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財前宣之から乾貴士まで! 日本人リーガ挑戦の歴史を振り返る

2018.04.20

[写真]=アフロ、Getty Images、ムツ カワモリ

 2017-18シーズンもいよいよ大詰めを迎えたリーガ・エスパニョーラ。21日(土)の第34節では、乾貴士が所属するエイバルと柴崎岳が所属するヘタフェが対戦する。リーガ史上初の日本人対決実現への注目が集まる「歴史的一戦」を前に、これまでリーガ(2部リーグも含む)に挑戦した日本人選手の歴史を振り返る。

財前宣之がスペイン1部クラブに所属する初の日本人選手に

[写真]=アフロ


■財前宣之 1996‐97 ログローニェス(公式戦の出場なし)
 1996年夏、ヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ1969)からのローンにより、1部に復帰したログローニェスに移籍した。同年夏はバルセロナがブラジル代表FWロナウド、レアル・マドリードがブラジル代表DFロベルト・カルロスを獲得するなど、リーガ・エスパニョーラが“ラ・リーガ・デ・ラス・エストレージャス”(スター達によるリーグ)と呼ばれ始めた頃で、ログローニェスの大型補強の1人として加入した財前は、スペイン1部のクラブに所属する初の日本人選手となった。しかし、外国人枠の問題があったうえ、靭帯断裂という不運にも見舞われたため、トップチームに登録されず。結局、公式戦に1度も出場しないまま退団を余儀なくされた。

[写真]=MarcaMedia/アフロ

■安永聡太郎 1997‐98 ジェイダ(34試合・4得点)、2002‐03 ラシン・フェロル(12試合・1得点)
 スペインのプロリーグで出場ならびに得点を記録した初の日本人選手。横浜マリノス在籍時の1997年夏、2部のジェイダにテスト入団を経てローン移籍。全て途中出場ながらリーグ戦34試合でプレーし、スーパーサブとして4ゴールを挙げた。だが、ジェイダは買取オプションを行使せず、1年で日本への帰国を余儀なくされた。安永がスペインで苦しんだ理由としては、新しい環境への適合を挙げる声が多い。実際、『ラ・ボス・デ・ガリシア』紙は、「わずか21歳、スペイン語の基礎知識もない青年にとって、初の海外挑戦は難しいものとなった」と総括している。また、初のスペイン挑戦から5年後の2002年夏には、2部のラシン・フェロルにテスト入団を経てローン移籍した。しかし、2度目のスペイン挑戦は出場12試合で1ゴールにとどまり、半年で横浜マリノスに戻る結果となった。

記念すべき日本人リーガ初得点は城彰二

[写真]=アフロ


■城彰二 1999‐2000 バジャドリード(15試合・2得点)
 スペイン1部リーグで出場ならびに得点を記録した初の日本人選手。2000年1月、横浜マリノスからバジャドリードに半年間のローンで移籍した。出場15試合のうち12試合がスタメンと、レギュラーとしてプレーして2ゴールを挙げた。城のセンターフォワードとしての能力を高く評価したクラブは、完全移籍やローン延長を検討していた。しかし、日本代表で左膝を故障したことがきっかけで、以前から前十字靭帯を損傷したままプレーしていたことが判明。この一件もあって横浜マリノスとの交渉はまとまらず、日本に帰国する結果となった。スペインでの2得点は、いずれも出場8試合目となったオビエド戦で挙げたものだが、相手ディフェンダーを鋭い切り返しでかわして放った左足のシュート、右からのクロスに合わせた高い打点のヘディングは、見る者にインパクトを与えた。実際、『エル・パイス』紙は、「これは遅かれ早かれ起きることだった。城はスコアラーとしてデビューした。この日本人選手は、ゴラッソで試合の均衡を破り、オビエドが攻勢に転じたかに見えた時に追加点を決めた」と称賛している。

[写真]=FAR EAST PRESS/アフロ


■西澤明訓 2000‐01 エスパニョール(6試合・無得点)
 2000年12月、Jリーグ・ベストイレブンの肩書きを引っ提げ、セレッソ大阪からエスパニョールにローン移籍した。しかし、スペイン代表FWラウール・タムードらとのポジション争いに敗れ、リーグ戦わずか6試合の出場にとどまった。『ムンド・デポルティーボ』紙は、西澤がエスパニョールで結果を残せなかった最大の理由として、スペイン語でのコミュニケーションの問題に加え、パコ・フローレス監督との間に信頼関係を築けなかったことを挙げている。無得点のまま半年でエスパニョールを退団した西澤だが、バルセロナとのダービーとなったコパ・デル・レイ準々決勝のセカンドレグでは、アディショナルタイムにゴールネットを揺らしている。ところが、延長戦突入かと思われたこの同点弾はオフサイドにより取り消され、“幻のゴール”という逸話として“ペリコ”(エスパニョールのファン)の記憶に残る形となった。

