レアルとバルサが激突する“エル・クラシコ”は現地時間23日13時キックオフ [写真]=Getty Images
12月23日のリーガ・エスパニョーラ第17節で、レアル・マドリードとバルセロナによる伝統の一戦“エル・クラシコ”が行われる。全世界で6億5000万人がテレビでライブ観戦すると予想される注目のビッグマッチは、スペイン現地時間の13時にキックオフされる。
東京では21時、上海では20時、ジャカルタでは19時、ニューデリーでは17時30分にキックオフされることとなる今回の“エル・クラシコ”。アジア市場の開拓に力を入れているスペインプロリーグ機構の意図が反映された形で、スペイン紙『エル・パイス』は「アジアを制覇するためのエル・クラシコ」と評している。
リーガ・エスパニョーラでは2011-12シーズン以来、アジアにおけるライブ中継を考慮したキックオフ時刻設定を実施。スペイン現地時間の昼12時、もしくは13時開始の試合を組んできている。
リーガがこの試みを始めた当初、12時開始の試合に臨むクラブの地元紙は試合前のチームスケジュールを詳細に伝えていた。選手たちは何時に起きて、何時に朝食、もしくは軽食をとるのか。いつミーティングを行うのか。ナイトゲームとの準備の違いは何か。週末の夕方、もしくは夜の試合開催が習慣化していたスペイン人にとって、トップカテゴリーが午前、午後にゲームを行うのは新しく珍しいことであり、特集記事が何度も組まれていた。
とはいえ、レアル・マドリードやバルセロナといった人気クラブが早い時間帯に試合をすることは少なく、数字にも如実に表れている。前出の『エル・パイス』によると、2011-12シーズン以来、キックオフ時刻が11時から18時の試合を最も多く戦ったのはエスパニョール。通算数は「34」試合だった。次いでラージョ・バジェカーノが30試合、セビージャが28試合となる。一方、直近7シーズンを1部リーグで戦い続けているクラブの中で早い時間帯での試合数が最も少ないのはバルセロナで8試合、次にレアル・マドリードで10試合だった。人気クラブの試合はスペインのゴールデンタイムに放送される機会が多く、必然的にバルセロナとレアル・マドリードはナイトゲームとなるのである。
そして近年は試合開始時間だけではなく、開催日そのものにも変更が加えられている。テレビ放映との関係もあり、週末だけでなく金曜日や月曜日にもリーガ・エスパニョーラの試合は開催されているのである。
とはいえ、スペインで全国区の人気を誇るクラブが週末以外でリーグ戦の試合を行うことはめったにない。すると試合開始時間同様、日程も他クラブにしわ寄せが来る。早い時間帯での試合数が最も多いエスパニョールは今シーズン、第16節までに消化したホームゲーム8試合のうち、実に5試合が平日開催だった。同クラブは昨年2月にもリーグ機構に不満を告げたものの、全くもって改善されていないのが現状だ。本拠地にバレンシアを迎えた第12節では、前半12分にスタンド全体で一斉にリーグ機構へ抗議の意思を示す場面もあった。
以上のように、レアル・マドリードやバルセロナの試合はスペイン国内で多くの視聴者を見込めるため、週末のゴールデンタイムに開催されることが多い。しかし、今回の“エル・クラシコ”は13時キックオフである。その理由は何なのだろうか。答えは「より多くの放映権料を得るため」である。
アルゼンチン紙『クラリン』によると、リーグ機構がテレビ放映権で得る収益は1シーズンあたり約16億ユーロ(約2138億円)とのこと。一方、リーガ・エスパニョーラよりもはるか昔からアジア市場を意識したキックオフ時刻設定をしてきたプレミアリーグは1シーズンで33億ユーロ(約4411億円)を手にしている。リーガの倍以上となる金額であり、差を縮めるために、そしてアジアにおけるリーガの人気をさらに高めるために“エル・クラシコ”のキックオフ時刻が現地時間の13時となったのである。
ただ、今回もしわ寄せが起きている。アメリカ大陸で“エル・クラシコ”をライブ視聴するためには、土曜日(23日)に早起きをしなければいけない。前出の『クラリン』は13時キックオフの一戦について「アメリカ大陸を忘れてはいけない。13時にキックオフすると決めたのはとても良いことだ。だが私だったら、アメリカに合った時間のことも考えるだろう」というコメントで結んでいる。
現地時間23日13時キックオフを迎える“エル・クラシコ”。果たして、スペインプロリーグ機構の思惑通りに機能するだろうか。
文=座間健司
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By 座間健司