ヘルタ・ベルリンからフランクフルトへと移籍したベン・ハティラ [写真]=City-Press via Getty Images
1日、日本代表MF原口元気が所属するヘルタ・ベルリンで10番を背負うチュニジア代表MFアニス・ベン・ハティラが、日本代表MF長谷部誠が所属するフランクフルトへ移籍することが決まったニュースは、ドイツ国内で驚きとともに伝えられた。
確かに、ヘルタにおけるベン・ハティラの立場は万全とは言えないものだった。ヨス・ルフカイ前監督時代にはそれなりに出場機会を与えられていたものの、パル・ダルダイ現監督になってからはそれも激減。今シーズンに入ってからは昨季終盤よりも状況が悪化し、2015-16シーズンにトップチームの一員としてピッチに立てたことは1度たりともなかった。
しかしドイツ紙『ビルト』によると、移籍の理由はそれだけではなかったようだ。
事件が起きたのは先月30日のブンデスリーガ第19節、敵地でのブレーメン戦からベルリンへ戻っている途中のチームバス車内だった。その試合でヘルタは3-1と2点のリードを奪いながらも結局は3-3の引き分けに終わってしまった。すると、そのことをめぐりU-21ドイツ代表MFミッチェル・ヴァイザーとベン・ハティラがバス後方部で口論を起こし、ついにはベン・ハティラがヴァイザーの顔面を殴ってしまったという。
前方部に座っていたダルダイ監督は当初これに気付かず、ベルリン到着後に知らされたため、翌日のトレーニング前、同監督はミーティングを実施した。その場でベン・ハティラ本人が事件を説明し、ヴァイザーへの謝罪も済ませているが、『ビルト』紙によると指揮官はその後ヘルタ主将で元スイス代表MFファビアン・ルステンベルガーら古株8人を監督室に招集し、話し合いを行ったという。そしてその結果、ベン・ハティラとヘルタは別離に向けて歩みだすということが決まったそうだ。
ただし同選手によれば「ヘルタにそのまま残るチャンスもあった」そうだが、「フランクフルトからオファーが来た。アルミン・フェー監督やブルーノ・ヒュブナーSDのことは昔から知っているし、これを受け取ることにした」と、4年半所属した首都のクラブを去ることを決心したという。
ベン・ハティラはフランクフルトでの入団会見で「このテーマについては、あまり話したくない。僕がやってしまったことは、決して正しいものではなく、ヴァイザーにはきちんと謝罪をした。僕のことを知っている人間であれば、僕が規律を持った人間であることを分かっているとは思うけど…でも起こってしまったことは変えられない。こういうことは2度と起こさないようにする。とにかくフランクフルトに移籍することができて、心から嬉しく思っている」と、神妙な面持ちで話している。
ちなみにこの事件後ヴァイザーの左目付近には、かすかに青アザが残っていたが、チームメイトのMFアレクサンダー・バウムヨハンなどはプレスに対し「彼を殴らないでください!」と冗談を飛ばすなど、ヘルタにも再び明るい雰囲気が戻っているようだ。
文=鈴木智貴
By 鈴木智貴