[写真]=ムツ カワモリ
序盤の10試合を終えたリーガ・エスパニョーラでは4日、バルセロナが本拠地カンプ・ノウにセビージャを迎える注目の強豪対決が行われる。
バルセロナがルイス・エンリケ前監督からエルネスト・バルベルデ新監督へ、セビージャがホルヘ・サンパオリ前監督からエドゥアルド・ベリッソ新監督へと、この夏は両チームともに指揮官交代を実施。迎えた今シーズンは、バルセロナが9勝1分の首位と開幕ダッシュに成功し、セビージャも6勝1分3敗の5位とまずまずのスタートを切っている。とはいえ、バルセロナが28得点3失点といずれもリーグ最高の数字を記録している一方、セビージャは11得点9失点と成績とは裏腹に厳しい戦いが続いている。
ネイマールが電撃退団し、チームの看板であったリオネル・メッシおよびルイス・スアレスとの“MSN”が解体されたバルセロナ。だが、課題であった守備面が安定したことにより、懸念された攻撃面にも好影響がもたらされている。バルベルデ監督は、従来の「4-3-3」だけでなく「4-4-2」のシステムを状況に応じて多用。セルヒオ・ブスケツがかわされると一気にピンチを招いていた問題を、イヴァン・ラキティッチらとの“ドブレ・ピボーテ”を形成することで解消し、良い守備から良い攻撃へと繋げている。メッシが12得点を挙げている一方、スアレスが3得点に止まっている点は気になるが、不安材料は総じて少ない。
一方、ステヴァン・ヨヴェティッチ、ビトロ、サミル・ナスリ、ビセンテ・イボーラなど、夏に大量の選手が退団したセビージャ。しかし、新加入のルイス・ムリエルやノリート、復帰組のヘスス・ナバスやエベル・バネガなど、補強戦力がいまいちチームにフィットしていない。むしろ、パブロ・サラビアやスティーヴン・エンゾンジなど、残存戦力に頼っている状況だ。「4-3-3」を軸に「4-2-3-1」も併用し始めているシステムを含め、ベリッソ監督は依然として選手と戦術の最適な組み合わせを模索している段階にある。
ショートパスを主体とする攻撃が特徴の両チーム。1試合平均のボールポゼッションは、バルセロナが59%、セビージャが54%といずれも高い。その一方で、ピッチを縦に3分割した中央のゾーンからのシュートは、バルセロナが72%で20チーム中最高であるのに対し、セビージャは51%で20チーム中最低となっている。それに伴い、枠内へのシュート率も、バルセロナが61%と高いのに反し、セビージャは52%と低くなっている。これは、バルセロナがサイドを上手く利用して中央突破に結び付けているのに対し、セビージャはサイドで攻撃が行き詰っている事を意味している。
チームの機能面において対照的な両者だが、ホームで5戦全勝のバルセロナにアウェイで2勝3敗のセビージャと、今回の対戦ではその差が一段と顕著になりそうな感がある。とりわけセビージャは、アトレティコ・マドリード、アスレティック・ビルバオ、バレンシア相手に3連敗中と、強敵には歯が立っていないのが現状だ。
また、ここ10年の対戦成績に目を向けても、バルセロナが15勝4分1敗とセビージャを圧倒。しかもホームでは目下5連勝、さらに1つの引き分けを挟んで7連勝を記録している。セビージャがアウェイで最後に勝利したのは2002-03シーズンまで遡る。
従って、バルセロナとしては確実に勝利を手にしたい一方、セビージャとしてはドローでも御の字、というのが現実的な見方となる。とはいえ、昨シーズンの前半戦は首位争いを繰り広げたチーム同士の激突だけに、ファンとしては白熱した攻防に期待したい。そうなるか否かは、6勝のうち5勝でクリーンシートを達成しているセビージャが、バルセロナの圧力にどれだけ耐えられるかに懸かっているだろう。
文/北村敦