ドルトムントが日本で使用したチームバス。ラッピングの費用は約300万円
去る7月7日に行われたドルトムント対川崎フロンターレの試合は、満員のファンの前でドルトムントが“格の違い”を見せつける結果となった。親善試合らしい、リラックスムードの“ショー”を想像していたファンにとっては、いい意味で期待を裏切られる結果だったに違いない。それだけ、ドルトムントが今回のツアーに“本気で”臨んでいたということだろう。実際、その“本気度”は他にもさまざまな部分でうかがうことができた。
来日した7月6日には、試合会場となる等々力競技場でおよそ1時間半の公開練習を終えたあと、夜中の12時から横浜に場所を移し、さらにトレーニングを実施した。時差ボケを調整することが目的とはいえ、そのメニューはかなり激しいフィジカルトレーニング。はるばるドイツから来日しておきながら、日本の“夜の街”を楽しむような観光ムードとはほど遠い気合の入り方だ。このトレーニングが、翌日の6-0という結果につながった。
チームが本気なら、それをサポートするクラブも本気だ。例えば、選手の移動に使用されたチームバスは、黒と黄色のクールなデザインがSNS上で話題となった。来日ツアーのために、ラッピングされた本格的なチームバスを用意したクラブなど、おそらく史上初だろう。そして熱心なファンなら、そのデザインが本場ドイツで使用しているチームバスと全く同じであることに気づいただろう。ある関係者によると、このバスはわずか2日間の来日ツアーのためだけに、およそ300万円を費やしてラッピングされたものだという。
「チームバスのラッピング、ホテルやスタジアムに掲げた日本語のメッセージ入りの横断幕、都内を3日間に渡り走行したアドトラック、ファンに無料で配布された日本語のメッセージ入りカード、イベントなどで配布されたサインカードやグッズ……これらをすべて合わせると、かかった費用は恐らく数千万円になるでしょうね。もしかしたら、今回の来日ではほとんど利益が出ていない可能性もあります」(同関係者)
ヨーロッパのクラブの来日ツアーと言えば、普通は興行、つまり売り上げを目的としたものだ。しかし、利益よりもファンサービスと試合内容を優先したドルトムントの姿勢は、きっとファンにも伝わったはず。試合当日にも関わらず、選手の大半がスポンサーのイベントに出演し、日本のファンと多く触れ合ったことからもドルトムントというクラブの姿勢が分かる。クラブ関係者は一様に、「ドルトムントが日本でこんなに人気があるとは思わなかった」と振り返っていたが、今回の来日で、その人気がより高まったことは間違いない。