2014年夏に加入したグリーズマンはアトレティコで欧州でも屈指のストライカーに成長した [写真]=Getty Images
パト・ソサ、ラデ・ボグダノヴィッチ、マグイ、ダニ・カルバーリョ、ウーゴ・レアル、キキ・ムサンパ、リカルド・ヌニェス――。これらの選手をみな知っているとしたら、かなりベテランのリーガ通であり、アトレティコ通である。彼らはみなスペインではほとんど何の実績も上げられなかった、アトレティコの歴代失敗補強ランキングに出てくる選手たちだからだ。
彼らの例が物語っている通り、近年までアトレティコは補強がうまいクラブではなかった。それどころか、クラブを利用して私利私欲の限りを尽くした故ヘスス・ヒル前会長の時代は、補強の当たり外れ以前の問題として何でもありのクラブだった。
ヒルが2つの映像を見ただけで決めたという無名選手をアフリカから連れてきたり、公表されていたものの17倍の額の移籍金が“誰か”の手に渡っていたことが後に発覚したり。サッカー選手ですらない10代の少年数人との契約に大金が動いたこともあった。
こうした横行を繰り返す傍ら、16年間で30回以上も監督を入れ替え続けたヒルは、結局1999年に横領、公文書偽造などの罪で刑務所送りに。2004年にヒルが急死した後は息子のミゲル・アンヘル・ヒル・マリンとエンリケ・セレソ現会長に経営の実権が移ったが、その後もクラブは監督と選手を入れ替え続ける負のスパイラルからなかなか抜け出すことができなかった。
1999-2000シーズンの2部降格でどん底を味わい、1部に復帰した2002年以降もリーガでは12位、7位、11位、10位、7位と5年連続でUEFAカップ出場圏にすら入れなかった。状況が好転しはじめたのは、ようやく同じ監督が1年以上続いた2006-07シーズン以降で、ハビエル・アギーレが指揮した2年目にリーグ4位でチャンピオンズリーグのプレーオフ出場権を獲得した頃からだ。
選手補強に“当たり”が増えはじめたのもこの頃からで、その先駆けは2006年夏、当時のクラブ史上最高額の2000万ユーロを費やして他クラブとの獲得競争を制したセルヒオ・アグエロだった。
とはいえこのような補強は賭けの要素が大きく、必ずしも投資に見合った見返りが得られるとは限らない。そうでなくともヒルが残した多額の負債に苦しむクラブにとって、毎年多額の補強資金を捻出する余裕はない。
そこでクラブは世界各国のスカウト網を強化し、中長期的視野に立った若手の発掘に精を出すようになった。アグエロと同様の若さで、かつ安価な移籍金で獲得し、数年かけてトップチームの主力に育て上げたホセ・ヒメネス、アンヘル・コレアはその成功例だ。
だが彼らのように若くヨーロッパでのプレー経験もないまま加入し、出場機会も限られる中で順調に成長していく選手はそう多くない。そこでクラブは2、3年後に開花する可能性に期待し、無名の若手有望株を買い取った上でレンタルに出す方法を多用するようになった。
その代表例はジエゴ・コスタだ。2007年1月、アトレティコはポルトガルのブラガに150万ユーロを払い、当時まだ18歳の無名選手だったジエゴの保有権を50%買い取った。その後彼は他クラブへのレンタル移籍を重ね、アトレティコの一員となった後もベンチ生活や長期離脱に苦しんだ末、2012-13シーズンの途中にようやく定位置を掴むに至った。
現時点でも同様の形で他クラブでの成長を見守っている選手が何人もいる。カスムパシャ(トルコ)のガーナ人MFベルナルド・メンサー(23歳)、ラージョ・バジェカーノのウルグアイ人DFエミリアーノ・ベラスケス(23歳)、ベレネンセス(ポルトガル)のポルトガル人GKアンドレ・モレイラ(22歳)らがそうだ。ウルグアイ人FWニコラス・スキアッパカッセ(19歳)のように、レンタルには出さずBチームで育成の仕上げを行っているケースもある。
このような補強の利点は、失敗した際のリスクが少ないことだ。例えばコロンビアのデポルティーボ・デ・カリから買い取ったU-20コロンビア代表FWサントス・ボッレは、カリに1年、ビジャレアルに1年レンタルでプレーした後、リーベル・プレートに完全移籍で放出された。期待外れなオペレーションとなったものの、彼の獲得に費やした推定400万ユーロのうち、売却時に350万ユーロを回収することで損害額を最小限に抑えることはできている。
■補強の的中率を高めるスカウティング部門の充実
もちろんデメリットもある。こうした選手は戦力として育つまでに数年を要することだ。
とりわけ近年のアトレティコはチームが好成績を残した代償として主力の引き抜きが増えており、毎年即戦力の補強が必須となっている。多額の資金を要する即戦力の補強において重要なのは、できる限り不確定要素の少ない人材を選ぶことだ。
その点ではリヴァプールに移籍したフェルナンド・トーレスの後釜としてビジャレアルから引き抜いたディエゴ・フォルランのように、スペインで実力を証明済の選手は手堅い選択だと言える。同年に加入し、今も不動のレギュラーとして最終ラインを形成しているディエゴ・ゴディン、フィリペ・ルイスらもそうだった。
ディエゴ・シメオネが確固たるプレースタイルを確立したことも、即戦力を選ぶ上ではプラスとなっている。チームとしての戦い方が明確になれば、各ポジションに求められる選手の条件も自ずと絞られるからだ。
例えばFW。アグエロとトーレスの時代に始まった2トップには、以降フォルラン、ラダメル・ファルカオ、アドリアン・ロペス、ジエゴ・コスタ、ダビド・ビジャ、アントワーヌ・グリーズマン、ケヴィン・ガメイロら、カウンタースタイルで生きるスピードと機動力に優れたタイプのストライカーばかりを補強してきた。例外と言えるのはボックス内をプレーエリアとするマリオ・マンジュキッチくらいだ。
もちろんスカウティング部門の充実も補強の的中率を高める要因となっている。マンチェスター・Uに巨額の移籍金で売却したダビド・デ・ヘアの後にティボー・クルトワ、さらにヤン・オブラクと、立て続けに世界屈指のGKを補強できたのは彼らの眼力の賜物だ。
しかし、それでも想定外のトラブルが生じるのが補強の難しいところである。たとえ理に叶った人材を選んでも、ジャクソン・マルティネスのように全くチームに馴染めずじまいに終わる選手が出てくることがある。やはりカウンターサッカーに適したアタッカーであるアレッシオ・チェルチ、ニコラス・ガイタンらの獲得も想定外の失策に終わっている。
結局のところ、毎年100%的中させることなど不可能なのだ。それでもヒルの時代に比べれば、ここ数年の外れ補強など可愛いものである。
文=工藤拓
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