レアル退団報道が加熱するC・ロナウド [写真]=NurPhoto via Getty Images
FIFAコンフェデレーションズカップ2017、U-21欧州選手権は開催中で、国内では1部昇格を懸けて2部プレーオフがクライマックスを迎えているが、ほとんどの人はすっかりオフシーズンモードだ。学生は授業が終わり、約3カ月の長い夏休みに突入し、街中では「バカンスはいつ取るの?」という時候の挨拶を必ず耳にする。
毎週、もしくはチャンピオンズリーグ(CL)がある時は週に2度も試合結果に一喜一憂していた人たちも、今は自分のクラブのことを忘れている。あるバルセロナニスタは言う。
「夏の間はプレスは読まない。だって夏の間に400~500人の選手の名前が契約の可能性があるとか言って浮上しては消えるんだ。9月になれば誰が来たのか、はっきり分かる。だからもう夏はそういうニュースに付き合うのはバカバカしいから止めたんだ」
毎晩聞いているラジオも聞かないそうだ。500人というのは大げさだが、確かに彼の言い分もわからないではない。バルセロナ寄りのスポーツ紙の話題は、パリ・サンジェルマンのイタリア代表マルコ・ヴェラッティ一色だ。『メッシとヴェラッティが同じ時期にイビサ島にいた』『代理人がイビサ島に到着し、ヴェラッティと会談』『ヴェラッティが「パリに戻らない」とパリ・サンジェルマンの役員に連絡した』といったニュースが紙面を飾る。それに加えて『アンドレ・ゴメスにオファーが届いた』など人事の話題ばかり。確かにこの膨大な情報量を真に受けていたら、辟易するのも当然だ。
首都では大エースの退団騒動一色だ。レアル・マドリードはリーガ・エスパニョーラとCLの2冠を達成したが、この両タイトル制覇にクリスティアーノ・ロナウドは欠かせなかった。選手のパフォーマンスに手厳しいマドリディスタもエースが残した結果に文句をつけるはずもなく、さらには毎シーズンコンスタントに約40得点を決めるストライカーを崇めていた。王者としてマドリディスタは平穏な夏を送れると思っていたが、シーズンが終わるや否や、退団騒動が勃発した。C・ロナウドに脱税の疑惑がかけられ、自分をヒーローではなく、犯罪者扱いするスペインに嫌気が差し、レアル・マドリードからの移籍を求めているとポルトガル紙『ア・ボラ』が伝えたのだ。脱税疑惑からメディアの焦点は退団へとすぐさま移った。
メッシの時もそうだったが、C・ロナウドの脱税疑惑も一般紙を含めて、大きく報道された。毎年バロンドールを争うスターだから当たり前だ。シャビ・アロンソ、ハビエル・マスチェラーノ、また最近ではルカ・モドリッチも脱税でニュースとなったが、やはりC・ロナウドのそれと比較すると報道は大人しい。世間は「ああ、またサッカー選手の脱税ね」と受け流す程度だ。量も反響の大きさも比較にならない。
C・ロナウドの退団騒動はコンフェデレーションズカップが終わるまでは、これまでのようにいろんな憶測を呼ぶだろう。スペインのメディアでもいろんな意見が飛び交う。
「C・ロナウドの幼児性がまたも表れた。2012年の『僕は悲しい。クラブは理由を知っている』といった発言を覚えているだろう。残留だろう」
「レアル・マドリード以外にタイトルが狙えるクラブなんてあるのか? パリ・サンジェルマンでCLを勝てるのか?」
「契約延長の交渉をしているメッシが、C・ロナウドよりも高い給与をもらうので、基本的には給与アップを求めているのだろう」
スペイン紙『アス』はインターネットで「クリスティアーノが怒っていることを理解できるか?」というアンケートを行い、に実に81パーセントの人が「ノー」と答えたと報じた。会長選に1人しか立候補しなかったことで、2021年まで続投が決まったフロレンティーノ・ペレスも各メディアのインタビューでエースを擁護するが、実際はアンケートに答えた81パーセントの人と同じで、理解できないというのが本音だろう。
スペインのメディアは、スーパースターなゆえにC・ロナウドの一挙手一投足を報じるが、伝える側も受け取る側も「結局は残留が既定路線」で、「またスターがわがままやっているよ」くらいにしか思っていない。だからか。「エースがいなくなってしまう」とマドリディスタが本当に心配しているという空気もない。
文=座間健司
By 座間健司