エチオピアの子どもたちと授業を受けるスボティッチ(スボティッチ財団の公式ツイッターより)
文=鈴木智貴
2014-15シーズンも終わり、多くのブンデスリーガ所属選手がドバイやイビサ島、モルジブやプーケットなどでバカンスを楽しんでいる中、日本代表MF香川真司が所属するドルトムントのセルビア人DFネヴェン・スボティッチは、この時期恒例となった別の事業に勤しんでいる。
貧困にあえぐ子供たちを助けるドイツの団体『Kinderlachen(日訳:子供たちの笑顔)』で親善大使を務めているスボティッチは2012年末、自ら『ネヴェン・スボティッチ財団』を設立。貧しい人々を救うため積極的に慈善活動を行っている同選手は、バケーションで賑わっている地中海の島々を飛び越え、アフリカの内陸へ向かった。
3度目のアフリカ訪問の目的――それは同財団のプロジェクトを行うことに他ならない。
世界最貧国の1つに数えられるエチオピア北部のティグレ州で17日間を過ごす予定のスボティッチは、ドイツ紙『ルールナハリヒテン』によると、財団を通じて得た57万ユーロ(約7800万円)を用い、『100%の衛生』という名の活動をスタートするという。同州にある13の学校で清潔な水の出る井戸を掘り、そして男女別のトイレを建設。またそれとは別に、100~300人が暮らす8つの村でも、同じように井戸が掘られるとのことだ。
そのように現地で多忙な日々を過ごしているスボティッチには、残念ながらニューヨークに住む両親の下でくつろぐ時間はない。しかし同選手は「全く問題ないよ。両親は元気に暮らしている。そのおかげで僕はこの財団に集中できる」と、自らが全うすべき任務のことだけを考えている。
ユーゴスラヴィア内戦が始まる直前、祖国を離れドイツに移住した過去を持つスボティッチは、ドイツ誌『11 Freunde』とのインタビューで「周りにも逃げてきた人がたくさんいて、お互い助け合って生活していた。1年目、僕らの家族は近所のサッカーチームの、クラブハウスの屋根裏部屋に住んでいたんだ」と語った。
いつ貧困にまみれてもおかしくなかったスボティッチ一家、しかし周囲の助けがあったからこそ今がある――そんな人生経験が、彼をアフリカに向かわせている。
By 鈴木智貴