天敵イタリア撃破も喜べない? 元ドイツ代表の豪華解説陣が外野から難癖

ドイツ代表

イタリアを下して4強入りを果たしたドイツだが、批判の声もあがっているようだ [写真]=Anadolu Agency/Getty Images

 ドイツの劇的な勝利を素直に喜べない人がいた…。しかも身内で。
 
 2日に行われたユーロ2016準々決勝で、PK戦の末に天敵イタリア代表を退け、1996年以来となる欧州制覇へ近づいたドイツ代表。しかし、その戦いぶりに外野から思わぬ非難の声が挙がり、同国のメディアを賑わしている。

 元バイエルンの名MFで1996年のユーロ優勝メンバーでもあるメーメット・ショル氏が、解説を務めるドイツ公共放送ARDで、イタリア戦において4バックから3バックへ変更したことについて、難癖とも取れる発言をしている。

「機能しているチームになぜそんなことをするのか? 2008年(ユーロ決勝)はスペインに合わせて負けた。2010年(ワールドカップ準決勝)もスペインに合わせて敗退。2012年(ユーロ準決勝)はイタリアに合わせて大会を去った」

 ショル氏は、対戦相手によって戦術を変えたことが好結果につながった試しはないとの持論を展開。さらに、「2014年(ワールドカップ)はチームを信頼し、準々決勝以降は同じシステムを通したことでタイトルを勝ち取った」と、文字通り“Never change a winning team”こそが結果につながるとした。

 これに対し、ヨアヒム・レーヴ監督は、「イタリアを倒すには、特別な手段でいかねばならない。イタリアはいつもサイドから中へと入ってくる。だから真ん中を厚くする必要があった」と3バックにした意図を明らかにし、反論している。

 そしてもう1人、はるかアメリカ大陸からドイツ代表に意見したのが、元ドイツ代表キャプテンのミヒャエル・バラック氏だ。スポーツ専門局『Sport1』が報じている。

 アメリカのスポーツ専門局『ESPN』解説者の席に収まっているバラック氏。イタリア戦について「ベストなゲームではなかったが、いまや(優勝の)大本命だ」と、余計な一言を付け加えつつも、かつてのチームメイトと後輩に社交辞令を送った。しかし、その一方で、「見ていて面白くない試合」、「戦術的になり過ぎた。良くない」とバッサリだったという。
 
 バラック氏はつい10日ほど前にも、ドイツ国内で“リーダー不在論”がささやかれると、ここぞとばかりに「今のチームには個性がない」と口を挟むなど、もはやドイツ代表批判がメインの仕事になりつつあるのではとすら思える。

 ドイツ代表の低迷期を支えた功労者ながら、2011年夏にチームを追われるようなかたちで代表から退いただけに、レーヴ監督一味を快く思っていないとしても不思議ではない。
 
 しかし、ドイツ代表で長く絶対的な主将と守護神として君臨しながら、晩年はバラック氏と同じように思わぬ屈辱を受けたオリヴァー・カーン氏は、正反対のスタンスを取っている。

 ショル氏同様、ドイツ公共放送ZDF局で解説を務めるカーン氏は、今回のシステム変更をめぐる議論にも、「同じシステムでシーズンや大会を戦い抜くという時代はとっくに終わっている。試合中にシステムを変えるチームすらある」と、全面的に擁護論を展開した。

「8000万人の代表監督がいる」と言われるほど、サッカー熱の高いドイツ。(ドイツの人口は約8000万人)

 大きな大会では必ず、“もめごと、いさかい、いがみ合い”がほじくり出され、さらに盛り上げるのがお決まりのパターンとは言え、そこに顔を出す人々の思惑、人間模様もなかなか面白い。

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