昨シーズンのCL決勝で激突したレアル・マドリード(上)とアトレティコ・マドリード(下) [写真]=Getty Images
レアル・マドリードとアトレティコ・マドリードが2018年1月まで新たな選手を登録できなくなった。つまり、2017年冬と夏の移籍市場で選手を獲得しても、試合に登録できない。FIFA(国際サッカー連盟)は2016年1月14日、18歳以下の選手の国際移籍における規定違反として両クラブに処分を発表した。両クラブが異議を申し立てて処分は一時保留されたが、最終的にFIFAは8カ月間検証した結果、訴えを棄却した。
この話題はスペインで思ったほど大きな話題にならなかった。なぜなら予想されていたことだからだ。夏の移籍市場のニュースでも「FIFAからの処分に備えて、レアル・マドリードは選手を積極的に獲得した方がいいのではないか」という意見が地元メディアの中にはあった。また実際に両チームとも、レンタル移籍で選手を出すなど、処分を見越しての準備もしてきた。レアル・マドリードとアトレティコ・マドリードは今後スポーツ仲裁裁判所に訴えを起こすが、認められる可能性は低いだろう。バルセロナも同様の処分を受けてスポーツ仲裁裁判所に訴えたが、棄却されたからだ。
バルセロナが未成年の国際移籍の規定違反の処罰を受けた時、「なぜ同じことをやっているレアル・マドリードや他のクラブも処罰されないのか?」という声が挙がったが、やはりレアル・マドリードとアトレティコ・マドリードにも同じ処分が下された。さらに今後は日本代表MF清武弘嗣が所属するセビージャ、ビジャレアルにも規定違反の処罰の対象になるのではないか、と予想するメディアもある。
スペイン紙『エル・パイス』は密告者からの情報を元に次のように報じている。両クラブはマドリード州協会に理由をつけて、国内の大会に出場できる一時的な登録を行い、常態化させていた。国内の大会しか出場できないが、それで未成年の才能あるタレントを呼び寄せた。国際移籍する時はFIFAが管理する国際移籍証明書が必要だ。だからFIFAは国際移籍証明書を発行せずに籍を移し、マドリード州協会に登録しているだけの選手たちを見つけ出して調査した。FIFAは2015年から、かつて12歳から必要だった国際移籍証明書を10歳からと年齢を引き下げた。
FIFAは特にアフリカや南米から欧州への未成年選手の国際移籍に注意を払っており、世界中に警鐘を鳴らしたいようだ。実際、規定違反はあったに違いない。しかし、FIFAが厳格な姿勢を示すにあたって、今をときめくバルセロナや、チャンピオンズリーグ決勝に進出したマドリードの2チームを罰することは、世界に与えるインパクトとしては理想的だったに違いない。
文=座間健司
By 座間健司