昨シーズンのDFBポカールを制したヴォルフスブルク [写真]=Bongarts/Getty Images
文=鈴木智貴
日本代表MF香川真司とMF丸岡満が所属するドルトムントのハンス・ヨアヒム・ヴァツケ社長は、今シーズンのブンデスリーガにおける自クラブについて、同リーグ3連覇中のバイエルンを追走する1番手だとは見ていない。
同社長はドイツ紙『ビルト』とのインタビューで「今シーズンもマイスターシャーレを獲得するのはバイエルンだろう。その可能性は90%を超えると言っても過言ではない。そして彼らを追うことができるのはただ1チーム、ヴォルフスブルクだ」と話し、リーグ2位に食い込み、加えてDFBポカール初制覇を成し遂げた同クラブこそ、バイエルンと優勝を争う存在だと考えている。
そんなヴォルフスブルクは5日から11日までスイスのバート・ラガツで合宿を行っていたが、同クラブがトレーニングを行っていた『Ri-au』という名の練習場は“優勝争い”を飛び越え、“優勝”に縁のある場所なようだ。
同練習場で2003年からグリーンキーパーを務めるイヴァン・ボンデラー氏によると「芝生がどういう影響を与えたかは分からないが、ここで練習をしたクラブの多くは成功していると言えるね」とのことらしい。
確かに先述の通り、2014-15シーズンの国内カップ戦をクラブ史上初めて制したヴォルフスブルクは3年前から合宿で『Ri-au』を使用。2003年に同地を訪れたリヴァプールは、その2年後にチャンピオンズリーグを制覇し、2004年欧州選手権で初めての戴冠に輝いたギリシャ代表も、大会前のキャンプで使用している。さらにはドルトムントも、バート・ラガツでキャンプを張った直後の2011-12シーズンにクラブ初の国内二冠を達成するなど、そのジンクスはなかなか強烈なものがある。
プレシーズンは毎朝5時半に起きるなど、管理に一切の余念がないボンデラー氏の作り上げるグラウンドは、当然ながら状態も極めて良好で、ヴォルフスブルクのディーター・ヘッキング監督は「彼の仕事は、採点1だね(※ドイツの採点方式は1が最高、6が最低)。さらに星も付けていいくらいだ」と賛辞を送っていた。また同氏によれば「リヴァプールのロイ・ホジソン監督(2010年7月から約半年指揮、現イングランド代表監督)が『芝をもっと短くしてほしい』と頼んできたから、再び芝を刈ったんだ。そのあとにドルトムントのミヒャエル・ツォルク強化部長がやってきたが、その(短く刈られた)芝が人工芝じゃないということを、最初は信じてくれなかったんだよ」という逸話も残っているという。
“王者の芝”でみっちりトレーニングを積んだヴォルフスブルク。2009年以来となるリーグ優勝は、いよいよ今シーズン達成されるかもしれない。
By 鈴木智貴