22歳)を連れてきた。
そのほかにも、DFブノワ・バジアシーレ、MFアンドレイ・サントス、FWノニ・マドゥエケ、FWダヴィド・ダトロ・フォファナなど500億円以上を投じて「計8選手」を獲得。8名とも23歳以下という将来性のある大型投資を行った。ここまでくるとUEFAのファイナンシャルフェアプレーが気になるが、そこは長期の分割払いという抜け穴を突いているため大丈夫だとか…。
チェルシーの大盤振る舞いに『talkSPORT』は、今季ここまでリーグ戦では10位に低迷しており「ピッチ上の出来は10満点中で2点だが」と前置きをしたうえで、移籍市場に関しては唯一の「10点満点」を付けた。
果たして、若い才能を集めたチェルシーはここから巻き返せるのだろうか? シーズン後半戦のチェルシーに注目したい。
(記事/Footmedia)
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