16-17シーズンのリーガ・エスパニョーラを総括 [写真]=Getty Images
今シーズンのレアル・マドリードは、とにかく強かった。得点王もいなければ、最少失点GKもいない。戦術的にも洗練されているわけではなかった。だが、ピッチに立った全員がベストを尽くす。現役時代、誰もが羨む才能を持ちながらも、奢ることなく戦っていたジネディーヌ・ジダン監督のキャラクターが見事に反映された好チームだった。5年ぶりの優勝に異論はないはずだ。
一方、3連覇を逃したバルセロナやアトレティコ・マドリードは、バックアッパーの“質・量”ともに物足りなさが残った。また、前半戦を2位で折り返したセビージャも終盤に失速。敏腕ディレクターとしてクラブを長年支えたモンチ氏やホルヘ・サンパオリ監督の退団など、最後はピッチ外の話題で揺れに揺れた。4位という成績ほどポジティブなシーズンだったとは言い難い。
そんな中で目立ったのは、スモールクラブの健闘だ。10年ぶりの1部復帰を果たしたアラベスは、コパ・デル・レイ(スペイン国王杯)決勝で敗れたものの、今シーズン唯一、カンプ・ノウで勝利を挙げたチームとなった。また、1部在籍3年目を迎えたエイバルも、クラブ史上最高の10位フィニッシュを達成。最終節で乾貴士がバルセロナ相手に決めた2ゴール、また後日発表された日本代表復帰のニュースは、リーガ・ファンにとっても最高のご褒美となったことだろう。
なお、今シーズンは1試合平均2.94ゴールを記録。これは、1試合平均3.10ゴールを記録した1962-63シーズン以来での最高記録だそうだ。来シーズンも“ゴラッソ”が飛び交う白熱した戦いが見られることを期待したい。
■11位:マラガ(60点)
カンフル剤としての監督交代が有効であることは、サッカーの長い歴史が証明している。しかし、時として“改悪”になるケースもある。今シーズンのマラガはまさにそうだった。ウインターブレイク突入後、今シーズンからチームを率いていたフアンデ・ラモス監督との契約解消を発表。それまでアシスタントコーチを務めていたOBのマルセロ・ロメロが後任に指名された。しかし、新体制下でチームは大苦戦を強いられる。リーグ戦11試合でわずか1勝(3分け7敗)、前体制時の11位から15位まで順位を落とすこととなったのだ。
その結果、3月になって、シーズン2度目の監督交代を断行する。ただし、この決断は“吉”と出た。レアル・マドリードのOBであるミチェルが新指揮官に任命されると、第30節以降のラスト9試合は、6勝1分け2敗。同期間で獲得した勝ち点19は、バルセロナ(24)、レアル・マドリード(22)、アトレティコ・マドリード(20)に次ぐリーグ4番目の成績だった。なかでも、第31節にバルセロナから奪った金星は、今シーズンの優勝争いに大きな影響を与えるものとなった。
とはいえ、フアンデ・ラモスを続投させることに成功していれば――。サッカーの話にタラレバは禁物だが、これほど浮き沈みの激しいシーズンを送ることはなかったかもしれないと思うのは筆者だけだろうか。
■12位:バレンシア(30点)
今シーズン、バレンシアほど“人事異動”が多かったクラブはない。リーグ開幕直後に主力選手を大量に引き抜かれると、年末までに3度の監督交代を実施。さらに年明けから1週間後には、スポーツディレクターが辞職を発表。4月には、クラブ初の女性会長であったチャン・レイフン氏も今シーズン限りでクラブを離れることを明らかにした。一般社会と同じように、人の入れ替わりが激しい組織がうまく機能するはずもない。シンガポール人富豪のピーター・リム氏がクラブを買収してから2年半が経過しようとしているが、クラブ状況は混迷の一途を辿っている。
そんな中で唯一の光明と言えたのが、“ボロ”ことサルバドール・ゴンサレス・マルコ監督の存在だ。昨年12月に今シーズン2度目、通算で5度目となるチームの指揮を託されると、2月のレアル・マドリード戦の勝利を挟んで、ホーム7試合無敗を達成。選手やコーチとしてもクラブを支えてきたOBがチームを降格の危機から救いだした。ただし、その功労者もシーズン終了後に退任。前ビジャレアル監督で、ソリッドなチーム作りに定評のあるマルセリーノ・ガルシア・トラルを新指揮官に招へいしたが、現場とフロントが一枚岩にならない限り、同じ轍を踏むことは避けられないだろう。
■13位:セルタ(70点)
リーグ戦ラスト10試合でわずか1勝(1分け8敗)。13位は、エドゥアルド・ベリッソ体制3年間での最低順位になる。しかし、コパ・デル・レイとヨーロッパリーグでは、いずれもベスト4に進出。欧州カップ戦での4強入りは、クラブ史上初の快挙だった。さらに、「レアル・マドリードとバルセロナの両チームから金星を奪った、国内唯一のチーム」という隠れた偉業を達成していることも忘れてはならない。
