ボルシアMGを率いるシューベルト監督(右から2番目) [写真]=Bongarts/Getty Images
ブンデスリーガ2015-16シーズン前半戦で最も関心を集めた人物の1人に、ボルシアMGのアンドレ・シューベルト監督がいる。
降格危機にあえいでいた2010-11シーズン終盤、リュシアン・ファーヴル氏が就任したボルシアMGは、その翌シーズンから組織的な守備と鋭いカウンター攻撃を武器に、再び強豪としての地位を築き上げた。しかし念願のチャンピオンズリーグ(CL)出場が叶った今シーズンは開幕からリーグ戦5連敗となり、ファーヴル監督は首脳陣の慰留を振り切って辞任という道へ。当時U-23ボルシアMGを率いていたシューベルト監督は、そんな混沌としたチームを引き継いだ暫定指揮官に過ぎなかった。
しかし就任から破竹の6連勝を飾ると、第14節ホッフェンハイム戦まで9試合負けなしの7勝2分。そして9戦無敗同士の対決となった第15節バイエルン戦では同クラブに今シーズン初めて土をつけ、1970年代にボルシアMGの黄金期を築いた故ウド・ラテック氏をも上回る「就任から10試合負けなし」というクラブ新記録を作り上げた。就任直後は18位だった順位も、今や来シーズンのCLプレーオフ出場権が得られる4位となり、同クラブがこの新鋭監督と2017年まで正式契約を結んだのも当然の成り行きと言えよう。
自信を失いかけていた選手を見事復活させたその秘訣について、シューベルト監督はドイツ紙『ビルト』にこう話している。
「監督をしていてナーバスになることはないよ。私のモットーは『もしベストを尽くしているのなら、不発に終わることは絶対にない』なんだ。それは選手にも説明した。『自分の任務を遂行することにだけ集中しよう。ミスをしても落ち着こう。そして勇気を持とう!』とね」
変化と挑戦――これこそシューベルト監督が最も重きを置いていることである。移籍についても「例えば、ある選手がバイエルンへ行ったが、その選手は活躍することができなかったとしよう。しかし私からすれば、それは失敗ではない。移籍を決心し、そこに自ら飛び込んでいったのだから」と考え、ネガティブな点は一切ないとしている。その根底には「例え現在の状態がうまくいっているとしても、いつも新しいことに挑戦しなければならない。立ち止まってはならない」といった信念があるのだ。
バイエルン戦での3-1勝利は、そうした精神から生まれている。同監督は首位を独走する王者を相手に、慣れ親しんだ4バックではなく、3バックで挑むという奇襲を仕掛け、それが見事にはまった。また主将のグラニト・ジャカが前半のうちに退場し1人少ない状態となったダルムシュタット戦では、左SBのスウェーデン代表DFオスカル・ヴェントを前線に上げる作戦が的中。同選手は勝ち越しゴールをマークし、ボルシアMGは3-2の逆転勝利を飾った。
わずか数カ月で名将への階段を一気に駆け上がったシューベルト監督。リーグ後半戦での戦いにも注目したい。
文=鈴木智貴
By 鈴木智貴