2013年10月に行われたシャルケ戦でのドルトムントサポーター [写真]=Bongarts/Getty Images
文=鈴木智貴
サッカースタジアムは今後、空港の保安検査場に並ぶほどの、厳しい監視下に置かれるかもしれない。
日本代表DF内田篤人が所属するシャルケで会長を務めるクレメンス・テンニース氏が、過激さを増すフーリガン対策として、新たな道を模索しているという。
契機となったのは昨年10月26日にホームでおこなわれたブンデスリーガ第10節、ドルトムントの“ルール・ダービー”。キックオフ直前にドルトムントサポーターが大量の発煙筒を焚き、爆竹をグラウンドに投げ入れるという愚行があったからだ。また彼らは皆、目出し帽のようなものをかぶっており、事前に計画が練られていたものだと推測できる。
ピッチ上でこれを見ていた内田は試合後のミックスゾーンで、「選手のモチベーションは上がりますし、(ファンが)盛り上がるぶんには(問題ないけど)ね。まあ(発煙筒を投げ入れるのは)良くないとは思いますけど」と、あまり意に介してない様子だったが、数年前よりDFL社(※ドイツサッカーリーグ社。ブンデスリーガの運営をしている)の方針は、安全基準をこれまでよりも厳格にするという流れになっている。
実際に各スタジアムでは、ファンがスタジアムに入場する際のボディチェックを、これまでよりもはるかに厳しくしている。しかし、狡猾なフーリガン達はそれを巧みにくぐり抜け、スタジアム内での暴挙に出ており、その発生件数は近年増加の一途にある。まさに「いたちごっこ」な状況なのだ。
テンニース会長は言う。
「チケット購入時に身分証の提示を求め、転売が出来ないようにする。そしてファンが入場する前にも、身分証明書の提示、もしくは網膜スキャンをゲートに設け、チケット購入者と入場者が一致していることを明らかにする。そうすれば(スタジアム内で犯罪行為が起きた時に)個人の特定が容易になるはずだ」
すでにワールドカップやオリンピックなどの国際大会では、テロ防止のため転売防止の措置が取られている。
これに倣ったテンニース会長の提案は、専門家の意見によればドイツ連邦政府が定めている個人情報保護法を100%クリアしているとは言い難いのが現状のようだ。しかし、「女性、お年寄り、子供達が安心して観戦できる」ことが売りだったドイツのサッカースタジアムに、危機が迫っているのは紛れもない事実である。
果たしてドイツサッカー界は、いたちごっこに終止符を打つことができるのだろうか。
By 鈴木智貴