フットボール史上屈指の選手として数々の伝説を残しているバルセロナのアルゼンチン代表FWリオネル・メッシに、また新たな逸話が加わった。
この度、メッシの衝撃的なエピソードを生き証人として紹介したくれたのは、バルセロナを地元のライバルとして敵視するエスパニョールのMFエステバン・グラネロだ。バルセロナの宿敵であるレアル・マドリードのカンテラ出身のグラネロは、スペイン紙『El Pais』とのインタビューで、メッシの存在を初めて知った時の思い出をとうとうと振り返った。
「僕達は共に1987年生まれの世代で、メッシのことは15歳の頃から知っている。初めて彼に会ったのは、レアル・マドリードのカデーテ(14歳から16歳のカテゴリー)の一員として参加したビジャレアルでの大会だった。僕達はバルセロナと同じホテルに宿泊していた。バルサのカデーテにはジェラール・ピケ、マルク・バリエンテ、セスク・ファブレガスといった代表で一緒になる選手がいて、個人的にも仲が良かった」
「あの当時、僕達はいつも彼らに勝利していた。ところが、ホテルでピケと鉢会わせると、彼は僕の肩を掴むなりこう言ったんだ。『今年は俺らがお前らを倒す』とね。もちろん僕は『ふざけるな、冗談にすらならんぞ』と返した。でも彼は『そんなことはない。なぜなら俺らの新しいチームメイトが途轍もないからだ』と引かなかった。仕方がないので『それは誰なんだ?』と聞くと、彼は『あそこにいるよ』と指差した」
「そこにいたのは本当に小柄な少年だった。プールの端に座りながら両足を水の中にぶらんと下げ、ただただボーっとしているようにしか見えなかった。ピケはジョーク好きなので、『なんだ、またいつもの事か』と思ったよ。『チームメイトを利用して、俺のことをからかってやがる』とさえ思った。あれが初めてメッシを見た瞬間だった」
「ところが、その大会で彼らと対戦した僕達は、本当に0-3で叩きのめされてしまった。その少年は並外れていた。背はとても低いのに岩のようにゴツかった。だが、最も驚かされたのは、その類まれなボール扱いだった。まるで足にぴったりとくっついているかのようで、彼からボールを奪うのは全くもって不可能だった。だから、バルサはキックオフやフリーキックといったいかなるセットプレーも、彼にショートパスを送っていた。あれはまさに衝撃だった。今後どんな選手になるのかと思うと恐怖すら感じたよ。彼とは5年後に再びピッチで顔を合わせることになるのだが、『マジか。相変わらず凄すぎる』と苦笑いせざるを得なかったよ」
「あの大会を見に来ていた僕の兄は、『彼は世界最高の選手になる』と言ってのけた。でも、それは何の手柄でもなかった。なぜなら、そう考えない方がおかしかったからね。僕にとってメッシは、レアル・マドリードにいた昔、エスパニョールにいる今と、常に倒すべき最強の敵だ。だが、彼のプレーを見るのは好きだね。巨大な相手に全力で立ち向かい、試合が終わればお互いに拍手を送り合えるのは素晴らしい。僕達の世代は、メッシとクリスティアーノ・ロナウドが並び立つ比類のない時代を生きている」
メッシとの初遭遇の衝撃を告白したグラネロだが、両者は今週末の9日に行われるリーガ・エスパニョーラ第3節の“バルセロナ・ダービー”で対戦する。メッシはスタメン出場が確実な一方、グラネロはベンチスタートが予想されているものの、試合前後や共にピッチに立った際は、同期生の2人がどのようなやり取りを交わすのか注目したい。
文=北村敦