ヘルタ戦でドイツ史上最速優勝を果たしたバイエルン [写真]=Bongarts/Getty Images
文=鈴木智貴
3月25日、昨シーズンの三冠王者バイエルンは、日本代表MF細貝萌を擁するヘルタ・ベルリンに敵地で快勝し、ブンデスリーガ51年の歴史上初めてとなる、3月中でのマイスターシャーレ(優勝皿)獲得を決めた。
その翌節の対ホッフェンハイム戦では3-3の引き分けに終わり、リーグ連勝記録は19でストップしたが、そもそもこの「19連勝」という記録こそが異常であり、今シーズンのバイエルンは誰にも止められなかった。
しかし、この「ノンストップ・バイエルン」を止めるべく、(禁じ手と言って差し支えない)仰天プランが飛び出した。しかも発信元は、ブンデスリーガを運営するドイツ・フットボール・リーグ(DFL)社のアンドレアス・レティッヒCEOというのだから驚きだ。
エイプリルフールまで残り48時間以上もある3月29日夜、ドイツ第2国営放送局(ZDF)の人気スポーツ番組『Sportstudio』で同CEOは冗談とも本気とも取れる口調で、こう話し始めた。
「バイエルンの行き過ぎた強さという、現在ブンデスリーガに起こっている現象への手立てを考えなければならないね。首位のクラブが2位に勝ち点20以上も差をつけてしまうのは、誰にとっても良くないことだ。サッカーファンにとっては退屈極まりないことだからね。我々にとっても面白くないし、ルール変更をする必要があるかもしれない」
そしてレティッヒCEOは、南ドイツの雄が持つ圧倒的な優位性を崩す方法として、次のような具体案を複数掲げている。
<1>ボールにICチップを入れる。バイエルンにはボールタッチ数の制限を設け、それを機械で判断する。
<2>バスケットボールの24秒ルールのように、時間制限を設ける。バイエルンは制限時間内にシュートを打たなければならない。
<3>勝利時における勝ち点を3ではなく2にする。
この番組内では、バイエルンのスポーツディレクター、マティアス・ザマー氏にも中継がつながっていたが、彼はこの話を聞き一笑に付した。
「DFL社がこんなに面白いなんて、全然知らなかったよ」
いくらバイエルンの1強が、他クラブのファンにとって退屈とは言え、そもそもサッカー愛がとてつもなく強いドイツ国民が、原則ルールを覆すこのような仰天案を受け入れるはずはないだろう。
しかしリーグ運営元のCEOが、ルール変更を真剣に考えてしまう――それほど今シーズンのバイエルンは強さが際立っていた。
By 鈴木智貴