ユーロ2016決勝でポルトガル(上)とフランス(下)が対戦する [写真]=Getty Images
1カ月にわたる旅路の末、決勝の舞台、サン・ドニのスタッド・ドゥ・フランスに辿り着いたのは3度目の欧州制覇を狙う開催国フランスと、メジャー大会初優勝を狙うポルトガルだった。今大会13ゴールと得点力に勝るフランスは、ホーム・アドバンテージも相俟って完全に優位な立場にあるが、現実的なサッカーに徹するポルトガルの勝負強さは何か大きな事を成し遂げそうな雰囲気を漂わせている。
■ポルトガル vs フランス
・1975年以来ポルトガルに10連勝中のフランス
・ユーロとワールドカップの決勝におけるフランスの勝率は7割5分
「我々はフランスの人々の抱える問題を解決する力は持っていないが、人々の苦労を和らげることはできる」と言うディディエ・デシャン監督の言葉から、ホームでの決勝を前にしたフランス代表チームの士気の高さを窺い知る事ができる。
今大会6ゴールですでに得点王をほぼ手中に収めたアントワーヌ・グリエスマンが攻撃をけん引するフランスは、準決勝で世界王者のドイツを相手に2-0の完勝を収めるなど、波に乗っており、死角はほとんど見当たらない。
唯一の懸念点は、準決勝から中2日と、ポルトガルよりも試合間隔が1日詰まっているところだが、決勝トーナメントに入ってからこの方、フランスが全3試合を90分間で勝ち切っているのに対し、ポルトガルは2試合が延長にもつれ込んだ部分を加味すると、コンディション的にそこまで明らかな差は出ないだろう。
グリエスマンの得点力をフル活用すべく、ムサ・シソコを中盤の右サイドに置いた「4-2-3-1」はくだんのドイツ戦で成熟の域に達しており、元々採用していたエンゴロ・カンテをアンカーに置く「4-3-3」は有効なオプションとして活きている。充実の時を過ごす開催国が、この決勝で優勝を逃す光景を思い描くには、それなりの想像力が必要とされる。
しかし、クリスティアーノ・ロナウドという稀代のフットボーラーの存在が、その困難な想像を多少容易にしているのは紛れもない事実だ。
ポルトガルにメジャー大会初制覇をもたらすのを夢見るキャプテン。そんなC・ロナウドの執念がどこかに通じたのか、ポルトガルは“らしくない”勝負強さを発揮して悲願達成まであと一歩のところまで勝ち進んできた。
12年前、自国開催のユーロで決勝進出を果たし、誰もが優勝を本命視するなか、伏兵のギリシャに敗れたポルトガルだったが、今大会では全く逆の立場で決勝を迎えることとなった。当時10代だったC・ロナウドは、リスボンでの決勝で敗れ、辺りを憚る事なく悲しみの涙に暮れたが、31歳となった彼が、もしサン・ドニの夜に涙を流すのだとしたら、それはどのような涙となるのか。
By WOWOW