“クラシコ”での敗戦以来、凋落が続くバルセロナ。地元紙から読み解く失速の理由とは [写真]=Getty Images
バルセロナの凋落が止まらない。17日に行われたリーガ・エスパニョーラ第33節のバレンシア戦に敗れ、2003年2月以来となるリーグ3連敗。ここ4試合で1ポイントしか上積みできず、3位レアル・マドリードとの勝ち点差は、この1カ月で「12」から「1」まで縮まった。最近まで「バルセロナの連覇確実」と言われていたリーガだが、残り5試合を迎えたところで、バルセロナと同勝ち点で並ぶ2位アトレティコ・マドリード、そしてレアル・マドリードとの三つ巴の優勝争いに様変わりしている。
振り返れば、バルセロナは3月までは無敗街道を歩んでいた。しかし、今月2日の“クラシコ”に敗れて公式戦40試合ぶりの敗戦を喫したのを皮切りに、4月はここまで5試合を戦って1勝4敗。わずか2週間強で、今シーズンの開幕から3月までに喫した敗戦数(3)を上回った。それにしても、なぜ彼らは突然失速したのか?
■試合数の多さによるコンディション低下
まずバルセロナ寄りのスポーツ紙『スポルト』が指摘するのは、試合数の多さによるフィジカルコンディションの低下だ。17日のバレンシア戦は、バルセロナにとって今シーズンの公式戦56試合目だった。これはレアル・マドリードよりも11試合多い。運動量ではなく技術で勝負するバルセロナといえども、リーガ、チャンピオンズリーグ、コパ・デル・レイの主要3大会以外に、UEFAスーパーカップやスーペルコパ・デ・エスパーニャ、さらにはFIFAクラブワールドカップまで出場すれば、疲労が蓄積してプレーに支障をきたすのは当然だろう。
ただし、“欧州一”と言える過密日程をこなさなければならないことはシーズン開幕前から分かっていたことであり、昨夏から「選手のローテーションが鍵を握る」と言われてきた。しかし、ここまで公式戦40試合以上に出場した選手が10名を数えるなど、メンバーは固定化。セルヒオ・ブスケツとイヴァン・ラキティッチに至っては、現時点で昨シーズンの出場数に並んでおり、中盤で攻守の要となる彼らの“過重労働”がこのタイミングでのチームのパフォーマンス低下に大きな影響を与えたと考えられる。
■MSN依存症
「バルセロナ=MSN」。その方程式に異論を挟む余地がないほど、今のバルセロナはリオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールによる南米3トップに支えられている。実際、今シーズンの公式戦で彼らが挙げた得点は、チーム総得点(147)の75パーセントに相当する110ゴール。MSNの存在なしに、幸福な時間を過ごすことは不可能と言っても過言ではない。しかしバルセロナの一般紙『エル・ペリオディコ』の言葉を借りれば、MSNは“諸刃の剣”である。
無敗記録がストップした“クラシコ”前後でのMSNの1試合平均ゴール数を比較してみると、“クラシコ”前までは1試合平均2.1ゴールを記録していたのに対し、“クラシコ”以降は同0.6ゴールと、得点力が急激に落ちている。彼らが突如としてスランプに陥った理由については、「先月行われたワールドカップ南米予選で3人全員が初めて代表戦に出場し(*スアレスはブラジル・ワールドカップの噛みつき事件以来となる代表復帰を果たした)、心身に疲労を抱えたままチームに戻ったから」という主張から、「ネイマールとメッシに付きまとう脱税疑惑がサッカーへの集中力を削いでいる」、あるいは「メッシは負傷を抱えてプレーしている」といった憶測まで、様々な意見が飛び交っている。いずれにせよ、この1年余りの間に“MSN依存”が想像以上に進んでいたことは否めない。それに対して、2カ月前にMSNを機能させる秘密について質問を受けた際、「『アブラカタブラ』と呪文を唱えれば、魔法が飛び出す」と答えていたルイス・エンリケ監督が、彼らに頼らない“プランB”をついに提示できなかったことは、結果として大きな代償を支払うことになった。
もちろん、現在のサッカー界に彼らの代役をこなせる選手など存在しないに等しい。だからこそ指揮官は、「いかに3人を気持ちよくプレーさせるか」ということに注力してきた。ただし、少しばかりそのことに囚われすぎてはいなかったか。多くのメディアがそう指摘するのも無理はない。
■“バルサ・スピリット”の欠如
一方、全国紙『エル・パイース』は、「バルセロナにおける最高の3トップは、プジョル、シャビ、イニエスタだった」と見出しを打った記事のなかで、個々のプレーぶりや戦術以上に“バルサ・スピリット”の欠如を失速の理由に挙げている。たとえば、メッシ、スアレス、ネイマールは多くの勝ち星をもたらしてきたが、彼らはプレーでチームを引っ張ることはできても、感情を表に出して味方を鼓舞するようなタイプではない。しかし現状、バルセロナは精神面でもMSNに依存する傾向にあるのかもしれない。「今の状況下においては、プジョルのようなキャプテンが必要だと思う」と語ったのは、元レアル・マドリード監督のファビオ・カペッロ氏だが、今のバルセロナにはイニエスタとジェラール・ピケ以外にそういう選手が見当たらないのだ。
L・エンリケ監督は2年前に古巣復帰を果たすと、選手たちの出場時間を徹底的に管理することで、チームに失われていた競争力とスピリットを取り戻そうと試みた。しかし昨年1月に、退団騒動にまで発展したメッシとの衝突事件があって以降は、一転して“放任主義”を貫くようになった。それは結果として、クラブに史上2度目の3冠をもたらしたが、どんな人間でも一旦自由を与えられれば、次第に気の緩みが生まれるもの。だからこそ、監督は常に“アメとムチ”を使い分ける必要があるのだが、最近のL・エンリケ監督からは、現役時代に“闘将”と呼ばれた面影を感じることはほとんどなかった。対照的に、物静かなことで有名だったジネディーヌ・ジダンがレアル・マドリードの監督に就任してからというもの、“鬼軍曹”と化してチームを復活に導きつつあるのは示唆に富む。もちろん、それまで絶好調だったバルセロナと絶不調だったレアル・マドリードでは、選手との接し方に違いが出るのは当然のことだが、L・エンリケ監督は再びチームに喝を入れられるのか、それは注目に値するだろう。
残る2つのタイトル獲得に向けて、バルセロナは再び立ち上がることができるのか。「最強クラブ」は今、その名に相応しいチームであるのか、その真価を問われている。
(記事/Footmedia)
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By Footmedia