試合中断騒動で話題となったツヴァイヤー主審(左)とシュミット監督(中央) [写真]=Bongarts/Getty Images
2月21日に行われたブンデスリーガ第22節で、レヴァークーゼンは日本代表MF香川真司が所属するドルトムントと対戦し、0-1で敗れた。この試合でレヴァークーゼンのロジャー・シュミット監督がフェリックス・ツヴァイヤー主審の退席命令を無視したためゲームが9分間にわたり中断したこと、そして同24日にDFB(ドイツサッカー連盟)管轄のスポーツ裁判所がシュミット監督に5試合(2試合は執行猶予付き)の立ち入り禁止と罰金2万ユーロ(約250万円)を命じたことは、すでに各メディアで報じられている。
では、ブンデスリーガのその他関係者は、DFBのこの判決に対しどのような感想を持ったのだろうか。以下は、ドイツ紙『ハンブルガー・アーベントブラット』が伝えたコメントである。
「厳しいものだが、細心の注意を払って決められたことだ」(DFB:ライナー・コッホ暫定会長)
「このような結果になるということは明確だった。これ以上はあまり言いたくないが、ああいう行動をしてしまえば何らかの問題が起こる、ということを考えておかなければならない」(ドルトムント:ハンス・ヨアヒム・ヴァツケ社長)
「『審判への批判などはやめたほうがいい』という、ある種のサインになった。すべての監督が、感情をコントロールしていかなければならないだろう。我々がいつも審判の笛に納得するかといえば、それはもちろん難しい。でも“度が過ぎる”ことはしないほうが良い」(シュトゥットガルト:ユルゲン・クラムニー監督)
ブンデスリーガ53シーズンの歴史で初となった今回の事件について、最も落胆しているのはDFB審判委員会の代表を務めるヘアベアト・ファンデル氏だ。同氏は「相変わらず言葉が出ないよ。今や審判へのリスペクトはなくなってしまった。これは本当に受け入れられないことだ。(審判へのリスペクトを欠いた人間は)早急に態度を改めてほしい。礼儀、リスペクト、そしてフェアプレーこそ、紛れもなくサッカーの中心なのだから」と、悲痛な思いを語っている。
確かに今シーズンのブンデスリーガでは、ハンドの見逃し、PKおよびオフサイドの不可解な判定が時折見られ、ドルトムントのトーマス・トゥヘル監督やバイエルンのカール・ハインツ・ルンメニゲ社長などは、ビデオ判定の導入を強く求めていた。そして今月中旬にはブンデスリーガを運営するDFL(ドイツ・フットボールリーグ社)が、来シーズンから試験的に同判定を導入する計画であることを発表。ドイツサッカー界もデジタル化に進みつつある。
しかし、だからといって、ピッチ上で選手とともに走り、彼らを裁く審判員の尊厳は、決して損なわれるべきではない。その理由はいたって単純。彼らがいなければ、サッカーは決して成り立たないからである。
審判委員会のトップであると同時に、祖国のサッカーを愛する1人の人間でもあるファンデル氏は、最後にこう締めくくっている。
「今シーズンに入ってから、ドイツサッカー界は負のスパイラルに陥っている。すべての小さな判定が過剰に批判され、いつも審判が言い訳に使われているからね。プロサッカーの人間がこのような振る舞いをしていては、(子どもを含む)アマチュアリーグにまで悪影響を及ぼしてしまう。この国のサッカー文化が壊されつつあるのだ」
文=鈴木智貴
By 鈴木智貴