レンタル移籍を経験した、(左から)アセンシオ、モラタ、L・バスケス、カルバハル [写真]=Getty Images
3シーズン連続でスペインのクラブ同士の対戦となったUEFAスーパーカップは、昨シーズンのチャンピオンズリーグ王者レアル・マドリードが勝利した。今夏からセビージャに在籍する日本代表MF清武弘嗣は予想されたベンチスタートではなく、スタメンで起用され、120分のフル出場を果たした。清武同様に予想を覆して、レアル・マドリードでスタメン出場を果たしたのが、スペイン代表MFマルコ・アセンシオだ。「スペインの至宝」と評される20歳のレフティーは、世界最高のクラブをけん引できる非凡なタレントを実証してみせた。
昨夏にレアル・マドリードに入団したアセンシオは、すぐさまエスパニョールにレンタルに出された。18歳のアセンシオは古巣マジョルカで2部でプレーしていたが、1部での経験はなかった。1部の経験のない若者がトップチームに留まっても、出場機会は少ないのは目に見えているため、レアル・マドリードは公式戦30試合以上で起用しなければ違約金が発生するという条件をつけて、レンタルに出した。エスパニョールでは出場機会を活かし、すばらしいパフォーマンスを披露。シーズン後にはA代表に選出され、親善試合でデビューした。今夏もレンタル移籍が取り沙汰されたが、フランス人指揮官が手元に置きたいとクラブに要求。そんなジダンの期待に応え、セビージャ戦では豪快なミドルシュートで先制点という結果を早くも残した。エスパニョールにレンタルされた1シーズンで磨かれ、将来有望なタレントから今ではレアル・マドリードの戦力になりつつある。
レアル・マドリードの下部組織で育ったスペイン代表FWルーカス・バスケス、スペイン代表GKキコ・カシージャもそうだ。2選手はトップチームに昇格したが、出場機会がないのでエスパニョールに買われた。そして両者は実戦で磨かれ、実力を示し、買い戻された。今夏にユヴェントスから呼び戻されたスペイン代表FWアルバロ・モラタもそうだし、ドイツのレヴァークーゼンに在籍していたスペイン代表DFダニエル・カルバハルも然りだ。
レアル・マドリードでスタメンを張るということは、それぞれのポジションで世界最高の選手でなければならない。経験が少ないトップチームに昇格したばかりの下部組織出身者が出場機会を得ることはほぼ不可能だ。その一方でトップカテゴリーでの出場機会がなければ、いくら才能があっても開花しないのもまた事実だ。
昨シーズン、トップチームにデビューした19歳のスペイン人FWボルハ・マヨラルはドイツのヴォルフスブルクにレンタル移籍した。14歳から所属し、昨シーズンもほとんどの時間をベンチで過ごした23歳のスペイン人FWヘセ・ロドリゲスはついにパリ・サンジェルマンへの完全移籍を決めた。彼らはそれぞれの地で活躍し、アセンシオやモラタのように再びレアル・マドリードのユニフォームに袖を通すことができるだろうか。
世界のスターが集うレアル・マドリード。もうこのクラブにおいて、最近で言えば元スペイン代表GKイケル・カシージャスのように下部組織からレンタル移籍もなく、ストレートでトップチームに昇格し、スタメン定着ということは2度起こらないのかもしれない。そのことは最大のライバルであるバルセロナにも言えるだろう。
文=座間健司
By 座間健司