後半戦での巻き返しなるか [写真]=Bongarts/Getty Images
どん底から、1週間が経った。日本代表での戦いを終えた香川真司が、ドルトムントの一員としてブンデスリーガの後半戦を迎える。
連覇を狙ったアジアカップでは、5大会ぶりの準々決勝敗退。ドイツの地で失意からの復活を目指すことになるが、置かれている状況は易しくない。近年に破竹の勢いを見せていたドルトムントだが、今シーズンは大苦戦。前半戦を終えて、最下位のフライブルクと同勝ち点の17位と、2部への自動降格圏に沈んでいる。
チームの成績と軌を一にするかのように、今シーズンの開幕直後にマンチェスター・Uから復帰した香川のパフォーマンスも下降。復帰戦でこそゴールを挙げたものの、ウィンターブレイク前には先発落ちはおろか、3試合連続で出番がないこともあった。
「今大会も簡単にはいかないし、非常に厳しい戦いだと思っているが、乗り越えていければ自然とドルトムントでの道筋も見えてくる」
並々ならぬ意欲を抱いて臨んだアジアカップでも、タイトル防衛に失敗した。敗退が決まったUAE代表戦では、本田圭佑の6本に次ぐ5本のシュートを放ったが無得点。6番手として登場したPK戦でも、シュートがポストを叩いて失敗し、日本最後のキッカーとなった。
グループリーグで散った昨夏のワールドカップから失地回復を図った大会で敗退したことにより、中心選手の香川には辛らつな批判が集まっている。「結局負けたので、点が取れずにすごく責任を感じます。試合でもチャンスはありましたし、PKでもそうですし、申し訳ないです」と、香川自身もUAE戦直後には謝罪を繰り返した。
ただ、クラブと代表で長らく続いた苦悩もついに底打ちした感がある。
リーグ中断期間前で、最後の試合だったブレーメン戦では後半から出場。チームは敗れたが、「チャンスに絡めていることは、調子の良さを表している」という出来だった。確かな手応えを抱えつつ臨んだアジアカップでも、敗退したことで批判が集まっているが、日本の全4試合に出場して7ゴール中5ゴールに絡むプレーを見せていた。
グループ最終戦のヨルダン代表戦では、ゴールも記録。日本代表としては、昨年6月以来となる228日ぶりの得点だった。長友佑都も「エースで10番の真司が大きなプレッシャーを背負い、なかなか点が取れなくて難しい時期を過ごしたなと思う。ただ、得点して彼自身が本当に嬉しそうな顔をしていた。これを機に吹っ切れて、点を取ってくれるのでは」と語っていたように、実際には尻上がりに調子を上げている。
「(日本から)ドルトムントやユナイテッドに行って、周りや自分自身が求めるものは数段上がっていて、その中でのプレッシャーや競争はこの1年間で経験できたと思う。結果を残すことはできなかったけど、この経験が絶対にプラスになると信じているし、色んなことを考えさせられた1年だった。改めて精神的に濃い1年で、メンタル的に成長できる土台を作れたから、それを来年はものにしていければいい」
昨年の大晦日、日本でアジアカップの事前合宿中だった際に、2014年の1年間を振り返って口にした話を思い出す。
ブンデスリーガの再開初戦は、31日に行われるレヴァークーゼン戦。ドイツ紙『キッカー』の先発予想では、ベンチスタートが濃厚と伝えられた。アジアカップ敗退の傷も癒えず、所属クラブのレギュラー争いでも劣勢が強いられている。結果の出ないトンネルは、自身の予想をこえてもうしばらく続くかもしれない。
ただ、試合は立て続けにやってくる。ドルトムントはリーグこそ下位に沈んでいるが、チャンピオンズリーグではベスト16、国内カップでも3回戦に進出。落ち込んでいる暇がないほどの、過密日程が待ち構える。
失意を終わらせ、飛躍へ向かう滑走路は、目の前に続いている。
文=小谷紘友