今シーズンはレアル・マドリードと並んで、最多の公式戦60試合を消化。一方で起用した選手の数は、アスレティック・ビルバオとエイバルの26名に次いで少ない28名。少数精鋭がゆえに終盤になって“燃料切れ”を起こしたが、むしろ長きにわたって欧州との二足のわらじを履きこなし、着実な成果を残したことを称えるべきだろう。なかでも、18ゴールを挙げて、リーガ・エスパニョーラのスペイン人得点王に輝いたイアゴ・アスパスは、代表復帰を果たすなど充実の1年を過ごした。
ただし、ベリッソ監督は契約満了に伴い、退団。バルセロナでアシスタントコーチを務めたフアン・カルロス・ウンスエ新監督のもと、クラブは新たなサイクルに突入する。かつてセルタでも、ルイス・エンリケ監督の右腕を務めた男の手腕には要注目だ。
■14位:ラス・パルマス(50点)
今シーズンは、バルセロナに次ぐ、リーグ2位のボール支配率(56.9パーセント)を記録。GKから丹念にボールを繋ぎ、小気味よいパスパークと選手間の連携プレーから繰り出す変幻自在の攻撃は、敵将からも高く評価された。最もスペインらしいサッカーをするチームであり、見る者を楽しませたのは間違いない。
ただし、弱点もまたスペインのチームらしいものだった。“地上戦”に強いチームは、“空中戦”を苦手とし、セットプレーから失点を重ねた。またホームでは強さを見せるが、アウェイでは滅法弱く、典型的な内弁慶だった。実際、勝ち点39のうち、本拠地で稼いだポイントは85パーセントにのぼる。首都マドリードから約1800キロも離れたカナリア諸島をホームタウンとするため、アウェーゲームでは“移動”というハンデも背負う。場合によっては、ラス・パスマスまで帰らず、敵地で連戦をこなすこともあり、それが選手たちの負担となっていたことは否めない。
また、ラテン気質の強い地域柄もあって、持続力や忍耐力にも欠けていた。後半戦の成績(14ポイント)は18位。前半戦の貯金を食いつないで残留を成し遂げたが、その不安定さは玉に瑕だった。
■15位:ベティス(35点)
5試合を残して残留を決めたものの、1部復帰を果たした昨シーズンから順位を5つ下げた。勝ち点39も1年前より6つ少なく、「1勝=3ポイント」制になって以降ではクラブ歴代ワースト2位の成績に終わった。ちなみに、2部降格を味わった1999-2000シーズンや2008-2009シーズンの勝ち点42よりも悪い成績である。今シーズンの残留ラインが例年以上に低かったことで大参事は免れたが、同じ街を本拠地とするセビージャが過去最高レベルの成績を残したこともあって、ベティスのファンは憂鬱な1年を過ごしたことだろう。
低迷の主要因は、昨シーズンと変わらない。今シーズンも、ベテランFWルベン・カストロにおんぶにだっこだったのだ。御年35歳のストライカーは、チーム最多の13ゴールをマーク。しかし、その次に多くの得点を挙げたのは、アントニオ・サナブリアで4ゴールだった。なお、DFの得点率はリーグ唯一の20パーセント超え。中盤では、ユース出身MFダニ・セバージョスのブレイクが目立ったが、前線では“新しい力”の台頭がなく、結局、R・カストロ頼みとなった。
また、ここ4シーズンで9回の監督交代を行っているフロントの迷走ぶりも、例年同様だった。今シーズン終了直後には、ラス・パルマスを率いたキケ・セティエンの新監督就任を発表。ただし、1年後に別の監督がチームを率いていたとしても、もはや誰も驚かないはずだ。
■16位:デポルティーボ(40点)
2014-15シーズンの1部復帰以来、3年連続で残留を達成。最低限のノルマはクリアしたが、それ以外に目立った成果はあげられなかった。今シーズンは連勝が一度もなく、1部では4年連続で2桁勝利を達成できず。さらに、同じガリシア州を本拠地とする“宿敵”セルタとのダービーマッチにも連敗。ファンにとっては悔しい1年を過ごしたはずだ。
昨夏の移籍市場では、閉幕直前にエースFWルーカス・ペレスのアーセナル移籍が決定。すると、その代役として急遽獲得したホセルがデビュー戦で負傷、数カ月間の離脱を強いられるという不運にも見舞われた。また、9月にフリーで獲得したライアン・バベルも、リーグ戦11試合の出場で4ゴールを挙げる活躍を見せたが、契約延長のオファーを拒否され、在籍わずか4カ月で退団。スペイン1部初挑戦で12ゴールを記録したフロリン・アンドネ以外に得点源が不在で、爆発力に欠けたチームは最後まで苦しんだ。
それでも、今年2月からチームを率いたペペ・メル監督のもと残留を達成。リーガではお馴染みのベテラン指揮官のもと、来シーズンこそは復活の1年としたいところだ。
■17位:レガネス(99点)
