今季も驚異的な強さで4連覇を達成したバイエルン [写真]=Bongarts/Getty Images
今シーズンのブンデスリーガは、またしても絶対的王者のバイエルンが通算26度目のリーグタイトルを獲得する形で締めくくられた。史上初の4連覇を成し遂げたチームは、第7節でトップに立って以降、一度も首位の座を譲ることなく、圧倒的な強さを見せつけた。2位ドルトムントも昨シーズンのバイエルンが記録した勝ち点79に迫る勝ち点78を積み上げて優勝争いを盛り上げたが、王者の安定感は揺らぐことがなかった。
熾烈を極めた欧州カップ戦争いでは、終盤戦の追い上げで3位の座を確保したレヴァークーゼンと、監督交代によって蘇ったボルシアMGが躍動。一方でシャルケは2シーズン連続でチャンピオンズリーグ出場権を逃し、シーズン前半を3位で折り返したヘルタ・ベルリンは、終盤に失速して7位フィニッシュという結果になった。
また、中位、下位に目を向けると、昇格組のインゴルシュタットが11位、ダルムシュタットが14位と大健闘。揃って残留を果たすサプライズを見せた。一方、昨シーズンは最終節で残留を決めたハノーファーが14年ぶりの2部降格。また、2006-07シーズンの王者であるシュトゥットガルトが41年ぶりの降格という憂き目に遭った。そうした1部の常連クラブと入れ替わる格好で、来シーズンはライプツィヒが初めて1部に昇格するため、ブンデスリーガの顔ぶれも新鮮なものになりそうだ。
■1位:バイエルン(90点)
史上最多25回目のブンデスリーガ優勝、そして同リーグ初となる4連覇も達成するなど、今シーズンもバイエルンの1強体制が覆ることはなかった。第2節~第5節は2位に位置していたが、第6節で5試合ぶりに首位の座を奪還すると、そのまま1度も陥落することなく、最終的に1つ下のドルトムントとは10ポイントの差をつけシーズンを終了。もはや同クラブにとって定番となりつつあるリーグ新記録も、計21試合で無失点、開幕10連勝、過去最少の17失点、リーグ通算1000勝到達1番乗りなど、チームで成し遂げたものだけでなく、FWロベルト・レヴァンドフスキの史上最速9分間で5ゴール、外国籍選手シーズン最多得点など、個人記録も次から次へと誕生した。
DFザーダール・タスキは期待外れに終わったが、MFキングスレイ・コマン、MFドゥグラス・コスタ、MFアルトゥーロ・ビダル、MFヨシュア・キミッヒら、その他の新加入組は早々にフィット。いずれもリーグ23試合以上に出場し、王者の名にふさわしいプレーを披露している。やみくもに資金を使い込むのではなく、確固たる補強戦略に基づいてチームを発展させていく――バイエルンの力強さを改めて認識させられた1年だった。
■2位:ドルトムント(90点)
7シーズンという長期政権を築いたユルゲン・クロップが去り、トーマス・トゥヘル監督の下、新たな船出となったドルトムント。プレシーズン序盤は、前任者が好んでいた4-2-3-1を軸としていたが、徐々に“トゥヘル色”が反映されるようになり、シーズン前半戦は両SBが高い位置を取る4-3-3を基本フォーメーションとして、爆発的な攻撃力を見せつけた。
後半戦に入り、同監督がメンバーの固定をやめ、新たな3-2-4-1にトライしたことで、前半戦のような流れる攻撃は鳴りを潜める時期もあった。しかし年明け後のリーグ戦で喫した敗戦は第33節フランクフルト戦のみで、また得点についても最終的にバイエルンを上回る82ゴールを記録し、クラブ史上最多得点を達成。そしてブンデスリーガ歴代2位の中で最も多くの勝ち点を収めているだけでなく、なんと52シーズン中、45シーズンで優勝を獲得できるほどであった。勝負の世界で“たられば”は禁句だが、仮にバイエルンという絶対的王者の存在がなければ、最終節を待たずしてマイスターシャーレ(優勝皿)はドルトムントの手に渡っていたはず。就任1年目にしてこれだけの成績を残したトゥヘル監督の手腕は、間違いなく称賛に値する。
■3位:レヴァークーゼン(80点)
開幕2連勝で3位に立ったかと思えば、3連敗を喫し一時は13位にまで転落。なかなか成績が安定せず、主審の退席命令に応じなかったロジャー・シュミット監督が5試合のベンチ入り禁止を言い渡されるなど、レヴァークーゼンに関する明るくない話題は少なくなかった。しかしリーグ戦ラスト9試合を8勝1敗で乗り切り、第32節ヘルタ戦で来シーズンのチャンピオンズリーグ本戦出場権を獲得。終わってみれば、4位ボルシアMGとも5ポイント差をつけ、強豪クラブとしての面目は保つことができた。
