ラブコールを受けたドルトムントのトゥヘル監督 [写真]=Borussia Dortmund/Getty Images
ブンデスリーガ第11節が10月31日に行われ、日本代表MF香川真司が所属するドルトムントは、アウェーの地でブレーメンと対戦。一時は1-1に追いつかれながらも、終わってみれば3-1の順当な勝利だった。
ドルトムントのトーマス・トゥヘル監督もさぞかし気分が良かったのだろう。ドイツの複数メディアがオンラインで公開した試合後の両クラブ指揮官会見動画を見ると、同監督は「個人的なことだけど、ちょっといいかな?」と断りを入れながら、このようにブレーメンを称えている。
「マインツにいた時のように、ここの人々はみんな本当に親切で、平和な雰囲気が漂っている。ファンを見ても攻撃的だったり、乱暴な人間は全くいなかった。それでいて彼らはブレーメンというチームをしっかりとサポートしている。繰り返しになってしまうが、このような親切な人々がいる今日のここでの試合は、本当に楽しかったよ」
すると、ブレーメンのヴィクトール・スクリプニク監督とトゥヘル監督の間に座っていた、ブレーメンの広報ミヒャエル・ルドルフ氏が「あなたはまだ若い。ひょっとしたら、そのうちこのクラブで監督になることもあるかもしれませんね」と応答。苦笑いするスクリプニク監督とルドルフ氏を、身を乗り出しながら交互に見つめたトゥヘル監督が「君たち、ケンカでもしてるの?」と返すと、会見場はドイツ人記者の爆笑に包まれた。
スクリプニク監督が若干気を悪くした(?)ことに気付いたのか、場の雰囲気を取り戻そうとルドルフ氏が「他に質問はありませんか?」と見渡しても、いったん崩れてしまった空気はそう簡単には戻らない。同監督が「これが我々のチーム状況だよ」とジョークを返すと、トゥヘル監督は「(2人の関係は)全部見せかけってこと?」と笑いながらさらに追い打ちをかけていた。
おそらくルドルフ氏は、自らの発言により周囲のリアクションがここまで大きくなってしまうとは、予想していなかったのだろう。みるみるうちに顔は赤くなり、最後は「私がヴィクトール(スクリプニク監督)とまだこれからも一緒に仕事をしていきたいと思っていることは、ヴィクトール本人もちゃんと分かっていますから」と話すのがやっとだった。
ブレーメンはここ7試合で1勝6敗と調子が悪く、順位は2部3位との入れ替え戦にまわる16位。このまま成績が上がらなければ、スクリプニク監督の解任も十分あり得る話だ。仮にそうなってしまった場合、ルドルフ氏に対しドイツメディアからどのような質問がぶつけられ、同氏がそれにどう回答するのか――不謹慎だとは思いつつも、少しばかりそれが楽しみでもある。
文=鈴木智貴
By 鈴木智貴