ヨーロッパリーグ準々決勝でかつての恩師ユルゲン・クロップ率いるリヴァプールに土壇場での逆転負けを喫し、ブンデスリーガのタイトルもいよいよバイエルンの手中に収まろうとしている。つまり、ドルトムントにとって優勝の可能性を残す大会は、5月21日に決勝が行われるDFBポカールのみ。一見モチベーションの低下が起こってもおかしくはないそんな状況の中で、しかし背番号23は再び輝きを取り戻している。
思えば、2016年に入ってからの日本代表MF香川真司を待っていたのは、苦難そのものだった。ベンチ入りこそ果たしたが、胃腸炎を患い後半戦初戦の第18節ボルシアMG戦で今季初のリーグ戦不出場となると、第20節アウェーのヘルタ戦では「パフォーマンスの問題」(トーマス・トゥヘル監督)によりまさかのベンチ外。その後も先発と出場なしを交互に繰り返し、第23節ホッフェンハイム戦では珍しく「自分自身も危機感だったりいろんなものを持ってやってますし、やることを大きく変える必要はないし、前半戦に自分が積み上げてきたものもあるわけで…でもそれが後半戦(に入ってから)継続できてるかって言ったらそんなに甘くはないですから」と弱音を吐くことさえあった。
そもそもの発端は、トゥヘル監督がチーム内の状況を自ら壊したことにある。シーズン前半戦で機能していたシステムを変え、メンバーの固定もなくなり、指揮官の要求はさらに高度なものとなった。4-3-3の左インサイドハーフという新境地を開拓した香川も、手に入れたばかりの“安住の地”を奪われ、文字通り一からのスタートを余儀なくされた。だが、もちろんそれは他の選手にも共通することであり、試行錯誤を繰り返す中でもチームは失点を格段に減らしながら、無敗街道を突き進んでいた。香川にとっては忍耐の時だった。
By サッカーキング編集部
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