ヘルタが本拠地を置く、ベルリン・オリンピア・シュタディオン [写真]=Bongarts/Getty Images
日本代表MF原口元気の所属するヘルタ・ベルリンが、本拠地オリンピア・シュタディオンの借用契約に頭を悩ませている。
ドイツ紙『ビルト』が伝えたところによると、同スタジアムの管理会社『オリンピア・シュタディオン・ベルリン』とベルリン市は、ヘルタに約1億3000万ユーロ(約160億円)の新契約書を突きつける予定だという。
ヘルタと『オリンピア・シュタディオン・ベルリン』が結んでいる現行の契約は2017年で切れるが、それ以降の賃貸料はこれまでのほぼ倍となり、年間750万ユーロ(約9億2000万円)。しかも期間は15年という異例の長期契約で、また同時に同社が指定する年間100~150万ユーロ(約1億2200万円~約1億8300万円)もの支払いが必要なケータリング会社を利用しなければならない。
しかし、ヘルタのチケット収入は観客1人につき平均12ユーロ。年間750万ユーロもの賃貸料をまかなうためには、ホームで毎試合3万7000人を集めなければならない。今シーズンは平均4万7500人を記録しているため、これが続けば赤字になることはおそらくないが、先述のように1シーズン100万ユーロのケータリングサービスもここに上乗せされるため、利益はほとんど出なくなってしまう。同クラブのマネージャーを務めるミヒャエル・プレーツ氏が「向こう15年間で1億ユーロを超えるという彼らの要求に、我々は大きなショックを受けている」と、途方に暮れながら話すのも無理はない。
2024年までに自前のスタジアムを建設することを、ヘルタが計画しているのは既報の通り。しかし、現在突きつけられている新契約を結んでしまうと、2032年までオリンピア・シュタディオンを使用しなければならなくなるため、そのプランは軌道修正どころか、根底からなくなりかねない。
では、そもそもなぜ運営会社やベルリン市議会は、こんな法外ともいえる値段、そして長期契約を吹っかけてきたのだろうか?
『ビルト』紙によれば、オリンピア・シュタディオンから撤退し、自前のスタジアムを持とうとしているヘルタに対する、ある種の“報復”である可能性もあるという。ベルリンサッカー協会のベルント・シュルツ会長は以前、「年に1回のドイツ代表戦、同じく年に1回のDFBポカール決勝、そして年に数回のコンサートだけでは、スタジアムの運営維持は非常に難しい」と話していた。つまり、運営会社やベルリン市にとっては、「ヘルタあってのオリンピア・シュタディオン」であり、「ヘルタがいなくなる=多額の負債」ということを意味する。したがって「いずれいなくなるのであれば、今のうちにお金をもらっておこう」と考えていても不思議ではない。
ただし、これらはあくまで口頭で伝えられただけであり、実際に文書で送られてきたわけではないため、交渉の余地はまだ残されている。果たして翌々シーズンのヘルタは、どのスタジアムでボールを追いかけることになるのだろうか。
文=鈴木智貴
By 鈴木智貴