過去3シーズンで2度の昇格を果たし、創設88年目にして初めて1部参戦を果たしたレガネス。マドリード郊外の“街クラブ”は、当然のように断トツの降格候補だった。しかし、蓋を開けてみれば、昇格組として史上初となる開幕2試合連続無失点を達成。以後、苦しいシーズンを過ごしたが、ラスト5試合で2勝2分け1敗を記録し、自力での残留を勝ち取った。
なお、彼らの成功はピッチ内に留まらない。今シーズンのスタジアム収容率は、88.4パーセントを記録。“2位”レアル・マドリードの84.6パーセントを上回るリーグトップだった。収容人数が1万人強だったという事実を差し引いても、称賛に値するだろう。特に話題を呼んだのが、ホームゲーム開催を告げる宣伝ポスターだ。たとえば、4月のレアル・マドリード戦では、映画『美女と野獣』をモチーフにタイトル名を「レガ(*クラブの愛称)と野獣」と書き換え、さらにガラスドームのバラをレガネス名産のキュウリの花に差し替えた。ユーモア溢れるポスターのおかげで、同月のSNSのフォロワー数増加率は欧州5大リーグでトップを記録。ピッチ外でも話題を呼んだ。
絶対評価なら「100点」以上、ただ相対評価としてここは「99点」にしておこう。
■18位:スポルティング・ヒホン(25点)
今シーズンはアスレティック・ビルバオとの開幕戦で白星を挙げると、第3節までに2勝1分けの成績を収めて、3位に浮上。大きく期待を膨らませた地元ファンだったが、終わってみれば、それがピークだった。
第4節以降、2つの引き分けを挟んで10戦未勝利。シーズン3勝目を挙げた12月には、18位まで沈み、以後、1つも順位を上げることはできなかった。1月には、アベラルド監督との契約解除に踏み切ったものの、ルビ新体制でも好転の兆しは見えず。3年ぶりの2部降格が決まった。
給与未払い等によるリーグ機構からの補強制限が“解除”された今シーズンは、夏の移籍市場で13名、冬の移籍市場で3名の新戦力を獲得。しかし、2桁得点を奪った選手は1人もおらず、信頼に足る戦力となったのは、冬に加入したMFベスガだけだった。むしろ、不自由を強いられた昨シーズンの方が、アントニオ・サナブリアやアレン・ハリロヴィッチなど“当たりの補強”が多かった。チーム強化部の責任もまた大きいと言えるだろう。
■19位:オサスナ(21点)
今シーズンの総失点は「94」。これは1950-51シーズンのリェイダ(134失点)、1949-50シーズンのヒムナスティック(99失点)に次ぐ、リーガ・エスパニョーラ史上ワースト3位の記録だった。1試合平均2.5失点を許す守備力でも、レアル・マドリードとバルセロナくらいの攻撃力があれば、もう少し白星を掴むことができたかもしれない。しかし、2桁得点を記録したのは、昨シーズンの2部得点王に輝いたセルヒオ・レオン(10得点)ただ1人。得失点差「-54」は、欧州4大リーグにおいてワースト記録だった。
なお、今シーズンは3年ぶりの1部復帰を果たしたが、ホームではわずか2勝。スペイン紙『マルカ』によると、オサスナの年間チケット保持者が本拠地で1勝を味わうのに支払った額は「122.5ユーロ(約1万5000円)」とリーグ最高値だったそうだ。まさに、高い代償を支払うこととなった。
それでも、ホームでのラスト4試合は無敗。全38節中24節で最下位に甘んじながら、ラスト2節でグラナダを逆転することに成功したので、「21点」としておこう。
■20位:グラナダ(20点)
昨夏、グラナダは大きな転換期を迎えた。オーナーがイタリア人から中国人へ交代。それに伴い、フロントや現場スタッフも一新され、スペイン代表監督就任も噂されたパコ・ヘメスがチームを率いることとなった。
しかし、クラブとして明確なプランが存在していなかったことは明らかだった。開幕6試合未勝利となったところで、早くも監督交代の決断を下す。すると、後任に選ばれたのは、OBとはいえ、前任者とは180度異なるスタイルを標ぼうするルーカス・アルカラスだった。“超攻撃的”から“超守備的”へ大きく舵を切ったことで、夏の移籍市場で獲得した新戦力の大半は戦力外に。さらに2月には、スポーツディレクターを就任7カ月で解任した。
さらなる混乱を招いたのは、この後の人事である。新たにチーム強化を担当することになったのは、中国人オーナーがトップを務める得体の知れないスポーツマネジメント会社。そして4月には、副社長にあたる元イングランド代表DFトニー・アダムスが、新監督に就任した。サッカー界を代表するレジェンドの登場はスペイン国外でも話題を呼んだが、リーガ初挑戦の指揮官のもとでチームは1ポイント(!)も挙げられないまま2部降格が決定。勝ち点20での降格は、「1勝=3ポイント」制になった1995-96シーズン以降で、歴代ワースト2位の成績である。
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By Footmedia