バルセロナで攻撃陣の主軸に君臨するダニ・オルモ [写真]=Getty Images
バルセロナに所属するスペイン代表MFダニ・オルモと、スペイン人FWパウ・ビクトルの選手登録問題が、佳境に差し掛かっている。
今夏、ライプツィヒから最大6200万ユーロ(約101億円)と推定される移籍金でバルセロナに加わったダニ・オルモ。カンテラ(育成組織)時代を過ごした古巣への帰還を果たすと、クラブ財政やサラリーキャップの問題で選手登録が完了せず、ラ・リーガ開幕から2試合を欠場したが、デビュー戦となった第3節ラージョ・バジェカーノ戦では早速ゴールも記録。その後も負傷離脱がありながらも、ここまで攻撃陣の主軸に君臨しており、公式戦通算15試合に出場して6ゴールをマーク。今夏にジローナから正式加入を果たしたパウ・ビクトルも同様に登録が遅れており、登録完了後は途中出場が多いものの、ここまで公式戦17試合出場2ゴールを記録している。
だが、シーズンの折り返し地点にあたるこのタイミングで、再び両選手の登録ができない可能性が浮上している。近年のバルセロナは、新型コロナウイルス感染症の蔓延によって試合開催に伴う収入が減少したほか、本拠地『カンプ・ノウ』の改修工事によって観客動員数も従来と比較して縮小せざるを得なくなり、予想収益が大幅に少なくなっている。加えて、ジョゼップ・マリア・バルトメウ前会長時代の負債も経営を圧迫し、サラリーギャップの額そのものが低い状態。そして、ラ・リーガのサラリーキャップ超過規定によって、選手の新規登録を行えない状況が続いていた。だが、今夏のダニ・オルモとパウ・ビクトル加入時には、デンマーク代表DFアンドレアス・クリステンセンやウルグアイ代表DFロナルド・アラウホの長期離脱により、彼らの給与枠の一部を使うという特例措置によって、暫定登録が可能となっていた。
ただし、この暫定登録期限は2024年12月31日までとなっており、バルセロナは新たな収入源を確保できなければ、ラ・リーガ後半戦に向けてダニ・オルモとパウ・ビクトルの登録が不可能となっている。バルセロナは経済活動を専門とする第10商事裁判所へ、ダニ・オルモとパウ・ビクトルの暫定登録を求める訴えを求めたものの、これは27日付で棄却されたと伝えられた。民事を専門とする第一審裁判所への訴えも同様の結末に終始。控訴も棄却されたことが明るみに出ており、暫定措置という形で登録問題を乗り切ることは難しいと予想される。
このような状況のなか、スペインメディア『ムンド・デポルティーボ』が報じたところによると、バルセロナは新たに完成する『カンプ・ノウ』のVIPエリアの運営権を売却することで、新たに1億ユーロ(約163億円)の収入を得られる目処が立ったという。VIPエリア運営権の買い取りに名乗りを上げたのは、カタールの企業と、異なる中東の企業で、ジョアン・ラポルタ会長はその2つのオファーを評価している段階とのこと。ラ・リーガ側はバルセロナが既にこの売却における収益の前金を受け取っていることと、契約書のコピーを確認しており、残すは承認のみだと伝えられている。
なお、今回の売却が成立し、収益に1億ユーロが上乗せされた場合、バルセロナは“1:1ルール”での選手獲得も可能になる見込みだという。現在、バルセロナはサラリーキャップ超過により、選手売却等で生じた新た収益のうち、50%しか新たな選手獲得や選手給与に充てることができない状態だった。これが100%に戻るのが“1:1ルール”の指すところで、いわば通常の予算規模で選手獲得等に動くことができるようになる。
ちなみに、ダニ・オルモの現行契約には、選手登録ができない場合に行使可能なフリートランスファーでの退団が可能となる条項が付随していることが伝えられている。万が一にも今回のVIPエリア運営権の売却が収益として承認されなかった場合、もしくは登録手続きが現地時間12月31日中に完了しなかった場合、今冬の移籍市場でダニ・オルモが退団する可能性も0ではない。
果たして、2名の選手登録問題はどのような結末を迎えるだろうか。
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