プレミアリーグ史に残る大乱闘 [写真]=Getty Images
先日、世界最高峰と呼ばれるプレミアリーグの舞台で仲間同士の“喧嘩”が勃発した。
事件が起きたのは2月25日に行われたプレミアリーグ第26節のウルヴァーハンプトン対シェフィールド・ユナイテッド。最下位に沈むシェフィールド・ユナイテッドのチームメイト同士が口論となり、喧嘩を始めたのである。先制されてこの日も劣勢に立たされたアウェイのシェフィールド・ユナイテッドは、上手くいかないことに腹を立たせたDFジャック・ロビンソン(30歳)とブラジル人MFヴィニシウス・ソウザ(24歳)が一触即発。試合前半、二人は言い争いながら近づいて頭を突き合せたあと、互いに右手を振った。幸いパンチは当たらなかったようで、すぐにチームメイトが間に割って入って喧嘩を止めた。このシーンはVARチェックが行われたが、味方同士ということもあってお咎めなし。ロビンソンはフル出場、ヴィニシウス・ソウザも82分までプレーを続けた。
結局、そのまま0-1で敗れた試合後、チームメイトのFWリアン・ブリュースターは問題のシーンについて触れて「情熱的な選手同士がぶつかったのさ。ハーフタイムに問題を解決したので何でもない。僕らは負けるのが嫌いなのさ。“兄弟”というのは喧嘩もするよ」と軽く流した。後日、クリス・ワイルダー監督も大した問題ではないと言い放った。「すぐに解決するのなら、私としては問題ではない。ああいったことは、よくあることだ。もちろん、注目が集まるプレミアリーグにとって良いイメージではないが、勝ちたいと思う2人の選手がぶつかっただけさ。もう解決したので前に進むだけ」と指揮官は説明。そして「笑ってしまった」とも明かした。「あの問題のあとに『Sky Sports』が流したニュースはNHLのアイスホッケー選手がグローブを外して10分ほど殴り合うシーンだったから笑ってしまったよ!」
結局、渦中の二人とも次節のアーセナル戦にフル出場。チームは0-6の大敗を喫したが、今回は二人とも大人しくプレーに専念した。これまでもイングランドフットボール界ではチームメイト同士が衝突する事件は何度も起きているので、代表的な“喧嘩”をいくつか紹介しよう。
[写真]=Getty Images
■ニューカッスルの殴り合い
プレミアリーグ史に残るピッチ上の大喧嘩と言えば、これしかないだろう。2005年4月、ニューカッスルの主力である2人の選手が試合中に殴り合いを始めたのである。アストン・ヴィラをホームに迎えた一戦で80分に0-3とされて敗色濃厚になると、プレー中にもかかわらずMFリー・ボウヤーとMFキーロン・ダイアーが掴み合いながらパンチを放つ喧嘩を始めたのだ。慌ててアストン・ヴィラのMFギャレス・バリーやチームメイトが割って入って何とか止めたが、両選手には「暴力的な行為」としてレッドカードが提示された。既に退場者を出していたニューカッスルは残り時間を8人で戦うことになり、当然そのまま敗戦を喫した。
殴り合いの喧嘩について、後にボウヤーはこう説明している。「負けるのが嫌なんだ。試合中、自分がゴールを奪えそうな位置にいたのに彼はパスを出してくれなかった。そういうことが何度かあったので『何をやっているんだ。パスをよこせ』と、もっと汚い言葉で伝えたんだ。彼も言い返し、近づいていき、あとは知っての通りさ。もちろん後悔している。でも、あれこそが情熱なんだ」
試合後、両選手は監督とキャプテンから大目玉を食らったという。もちろん、それだけでは済むわけもなく、両選手とも一発退場による3試合の出場停止。先にパンチを繰り出したボウヤーはサッカー協会からさらなる追加の出場停止処分と罰金処分を受けたほか、警察沙汰にも発展して「脅迫的な行為」の罪で罰金を科せられた。実は、ボウヤーはチームのことを考えてダイアーをかばおうとしたというのだ。「責任を背負うように言われたのさ。そうすればダイアーが試合に出られるので、チームのために『分かった。自分が責任を取る』と伝えたんだ。私にとっては勝つことが全てだったからね」
ニューカッスルは直後にFAカップ準決勝のマンチェスター・ユナイテッド戦を控えていたので、ダイアーだけでも試合に出られるように動いたのだが、結局は二人とも大一番を欠場することになり、チームも1-4の大敗を喫してFAカップから敗退した…。
■その他のいざこざ
ボウヤー対ダイアーほどの喧嘩は珍しいが、あわや殴り合いといった衝突は他にもある。1993年9月のマージーサイドダービーでは、リヴァプールのベテランGKがチームメイトにキレた。当時35歳のGKブルース・グロベラーは、クロスボールをちゃんとクリアせずに失点を招いたMFスティーヴ・マクマナマン(当時21歳)を罵倒。マクマナマンが言い返そうと振り返ると、顔を突き飛ばしたのである。マクマナマンも負けずに先輩キーパーの顔面を押したが、それ以上の暴力事件には発展しなかった。
チャンピオンズリーグの舞台ではイングランド代表同士が衝突した。1995年11月、初めてチャンピオンズリーグに出場したブラックバーンはスパルタク・モスクワ戦で失態をさらすことに。1勝もできずに迎えたグループステージ第5節、ロシアに乗り込んだブラックバーンは何もできずに0-3で完敗を喫した。その試合中、イングランド代表DFグレアム・ル・ソーと同じく代表のMFデビッド・バッティが殴り合いを始めそうになったのだ。そこは主将ティム・シャーウッドがすぐに止めに入ったが、ル・ソーの先制パンチはバッティに当たっており負傷することに。ケガをしたのは殴られたバッティではなく、殴ったル・ソーの方だった! 指を骨折したル・ソーは試合後、チームメイトの前でバッティに謝罪をして仲直りしたという。
2008年にはノースロンドンダービーでも事件が起きた。リーグカップ準決勝セカンドレグで宿敵トッテナムに1-5で負けていたアーセナルは前線の選手が衝突。パスを貰えなかったとしてFWエマニュエル・アデバヨールとFWニクラス・ベントナーが言い合いとなり、アデバヨールが頭突きをお見舞いしてベントナーが顔を裂傷することに。実は、両名はずっと仲が悪かったという。「最初から仲が良くなかった」と、のちにベントナーは明かしている。「あの試合後の控え室でも揉め、翌日は監督に呼び出されて罰金処分を受けた。でも仲直りはしなかった。それ以降、彼とは一度も話さなかった」
3年前にはトッテナムのFWソン・フンミンとGKウーゴ・ロリスが、ハーフタイムで控え室に戻る際に言い争いになった。守備に戻らなかったとしてGKロリスが激怒すると、普段は温厚な韓国代表エースも言い返すことに。一触即発となったが、周りにいたチームメイトに止められて喧嘩には発展せず。その後、二人は仲直りしたというが、この言い争いを称賛する者がいた。当時スパーズを率いていたジョゼ・モウリーニョ監督である。問題の場面についてモウリーニョは「素敵だね」と語った。「あれで誰かが批判されるなら、それは私だろう。私は、選手たちが仲間に厳しくないと指摘していたんだ。全力を出し切るよう『チームメイトに圧力をかけろ』ってね。これ(言い争い)はチームミーティングの成果なのさ」
勝利という共通目的のため、たまに仲間同士で衝突することもあるが、それもまたフットボールの魅力なのかもしれない!
(記事/Footmedia)
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By Footmedia