陸上トラックが併設されているベルリン・オリンピアシュタディオン [写真]=Bongarts/Getty Images
19日、ブンデスリーガ第27節が開催され、FW原口元気が所属するヘルタ・ベルリンは、同選手の1ゴール1アシストの活躍もあり、ホームでインゴルシュタットに2-1で勝利した。これにより4位シャルケとの勝ち点差を4とし、順位も3位をキープ。17シーズンぶりのチャンピオンズリーグ出場に向けて、その歩みをさらに進めている。
そんな中、同クラブのファンにとってもう1つ喜ばしいニュースが聞こえてきた。21日付のドイツ紙『ビルト』が報じたところによると、ヘルタがサッカー専用スタジアムの建設を計画しているという。
公式記録によると、先述のインゴルシュタット戦における観客数は4万385人、第26節のシャルケ戦は5万1424人だった。この数字はブンデスリーガクラブとしては決して少なくないが、そもそもヘルタの本拠地オリンピア・シュタディオンの最大収容人数は7万4244人。つまりどちらも3~4割は空席だったことになり、現場の客入りもやや寂しい感覚があった。
現状についてミヒャエル・プレーツ強化部長は『ビルト』に対し、「私は(現役時代も含め)20年間このクラブにいるが、平均観客数はこれまでずっと似たような感じだった。だいたい5万人くらいだ。しかし今後、もっと多くのファンが来てくれることを願いたい。このチームは、多くの観客の中でプレーするのに値するチームだと思っている」と、インゴルシュタット戦後に嘆いていた。しかし同時に「オリンピア・シュタディオンは確かに素晴らしいスタジアムだ。しかし(熱狂的サポーターが陣取る)東側スタンドのような雰囲気を、スタジアム全体で見られるようになりたい。その解決策を考える時にきたようだ」と話し、ホームグラウンドの移転を示唆している。
実は2008年に1度、ヘルタには新スタジアム建設の計画が持ち上がっている。しかし、それから2年後の2010年、同クラブはブンデスリーガ2部へ降格してしまったため、話は立ち消えになったという。それ以降、プレーツ強化部長の口からスタジアムに関する話が出てくることはなかったが、今回は2度目。裏を返せば、同強化部長もそれなりの覚悟を持って言及したとも受け取れる。
そもそも、オリンピア・シュタディオンからの撤退は、ヘルタにとって決して悪いことではない。もちろん新スタジアム建設となれば莫大な金が必要となり、いわゆるローンを組まなければならなくなるため、一定のリスクを背負うことになる。しかし現在の本拠地はあくまで公共の建造物であり、試合のためにその場を“借りている”にすぎない。仮に新スタジアムを建設し、それをクラブの所有物とすれば、これまで発生していた賃貸料を支払わなくてもよくなり、利益の増加が大幅に見込まれる。さらにプレーツ強化部長は、オリンピア・シュタディオンに存在している陸上用トラックを排除し、サッカー専用スタジアムにする考えだという。当然のことながら、ピッチに近くなればなるほど臨場感はより高まり、現場に足を運ぶファンにとっては魅力的なサッカー観戦となるのだ。
収容人数や立地、資金など、今後クリアしていかなければならない課題は少なくない。しかし新スタジアム建設は、ヘルタというクラブの価値を高める可能性も大いに秘めている。果たして首脳陣は、どのような決断に至るのだろうか。
文=鈴木智貴
By 鈴木智貴