ノイアー(中)の後継者として注目されるテア・シュテーゲン(左)とレノ(右)[写真]=Getty Images
「現代最高のGKは誰か?」と問われれば、見る人によって様々な答えが挙がるに違いない。だが、その回答をリスト化すれば、かなりの割合で「マヌエル・ノイアー」の名前が含まれるだろう。2014年度のFIFAバロンドール最終候補にも名を連ねた29歳のノイアーは、世界的に見ても頭ひとつ抜きん出た存在となっている。
もっとも、そのノイアーですら、いつまでもドイツ代表の「背番号1」が安泰なわけではない。17日に開幕するU-21欧州選手権(チェコ)で、ドイツU-21代表の守護神の座を争っている2人の名前を見てほしい。マルク・アンドレ・テア・シュテーゲン(バルセロナ)と、ベルント・レノ(レヴァークーゼン)。他の国であればA代表の正GKを争えるだけの実力者が、U-21代表でしのぎを削っているのだ。
メンヒェングラードバッハ出身のテア・シュテーゲンは4歳で地元のボルシアMGに入団した。トップデビューは2011年4月、わずか18歳の時。シーズン終盤戦で、チームは降格の危機にあるという難しい状況の中、落ち着いたプレーで1部残留に貢献すると、2012年の欧州選手権前には代表候補として初招集された。2012年の欧州選手権、そして昨年のワールドカップこそ最終メンバー入りを逃したとはいえ、昨年夏には1200万ユーロでバルセロナに移籍し、キャリアを大きくステップアップさせた。チャンピオンズリーグと国王杯で決勝の舞台に立ち、加入1年目にして3冠に貢献した活躍は記憶に新しい。
一方のレノは、2011-12シーズン開幕直後にドイツ代表GKレネ・アドラーが負傷したため、シュトゥットガルトからレンタルで移籍。ブンデスリーガデビューを飾ると、そのまま正GKに定着してアドラーをハンブルガーSVへと追いやった。レヴァークーゼンはそのシーズン、レンタル加入からわずか4カ月の時点で、レノを完全移籍させている。19歳のGKに費やした移籍金は800万ユーロ。彼の才能がいかに高く評価されたかがうかがえる数字だ。
U-21欧州選手権予選では、これまでどおりレノが1番を、テア・シュテーゲンが12番をつけたものの、予選出場はレノが2試合、テア・シュテーゲンが6試合。予選最終戦となったウクライナとのプレーオフでも、ゴールを守ったのはテア・シュテーゲンだった。すると、この状況に不満を募らせたレノが「なぜ出してもらえないのか分からない」と、バルセロナでカップ戦要員となっているライバルに反発していることを『ビルト』紙が伝えた。そう、この2人は往年のオリヴァー・カーンとイェンス・レーマンのごとく、あからさまに互いをライバル視する宿敵でもある。
U-19時代に合宿で同部屋になった時は、テア・シュテーゲンが「眠れない」とレノの長電話に文句をつけてもめたことがある(それぞれ1人部屋に隔離された)。強気なGK同士の“不仲”はすでに周知の事実で、レヴァークーゼンのルディ・フェラーSDは、U-21欧州選手権開幕を前に「私なら、どちらかをA代表へ送るだろう」と『キッカー』誌に“平和的解決法”を提案したほどだ。いずれかをA代表に送ればGKの選手層が手薄になりそうなものだが、U-21世代には他にもティモ・ホルン(ケルン)、ロリス・カリウス(マインツ)といった有望株が控えている。
振り返れば、2009年のU-21欧州選手権で優勝したノイアーが翌年のW杯でA代表の「背番号1」を受け継いだのは、ロベルト・エンケ(彼も素晴らしいGKだった)が自ら命を絶った後、後任となったレネ・アドラーが南アフリカW杯の直前に負傷し、突然与えられたチャンスをモノにした結果だった。同じように、テア・シュテーゲン、レノのいずれかが、今回のU-21欧州選手権でチャンスをつかめば、その先の展開がどうなっても不思議はない。
ただ一つだけ確かなことがあるとすれば、ドイツは今後少なくとも10年は、GK不足に頭を悩ませる心配がない、ということくらいだろうか。