イタリアはポーランドの守備を崩せず敗戦 [写真]=NurPhoto via Getty Images
6月はイタリアのサッカーファンにとって、男子ワールドカップが開催されない年であれば、物寂しい月だ。しかし、国際大会が目白押しの今年は違う。U-20は4位に終わったものの、史上初の決勝進出の期待を膨らませた。フランスで現在行われている女子ワールドカップでは、グループリーグ最終節でブラジルに敗れはしたが、初戦で難敵オーストラリアを逆転で2-1と下し、決勝トーナメントに駒を進めた。初の1位通過となる女子の快進撃は、普段はサッカーに関心があまりない人々まで巻き込み、ちょっとしたアッズリーネ(女子イタリア代表チームの愛称)・ブームが巻き起こっている。
そして、地元でU-21欧州選手権を戦うアッズリーニだ。初戦でスペインに3-1と逆転勝利を収め、2004年大会以来15年ぶりとなる欧州奪還に国民の関心は集まっている。この年代がスペインに勝利するのは13年ぶり、欧州選手権であれば、1996年大会以来だった。特に、A代表組のフェデリコ・キエーザをはじめとした6人はスポットライトを浴び、「マニーフィチ・セイ(偉大な6人)」とメディアも強い関心を寄せている。
そんなアッズリーニの第2戦の相手はポーランド。グループ3に所属した予選ではデンマークの後塵を拝し、2位でプレーオフへ。ポルトガルという難敵を相手に、しかも第1戦を0-1で落としながら、第2戦で3-1と勝利して勝ち上がってきた。本大会初戦もベルギーを相手に不利が予想され、スペインを相手に戦ったイタリアのように、先取点を許し、一方的に攻め込まれた。自分たちが放ったシュート数7に対し、許したシュートは18本。ボールポゼッションも42パーセントと低いものであった。それでも勝負所を読めるチームであることを証明し、3-2で白星を飾った。イタリアにとっては容易な相手ではないことは確かだ。
イタリアはスペイン戦から3人を変更。アルトゥーロ・カラブレージ(ボローニャ)、モイーズ・キーン(ユヴェントス)、ニコロ・ザニオーロ(ローマ、スペイン戦で頭部を強打して負傷退場したが大事には至らなかった)が外れ、リッカルド・オルソリーニ(ボローニャ)とパトリック・クトローネ(ミラン)が先発。また、攻撃的な右サイドバックのクラウド・アジャポン(サッスオーロ)が起用された。
一方、ポーランドはパトリック・ジチェク(グリビツェ)、フィリップ・ヤギェウォ(ルビン)、クリスティアン・ビエリク(チャールトン)、カロル・フィラ(グダニスク)が先発に入り、公式発表は「5-4-1」のフォーメーションだったが、試合が始まってみると、守備の場面では「4-5-1」、攻撃時には「4-2-3-1」の可変フォーメーションが用いられていた。試合前から、駆け引きが行われていたということだ。
キックオフから「イタリア! イタリア!」の大声援を受けるアッズリーニが猛攻を仕掛ける。まずは、2分にロレンツォ・ペッレグリーニ(ローマ)がシュート。さらに、キエーザも3分にカットインからの惜しいシュートを放つ。スペイン戦勝利の立役者、キエーザがボールを持つだけで、スタジアムの声援は加熱する。
ポーランドも10分にはCKを獲得し、守りだけではないところを見せる。イタリアはキエーザを中心とし、左サイドからの攻撃を続けるが、ポーランドも必死に抵抗。26分にはアジャポンがこの試合初めての攻撃参加を見せ、絶妙なクロスを入れるものの、GKカミル・グラバラ(オーフス)のセーブの前にゴールはならず。対するポーランドは、ベルギー戦と同様に左サイドにボールを集める。キーマンのセバスティアン・シマンスキ(ワルシャワ)にボールが入るが、守備に難があるアジャポンがなんとか対応する。