マジョルカを奇跡の残留に導いた大久保嘉人

[写真]=ムツ カワモリ


■大久保嘉人 2005‐06 マジョルカ(39試合・5得点)
 U‐23日本代表として出場した2004年夏のアテネ・オリンピックでの活躍がきっかけとなり、セレッソ大阪から1部のマジョルカに半年間のローン移籍。初出場となった2005年1月のデポルティーボ戦で、いきなりチームに勝ち点をもたらす値千金の同点ゴールを決め、鮮烈なデビューを飾った。その後、一時はレギュラーの座を失ったものの、スタメンに復帰した終盤戦の3試合で2ゴール・2アシストを記録。降格圏内に沈んでいたチームを奇跡の残留に導く立役者となった。この活躍により1年間のローン延長を勝ち取った大久保だが、2年目は徐々にベンチスタートが増える厳しいシーズンとなった。漸くスタメンに復帰し始めた矢先、エクトル・クーペル監督からグレゴリオ・マンサーノ監督へと指揮官が交代し、再び出場機会が激減。シーズン末に退団する結果となった。スペインでの挑戦は1年半で終わりを告げた大久保だが、1部リーグで初めてインパクトを残した日本人選手と言えるだろう。実際、『マルカ』紙は、「マジョルカはオオクボの獲得に力を入れた。この日本人選手は、好パフォーマンスにより2シーズン目を迎えるチャンスを掴んだ」と、当時を振り返っている。

[写真]=ムツ カワモリ


■福田健二 2005‐06 カステジョン(17試合・2得点)、2006‐07 ヌマンシア(39試合・10得点)、2007‐08 ラス・パルマス(15試合・3得点)
 2006年1月、ベガルタ仙台からカステジョンに半年間のローン移籍。直前までパラグアイで半年間、メキシコで2年間プレーしていたため、それまでスペインに来た日本人選手とは異なり語学面の問題はなかった。しかし、本職のセンターフォワードでプレーさせて貰えなかったこともあり、レギュラーの座を掴めぬまま退団が決定した。だが、同リーグに所属するヌマンシアから闘争心溢れるスタイルを評価され、2006年夏に半年間のローン移籍。前線の要としてのパフォーマンスが認められ、半年間のローン延長を勝ち取ると、10ゴールを決めてチーム得点王に輝いた。ヌマンシアは福田との契約延長を希望していたものの、ベガルタ仙台との交渉が折り合わず、2007年夏にはラス・パルマスに完全移籍した。だが、度重なる故障により期待された得点力を発揮できず、1年間で退団する結果となった。3チームを渡り歩いた2部での戦いは幕を閉じた福田だが、現在でもスペインのプロリーグでシーズン二桁得点を記録した唯一の日本人選手となっている。

[写真]=ムツ カワモリ


■指宿洋史 2008‐09 ジローナ(6試合・無得点)、2009‐10 サラゴサB(27試合・12得点)、2010‐11 サバデル(34試合・10得点)、2011‐13 セビージャB(32試合・20得点)、2013‐14 バレンシアB(34試合・7得点)
 Jリーグを経験することなくスペインのプロリーグでプレーした初の日本人選手。柏レイソルのユースを経て、2009年1月に2部に所属するジローナに完全移籍した。最初の半年は無得点に終わったものの、ローンにより武者修行に出された2年間で大きく成長。4部に所属するサラゴサのBチームではスコアラーとして頭角を現し、3部に所属するサバデルでは2部昇格の立役者となった。その実績が認められ、2011年夏にセビージャへと完全移籍を果たすと、3部に所属するBチームのエースストライカーを務め、2012年1月のベティスとのダービーではトップチームのデビューを果たした。続く2012年夏にはベルギー2部のKASオイペンにローン移籍し、結果を残してセビージャに復帰した。しかし、2013年夏にトップチームの新指揮官に就任したウナイ・エメリ監督の構想から外れ、3部に所属するバレンシアのBチームに移籍したものの、期待された得点力を発揮できなかった。結局、これがスペインでの最後のシーズンとなった指宿だが、現時点で最も多くのチームでプレーした日本人選手となっている。

