FC東京からマインツに移籍する武藤 [写真]=大木雄介
先月30日、FC東京に所属する日本代表FW武藤嘉紀のマインツ移籍が決定した。2015明治安田生命J1リーグ・ファーストステージ終了後にドイツへ渡り、メディカルチェックを経て、契約書にサインする予定だという。
マーティン・シュミット監督の「我々は長い間武藤を観察してきた」という言葉が表すように、同選手獲得はかねてからマインツの願いだった。片道12時間のフライトであるにもかかわらず、現場の最高責任者クリスティアン・ハイデルGMが日帰りで東京を訪れ、直談判したことからも、その意気込みは並大抵のものでなかったことが分かる。
そこで気になるのは「武藤は試合に出られるのか?」というところ。しかし、この心配はさほど必要ないと思われる。
マインツには日本代表FW岡崎慎司、韓国代表MFパク・チュホ、同MFク・ジャチョルらが在籍していたため、すでに東アジア出身選手に対する偏見は取り払われており、むしろ組織的なサッカーを標榜するクラブの哲学に合致しやすいため、好意的な見方をされている。もちろん「マーケティング強化」という面も全くのゼロではないだろうが、指揮官とGMのどちらもが「スピードがあり、俊敏で、技術も高い武藤が、アウトサイドの攻撃を強化してくれると確信している」と、その起用法について具体的に言及していることからも、同選手を戦力として計算していることは明白だ。
確かに、シュミット監督が主に採用している4-2-3-1の2列目は、MFヨナス・ホフマンとMFサミ・アラギがレンタルを終え、来シーズンはそれぞれの所属クラブに戻っていこうとも、マインツで最も人材豊富なポジションでもある。今季31試合に出場し、岡崎に次ぐ6得点を記録したMFユヌス・マリをはじめ、上述のMFク・ジャチョル、MFハイロ・サンペリオ、MFクリスティアン・クレメンス、MFパブロ・デブラシス、新加入のMFマキシミリアン・バイスターなど、武藤と同年代の選手がレギュラーの座を虎視眈々と狙っているのだ。
しかし、この6名の中で頭1つ抜けているのはMFマリだけであり、残り5名はほぼ横並び。また同選手はサイドよりもトップ下を得意としているため、そもそも武藤のライバルというイメージではない。つまり、MFク・ジャチョル、MFサンペリオ、MFクレメンス、MFデブラシス、MFバイスターに武藤を加えた6選手で2つの椅子を狙うという見方が正しいだろう。
武藤のライバルとなる選手はいずれも、すでにブンデスリーガの水に慣れてはいるものの、シュミット監督の信頼を完全に勝ち取ったとは言い切れない。攻守の切り替えにおけるスピードなど同監督が求めるレベルは決して低くないが、指揮官の要望に応え、持ち味である縦への推進力をチーム始動直後から積極的にアピールしていけば、開幕戦スターティングメンバーの中に武藤の名前が記される可能性は十分にある。