30分、この試合初めての決定機が訪れる。キエーザがサイドで持つと、ゴール正面にギャップが生まれる。そこにロランド・マンドラゴラ(ウディネーゼ)が走り込むが、シュートは枠を捉えることはできなかった。イタリアはさらに攻勢を仕掛けるが、9人でゴール前を固める相手を崩せない。試合が動いたのは39分。シモン・ジュルコフスキ(ザブジェ)がニコロ・バレッラ(カリアリ)に倒され、ポーランドがFKを獲得。こぼれ球をビエリクが押し込み、ポーランドが先制した。イタリアは警戒していたセットプレーから失点を許してしまった。
44分にはオルソリーニのシュートがゴールラインを割り、同点となったかに思われたが、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)により、ボールを受けた際にオフサイドポジションにいたと判断され、取り消される。スタジアムは大ブーイングの嵐に包まれ、前半は0-1とポーランドのリードで終了した。
後半開始と同時に、肩を負傷していたオルソリーニに代わりキーンが投入される。51分にはキエーザがクロスをそのままボレーで合わせたが、GKグラバラの好セーブに止められた。近年、ポーランドには優れたGKが多いが、この選手も将来が楽しみな一人であることは間違いない。キーンとキエーザが両サイドを入れ替わり、さらにはマンドラゴラに代わって、サンドロ・トナーリ(ブレシア)がピッチに送り込まれる。ゴール前のアイデアを増やしたいという狙いだろう。しかし、イタリアはクロスの精度が足りない。ことごとく跳ね返され、刻々と時間が過ぎていく。74分には左サイドからペッレグリー二が強烈なミドルを放ったが、ポストを叩く。残り10分になると、右サイドのアジャポンに代えてザニオーロを投入。3バックに変更し、前線は4トップとなったが、枚数を増やしただけでキーンとキエーザの持ち味であるスピードを全く生かせなくなってしまった。
結局、観衆の熱狂的な後押しもむなしく、このまま0-1で敗戦。相手の8本のシュートに対し、30本のシュートを放ち、ポゼッションは64パーセントを記録したものの、ポーランドの徹底した守備を最後まで崩せなかった。優勝したようなお祭り騒ぎを見せたポーランドは、駆けつけたメディアや観衆も多く、この試合にかける意気込みが強く伝わった。
試合後、ルイージ・ディ・ビアージョ監督は会見で「不当な敗戦だ。残念でならないが、グループリーグ突破は難しくなってしまった。それでも、選手たちに不満はない。ゴール前でもっと正確なプレーができたかもしれないが、もう過ぎ去ったことだ。この試合に関してコメントするのはきついものだ」と言及した。
そして、後半途中から出場したトナーリはミックスゾーンで『RaiSport』のインタビューに対応。話し出すまでに時間がかかり、明らかに落胆しながらも、記者の質問に丁寧に答えていた。
「難しい試合だった。ポーランドはゴールを決めると、ボールより後ろに立ち、全員が守備に回っていた。自分たちはよくやったと思う。真のチームだと証明したが、負ければ当然悔しさはある。序盤、たくさんのチャンスを作ったが、それを生かすことができなかった。残念ながら、時にそのようなことが起きるものだ。勝つときもあれば、負けるときもある。自分たちはずっと試合に入っていた。繰り返すけど、守備的な相手に対してね。土曜日はベルギーと戦う。この試合についてだけを考え、何が何でも勝たなければならない」
イタリアのグループリーグ勝ち抜けの条件は複雑だ。まずは最終戦で、すでに敗退が決まったベルギーに勝たなければならない。そして、スペインがポーランドに勝つ必要があるが、一方でイタリアの得失点差を上回るようなゴールラッシュがないことを望まなければならない。また、3グループのうちの最も成績の良い2位に入り込むには、他のグループリーグの状況も見なければならない。
兎にも角にも、ベルギー戦に勝つことが求められる。前回の2017年大会も第2戦を終えた時点で厳しい状況に立たされた。それでも第3戦で、最終的には優勝したドイツに勝って首位通過している。最後まで望みを捨てるわけにはいかない。
文=佐藤徳和/Norikazu Sato