鳴り物入りでスペイン上陸を果たした中村俊輔だったが…

[写真]=ムツ カワモリ


■中村俊輔 2009‐10 エスパニョール(12試合・無得点)
 2009年夏、リーグ最優秀選手にも輝いたスコットランドでの活躍を経て、セルティックからエスパニョールに完全移籍。レッジーナの主力を務めたイタリアでの3年間を含めたヨーロッパでの7年間の実績はスペインのファンからも認知されており、大きな注目が寄せられた。しかし、出場機会を与えられた序盤戦で目に見える形で結果を残せず、中盤戦からはベンチを温める試合が大半となり、スペインでの挑戦はわずか1年で幕を閉じた。中村がエスパニョールで持ち前の高い能力を発揮できなかった原因には、自身の特性とチームの戦術が合わなかったことを指摘する意見もあるが、現地メディアの多くはコミュニケーションの問題を挙げている。実際、『エル・パイス』紙は、中村がクラブからのスペイン語教師の紹介を断ったことを例に、語学習得に消極的だったことに言及している。マウリシオ・ポチェッティーノ監督も当時、「彼は礼儀正しいうえプロ意識も高く、問題なくチームに入っている。しかし、自ら会話をしようとしない」と述べている。

[写真]=ムツ カワモリ


■家長昭博 2011‐13 マジョルカ(25試合・2得点)
 2010年冬、ガンバ大阪からマジョルカに完全移籍し、クラブにとって大久保嘉人に次ぐ2人目の日本人選手となった。初年度は主にスーパーサブとしてプレーし、チームの1部残留に貢献した。ところが、2011年夏にミカエル・ラウドルップ監督からホアキン・カパロス監督へと指揮官が交代すると状況が一変。前半戦でわずか4試合の出場にとどまるなど、構想外となったため移籍を決断した。2012年2月からは韓国の蔚山現代、2012年夏からは古巣のガンバ大阪でローンによりプレーし、2013年夏にマジョルカに1年半振りに復帰。自身が不在の間に2部に降格したチームで、序盤戦は準レギュラーとしてプレーしたものの、中盤戦から出場機会が無くなり、これがスペインで最後のシーズンとなった。4年半契約でマジョルカに入団するなど期待されながら、成功を収められなかった家長については、「与えられたチャンスをものにできなかったうえ、スペイン語の問題により環境への適応が遅かった」と、『アス』紙が批評している。

バルサのピケから絶賛された杉田祐希也

[写真]=MarcaMedia/アフロ


■杉田祐希也 2013-14 エルクレス(29試合・2得点)
 2012年夏、仙台大学を中退してスペインでの挑戦をスタートさせる。2013年1月に2部のエルクレスの育成組織である4部所属のホベ・エスパニョールに入団すると、トップチームだけでなく5部所属のBチームでもプレー。その活躍が認められ、2013年8月にエルクレスにローン移籍を果たすと、出場2試合目の第15節サバデル戦で初ゴールを記録する。さらに、初先発となった第16節ムルシア戦で2アシストを記録すると、同試合をテレビ観戦していたバルセロナのスペイン代表DFジェラール・ピケから、「ムルシア対エルクレスを見ている。日本人スギ(杉田の登録名)が凄く気に入った!! 素晴らしいクオリティを持っている!」と、『ツィッター』を通じて絶賛された。2014年12月には3年半契約でエルクレスに完全移籍するも、同シーズンは3部降格の憂き目に遭う。結局、翌シーズン一杯でクラブとの契約を解除して退団した杉田だが、5部から2部までの4つのカテゴリーを経験した唯一の日本人選手となっている。

[写真]=ムツ カワモリ


■田邉草民 2013-15 サバデル(64試合・5得点)
 FC東京在籍時の2013年夏、2部のサバデルにテスト入団を経てローン移籍すると、開幕スタメンを獲得した。新天地への適合に苦しみ、一時はポジションを失ったものの、中盤戦から再びレギュラーに定着。サイドハーフだけでなくトップ下でも攻撃を牽引した実績が評価され、2014年夏には1年間のローン延長を勝ち取った。しかし、2年目は1年目ほど決定機に絡む活躍ができず、チームの3部降格に伴う形で退団した。スペインでの挑戦は2シーズンで終わった田邉だが、サバデルが拠点をするカタルーニャ州の地元紙『ル・エスポルティウ』紙からは、「ソータンは、テクニック面は申し分なく、中盤でのポリバレントな能力も際立っている。課題となっていたフィジカル面やディフェンス面も向上し、レギュラーの座を掴み取った」と賛辞を贈られている。

