ヴォルフスブルク戦で発煙筒を焚くドルトムントのサポーター [写真]=Bongarts/Getty Images
文=鈴木智貴
ドイツサッカーのシーズンを締めくくる一大イベントの陰で、別の文化的催し物が被害を受けていたことが明らかになった。
5月30日、DFBポカールの決勝がベルリンのオリンピア・シュタディオンで開催され、日本代表MF香川真司が所属するドルトムントと、今シーズンのブンデスリーガを2位で終えたヴォルフスブルクが激突。ドルトムントのユルゲン・クロップ監督にとっては退任前最後の試合となったが、結果は3-1でヴォルフスブルクの勝利に終わった。ドイツ紙『ビルト』によると、愛するクラブを試合前日から追いかけ、首都には約13万人のドルトムントファンが集まっていたという。
そのようにベルリンが黄色と黒で覆われていた29日夜、同都市の映画館『ツォー・パラスト』の前では、ドイツにおけるアカデミー賞的存在、『Deutscher Schauspielerpreis(直訳:ドイツ俳優賞)』の授賞式が行われていたが、そこに乱入したのは他でもない彼らだった。
21時半頃、近くを通りかかった1人のドルトムントファンが、大声で歌いながら立ち入り禁止のテープを乗り越えると、それを見た他のファンも大挙して押し寄せ、華やかな雰囲気の式典が一転してカオスに。例年であれば、このような喧騒に巻き込まれることなど全くないため主催者側も油断していたのか、警備員の数もごくわずかだったそうで、総勢50人の酔っ払い及び高揚した人間を制止することはできなかった。
なによりひどかったのは、彼らの品格だ。
式に乱入してドルトムントの応援歌を叫ぶだけでも目に余る行為なのだが、それだけでは飽き足らず、俳優たちに性的な表現を含む罵詈雑言を浴びせる者もいたという。おかげで会場はめちゃくちゃになり、『ジプシー』呼ばわりされた著名な役者アルミン・ローデ氏をはじめとする出席者たちは、足早にその場を去っていった。
その翌日、同式典の関係者は、ヴォルフスブルクのファン以上に、同クラブの優勝に歓喜していたかもしれない。
By 鈴木智貴