プレミアリーグにおける外国人監督の歴史を深掘り [写真]=Getty Images
世界最高峰と呼ばれるプレミアリーグではこれまで数々の名将たちが手腕を振るってきた。そして新シーズンは、4名の指揮官が新たにプレミアリーグの舞台に挑戦する。
中でも注目を集めるのがバーンリーのヴァンサン・コンパニ監督とトッテナムのアンジェ・ポステコグルー監督だ。コンパニ監督はプレミアリーグ史上初のベルギー人指揮官、ポステコグルー監督は初のオーストラリア人指揮官として歴史にその名を刻むことになる。
それでは1992年に発足されたプレミアリーグにおける外国人監督の変遷を見ていこう。
[写真]=Getty Images
■初の外国人監督
プレミアリーグ初年度の1992-93シーズンは、英国系以外のいわゆる“外国人監督”は一人もいなかった(※アイルランドも英国系と見なす)。22チーム制だった当時、16名がイングランド人、4名がスコットランド人、そしてウェールズ人とアイルランド人が1人ずつという状況で開幕を迎えた。当時は監督交代も稀なことで、データサイト『transfermarkt』によると、シーズン中の監督交代はわずかに2回のみ。ちなみに昨シーズンのプレミアリーグでは、1試合も指揮していない暫定監督などまで含めると、実に26回もシーズン中に監督交代が行われている。
そんなプレミアリーグにおける記念すべき初の“外国人監督”となったのが、日本にもゆかりのある指揮官、オズワルド・アルディレス氏だ。のちに清水エスパルスや横浜F・マリノスを率いることになる元アルゼンチン代表MFは、現役時代にトッテナムなどで活躍し、そのままイングランドで監督キャリアをスタート。下部リーグにいたスウィンドンやニューカッスルを指揮した後、1993年に古巣トッテナムの指揮官に就任し、プレミアリーグ史上初の“外国人監督”となった。
しかし、攻撃的サッカーを追求するアルディレスが率いるトッテナムは1993-94シーズンに15位に低迷。その後、ユルゲン・クリンスマンを獲得するなど大型投資を行うも結果が伸びずに1994年11月に解任された。「フォークランド紛争(イギリスとアルゼンチンの紛争)の次に暗い日が、トッテナムを去った日だ」とアルディレスは自叙伝で振り返っている。そして「トッテナムは私のホームだった。バルセロナやレアル・マドリードといったクラブの監督職よりも、私はいつだってトッテナムを選ぶ。迷うことなくね」とクラブへの愛を綴った。
アルディレスの次の外国人監督は、1996年5月にチェルシーの選手兼監督に就任したオランダの英雄、ルート・フリット氏だ。前年度から選手として所属していたフリットは、イングランド代表監督に就任したグレン・ホドル氏の後任としてチェルシーを指揮するようになった。1997年にはジャンフランコ・ゾラやロベルト・ディ・マッテオなどを擁してFAカップを制覇。チェルシーに26年ぶりのタイトルをもたらすとともに、初めて英国の主要タイトルを獲得した英国系以外の“外国人監督”となった。
プレミアリーグ史上3人目の“外国人指揮官”は、アルディレスと同じく日本にゆかりのある名将、アーセン・ヴェンゲル氏だ。1996年の元日に名古屋グランパスを天皇杯優勝に導いたフランス人は、同年10月にアーセナルの監督に就任。当時は、ロンドンの地元紙が『アーセンって誰?』と見出しを打つほど無名だったものの、すぐに結果を残すと1997-98シーズンにデニス・ベルカンプやパトリック・ヴィエラなどを擁してプレミアリーグとFAカップの二冠を達成。1888年から続くイングランドのフットボールリーグにおいて、初めて“外国人監督”としてリーグ優勝を果たした。
国外から若いタレントを集め、それまで大雑把なスタイルが多かったリーグで洗練されたサッカーを披露したヴェンゲル氏。2003-04シーズンには無敗優勝を達成して“インヴィンシブルズ”と称えられた。彼がプレミアリーグで外国人監督の扉を開いたと言っても過言ではないだろう。以降、ジョゼ・モウリーニョ(ポルトガル)やユルゲン・クロップ(ドイツ)、ジョゼップ・グアルディオラ(スペイン)など数々の外国人監督がプレミアリーグを席巻するのだった。
■国籍別
プレミアリーグの歴代監督を国籍別で見ると、最も多いのは当然だがイングランド人(130名)である。次に多いのはアレックス・ファーガソ氏やデイヴィッド・モイーズ監督(現:ウェストハム)などを輩出したスコットランド人(35名)だ。3番目は、ヴェンゲル監督のフランスと言いたいところだが、フランス人は意外と少なく8名で7位。ヴェンゲル監督の教え子であるレミ・ガルド氏やパトリック・ヴィエラ氏も監督業に乗り出したが、恩師ほどの成功を収められていないのが現状だ。
フランスを抑えて6位に入ったのは、現在マンチェスター・Uを率いるエリック・テン・ハフ監督のオランダで10名。5位はウェールズの11名。そして4位はイタリアの14名だ。カルロ・アンチェロッティ監督(現:レアル・マドリード)やアントニオ・コンテ氏といった名将のほか、日本代表FW三笘薫のブライトンを率いるロベルト・デ・ゼルビ監督もカルチョの国の出身である。イタリアは2009-10のアンチェロッティ氏(当時:チェルシー)、2011-12のロベルト・マンチーニ氏(当時:マンチェスター・C)、2015-16のクラウディオ・ラニエリ氏(当時:レスター)、2016-17のアントニオ・コンテ氏(当時:チェルシー)など実に4名ものリーグ優勝監督を輩出している。
そのイタリアを抑えて3位につけているのがスペインだ。アレックス・ファーガソン氏の13回に次ぐ、5度のプレミアリーグ制覇を誇るグアルディオラ監督(マンチェスター・C)を筆頭に、ラファエル・ベニテス氏、ロベルト・マルティネス氏、ミケル・アルテタ監督(現:アーセナル)、ウナイ・エメリ監督(現:アストン・ヴィラ)といった指揮官がプレミアリーグの舞台で結果を残してきた。
2023-24シーズンを見ると、20チームのうち実に5チームがスペイン人監督(グアルディオラ、アルテタ、エメリ、フレン・ロペテギ、アンドニ・イラオラ)となっている。イングランド人監督は4名(エディー・ハウ、ロイ・ホジソン、ショーン・ダイチ、ポール・ヘッキングボトム)のため、プレミアリーグの歴史において初めて特定の外国籍(スペイン)がイングランド人監督を上回ることになるのだ!
それも当然だろう。過去6シーズンのうち5シーズンでスペイン人監督(グアルディオラ)がリーグ優勝を達成しているのである。一方でイングランド監督はと言うと、プレミアリーグで一度も優勝したことがない。最後にイングランド・トップリーグを制したイングランド人監督は、当時リーズを指揮していたハワード・ウィルキンソン氏。プレミア発足前年度の1991-92シーズンまでさかのぼることになる。
新シーズンはプレミアリーグで初のオーストラリア人監督とベルギー人監督が誕生するわけだが、果たして彼らは同胞の後輩たちのためにも結果を残して道を切り開くことができるのだろうか? ポステコグルー監督率いるトッテナムとコンパニ監督率いるのバーンリーの新シーズンの戦いに注目が集まる。
(記事/Footmedia)
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By Footmedia