[写真]=ムツ カワモリ


■マイク・ハーフナー 2014‐15 コルドバ(5試合・無得点)
 2014年夏、フィテッセで2シーズン連続二桁得点を記録したオランダでの実績が評価され、1部に昇格したコルドバに2年契約で移籍。プレシーズンマッチ初戦で3部のマルベージャ相手にいきなりゴールを決め、ワントップの座を掴み取るなど、順調なスタートを切った。しかし、開幕から無得点が続いたこともあり、白星の無いチームの戦犯の1人とみなされてレギュラーの座を失った。さらに、自身の獲得に尽力したアルベルト・フェレール監督が解任されると、後任のミロスラヴ・ジュキッチ監督から完全に戦力外とされ、わずか半年で退団する結果となった。スペインのフットボールに適合できなかったハーフナーだが、『アス』紙は、「守備面の弱さと得点力の低さが致命傷となった」と言及しながら、「チームが成績不振によりカウンターへと戦術をシフトせざるを得なくなったことが、スピードの無いハーフナーにとって逆風となった」とも分析している。

[写真]=ムツ カワモリ


■長谷川アーリアジャスール 2015‐16 サラゴサ(8試合・0得点)
 2015年夏、恩師であるランコ・ポポヴィッチ監督を追う形で、セレッソ大阪から2部のサラゴサへ完全移籍。クラブにとっては、2009‐10シーズンにBチームでプレーした指宿洋史に次ぐ2人目の日本人選手となった。開幕スタメンを掴み取った長谷川だが、序盤戦でポジション争いに敗れ、出場機会が一気に激減。自身を呼び寄せたポポヴィッチ監督が成績不振により辞任したことに加え、EU圏外選手枠の問題も抱えていたため、2016年1月にクラブとの双方合意の下で契約を解除した。わずか半年でサラゴサを退団するという憂き目に遭った長谷川について、スペイン紙『エラルド』は、「外交的な性格のハセガワは、新しい環境に素早く順応した。しかし、テクニック面よりフィジカル面が重視される2部での戦いで疲弊し、徐々に輝きを失って行った」と考察している。

リーガ最も成功した日本人選手として存在感を放つ乾貴士

[写真]=Getty Images(提供:WOWOW


■乾貴士 2015‐現在 エイバル(86試合・10得点)
 2015年夏、ボーフムでの1年間にフランクフルトでの4年間とドイツでの実績をもって、エイバルに完全移籍。かねてからの念願だったスペインでのプレーを実現させ、現在はチームの主力として3シーズン目を迎えている。最初の2シーズンはレギュラーの座を失いかけた時期もあった乾だが、1年目は守備面での献身性、2年目は攻撃面での積極性と、その都度課題を克服して定位置を掴み取った。昨シーズン最終節ではバルセロナ相手に衝撃的な2ゴールを叩き込み、スペイン全土にその名を知らしめた。今シーズンは開幕から不動のスタメンとしてチームの生命線であるサイド攻撃を牽引し、3ゴールを記録した昨年12月にはリーグの月間MVP候補にも選ばれた。当然ながら他クラブからも注目される存在となっており、今シーズン終了後のベティス行きが濃厚と伝えられている。その反面、3月に移籍報道が出てからはベンチスタートとなる試合も出て来ている。とはいえ、リーガ・エスパニョーラで最も成功を収めた日本人選手であることは間違いなく、出場試合数やゴールおよびアシスト数など、1部におけるあらゆる記録を保持している。異国の地で成長を続ける乾について、『マルカ』紙は「かつては華麗なプレーを見せる一方で、効果的なプレーが欠けていたイヌイだが、今ではフィニッシュに絡む決定的な仕事が格段に増えている」と高評価を与えている。

[写真]=ムツ カワモリ


■鈴木大輔 2016‐現在 ジムナスティック・タラゴナ(66試合・1得点)
 2016年2月、柏レイソルを退団してテスト入団した2部のジムナスティック・タラゴナに半年契約で加入。当初は右サイドバックでプレーしたものの、早々に本職のセンターバックに定着し、チームの昇格プレーオフ進出に貢献した。そのパフォーマンスは高い評価を受けており、地元紙『ディアリ・デ・タラゴナ』は、「スズキはナスティック(ジムナスティックの愛称)の躍進を象徴する1人となった。鋭いボール奪取やゴール前での爆発的なプレーに代表される素晴らしい能力は、守備陣に抜群の安定感をもたらしている」と絶賛している。契約延長を勝ち取って迎えた昨シーズンは、チームの成績不振により指揮官交代が行われる中、不動のレギュラーに君臨。第27節のサラゴサ戦では加入後初ゴールを記録し、最終節での残留を掴み取った。契約最終年となる今シーズンは、2度に渡る指揮官交代劇の影響を受けながらも、失ったポジションをその都度奪い返し、現在は再びスタメン出場の機会が増えつつある。

[写真]=Getty Images


■清武弘嗣 2016‐17 セビージャ(4試合・1得点)
 2016年夏、ニュルンベルクならびにハノーファーでレギュラーを務めたドイツでの2シーズンを経て、セビージャに完全移籍した。リーガ・エスパニョーラ開幕戦のエスパニョール戦でいきなり1ゴール・1アシストを記録し、見事にデビューを飾った。しかし、序盤の4試合中3試合に先発して以降は殆ど出場機会を失い、唯一のアピールの場となったコパ・デル・レイでも活躍できず、シーズン途中の冬の移籍市場で退団するという憂き目に遭った。清武がセビージャでレギュラーに定着できなかった理由としては、語学面の問題により新天地に適応できなかったという日本人選手特有の事情を、多くの現地メディアが挙げている。その一方で、清武獲得を要望したウナイ・エメリ監督が退任し、後任に就いたホルヘ・サンパオリ監督の希望により補強が行われたという、入団後に起きた不運もある。実際、夏の移籍市場の最終日に加入したMFサミル・ナスリに定位置を奪われる形となった清武に対して、『マルカ』紙は「キヨタケはチームに躍動感を与えられる選手だった。しかし、サンパオリ監督が求めるレベルではパスの精度がなかった」と寸評している。

レアルとバルサからゴールを奪った柴崎岳

[写真]=Getty Images(提供:WOWOW


■柴崎岳 2016‐17 テネリフェ(12試合・1得点)、2017‐現在 ヘタフェ(20試合・1得点)
 クラブ・ワールドカップ決勝でレアル・マドリードから2ゴールを奪った衝撃も冷めやらぬ2017年1月、鹿島アントラーズから2部のテネリフェに完全移籍した。当初は新しい環境への適応に苦しんだものの、加入から2カ月後にデビューを果たすと、瞬く間にレギュラーを奪取。チームはあと一歩のところで昇格を逃したものの、攻撃の柱としてチームのプレーオフ進出に貢献した。すると、テネリフェ加入からわずか半年後の2017年夏、プレーオフ決勝で敗れたヘタフェに完全移籍し、2部から1部へとステップアップ。開幕スタメンの座を掴むと、第4節のバルセロナ戦では本拠地コリセウム・アルフォンソ・ペレスでスーパーゴールを決め、スペインの2大クラブ両方から得点を記録した初の日本人選手となった。ところが、離れ業をやってのけた同試合で左足の中足骨を骨折するという不運に遭う。3カ月で復帰を果たしたものの、離脱中に失ったレギュラーの座を取り戻すことができず、現在はベンチスタートから出場を伺う試合が大半を占めている。なお、『アス』紙は柴崎の現在の状況について、「彼はヘタフェで最も創造力のある選手である。しかし、自身の故障中に起きた4‐2‐3‐1から4‐4‐2へのシステム変更により、トップ下のポジションが置かれなくなったこともあり、先発の機会を大幅に減らしている」と分析している。

[写真]=ムツ カワモリ


■井手口陽介 2018-現在 クルトゥラル・レオネサ(5試合・0得点)
 2018年1月、ガンバ大阪からイングランド2部のリーズ・ユナイテッドに完全移籍すると同時に、スペイン2部のクルトゥラル・レオネサにローン移籍。同月21日に行われた第23節のオサスナ戦でデビューする。しかし、2月18日に行われた第24節のラージョ・バジェカーノ戦で、レギュラーのMFマリオ・オルティスの出場停止により初のスタメン出場を果たすも、前半一杯で交代を告げられる。以降は招集を外れる試合が増えるなど、出場機会を失っている。新天地で苦しむ井手口について、地元紙『ディアリオ・デ・レオン』は、「クラブに多大な反響をもたらして入団したイデグチだが、言語や文化といった新しい環境が大きな障害となっている」と現状を心配している。だが、その一方で「クルトゥラルで最も名の知れた選手の1人であり、日本代表をワールドカップ出場に導いた主役の1人であることに間違いない」と今後に期待を寄せている。

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