夏の移籍市場が閉まるギリギリのタイミングで、レアル・マドリードやマンチェスター・Uなど強豪クラブ在籍経験もあるFWチチャリート(ハビエル・エルナンデス)を獲得できたことも、非常に大きかった。加入からの6試合で決めた得点はたった1に終わったものの、その後第10節から第17節までの8試合で同選手は一挙10ゴールをマーク。ブンデスリーガの水にあっという間に慣れ、加入1年目とは思えない活躍を残している。
ただし、選手層の厚さはもともとトップレベルにあり、本来であればもっと早い段階で3位以内を確定していてもおかしくはなかった。いかに好不調の波を少なくするかが、来季に向けての大きな課題となるだろう。
■4位:ボルシアMG(70点)
誰もが予想していなかった開幕5連敗、そしてリュシアン・ファーブル監督の電撃辞任――入れ替え戦に巻き込まれた2010-11シーズンの悪夢が頭をよぎったファンも少なくなかっただろう。
しかしU-23から内部昇格したアンドレ・シューベルト暫定監督が指揮を執りだしたところ、スタートダッシュ失敗を帳消しにする6連勝。順位も最下位から5位に浮上している。また最大のハイライトは第15節バイエルン戦。そこまでの9試合で無敗同士の対決は、ネームバリューでジョゼップ・グアルディオラ監督に大きく劣るシューベルトに軍配が上がり、今季最高の3位に浮上した。
就任後6連勝というとてつもないインパクトを与え、暫定から正式監督となったシューベルトだが、結果的に第11節以降は、第33節と第34節以外に連勝を記録していない。連敗も2度しかしていないのは、もちろん評価できるが、レヴァークーゼンと同じく安定とは無縁なシーズンだった。
今シーズン、ホーム&アウェーのどちらもバイエルンに土を付けられなかった唯一のチームであり、彼らのポテンシャルは決して低くない。それだけに下位との対決で取りこぼしがあったことが、非常に悔やまれる。
■5位:シャルケ(60点)
パーダーボルンを史上初の1部昇格に導いたアンドレ・ブライテンライター監督にバトンを託したシャルケは、開幕から第7節までを5勝1分1敗で乗り切るなど好スタートを切るも、その後の7試合は1勝2分4敗と急ブレーキ。順位を8位にまで下げてしまった。結果、シーズンを通して不安定した戦いを続け、2シーズン連続でチャンピオンズリーグ出場を逃している。
中盤では新加入のMFヨハネス・ガイスが主力としての地位を瞬く間に築き、「ボーフムが生んだ天才」と謳われたMFレオン・ゴレツカも復活。さらにMFレロイ・ザネも33試合で出場するなど、若手の活躍が目立った。その一方で、ブレーメンから600万ユーロ(約7億3000万円)で獲得したFWフランコ・ディ・サントは2ゴールのみ。DFザシャ・リーター、DFジュニオール・カイサラのどちらも右サイドバックとして固定されることはなく、同ポジションにおける内田篤人の重要性が改めて浮き彫りになるなど、補強については合格点に達したとは言いにくい。
最終節の試合後、アンドレ・ブライテンライター監督は涙を流しチームに別れを告げたが、この5年強でシャルケを去った指揮官は6人目。同クラブにおける解任劇は、今や見慣れた光景となってしまった。
■6位:マインツ(90点)
素早い攻守の切り替えを信条とするマルティン・シュミット監督の下、地方クラブの1つに過ぎなかったマインツは、今シーズン大躍進を遂げた。
序盤の10試合は4勝6敗でやや低調だったが、第11節から第16節までを3勝3分と持ち直し、順位も第14節以降は1桁を常にキープ。最終的に6位で閉幕を迎え、クラブ史上初のヨーロッパリーグ本戦出場を決定しただけでなく、ホームで公式戦17連勝中だった王者バイエルンを倒すなど、歴史的出来事の多い1年間だった。
スポーツディレクターを務めるクリスティアン・ハイデル氏の手腕も光った。本来の右サイドバックがらセンターバックにコンバートされたDFレオン・バログン、攻守に安定感のある左サイドバックのガエタン・ブスマンと右サイドバックのジュリオ・ドナーティ、無尽蔵のスタミナを誇るMFダニー・ラッツァ、ポストプレーが得意な肉体派センターフォワードのジョン・コルドバ、そして日本人歴代最速ハットトリックを達成したFW武藤嘉紀など、今シーズン中に獲得した面々は、いずれもマインツの重要なピースとなり活躍を残している。
資金は少なくとも、上位進出は可能――ハイデルSDとシュミット監督のタッグによるチームビルディングは、財政規模が小さいクラブにとって良いお手本となった。
■7位:ヘルタ・ベルリン(75点)
今シーズンのヘルタほど、「天国と地獄」という言葉が似合うクラブはない。
昨季最終節でようやく1部残留を勝ち取った同クラブは、今季も苦しい戦いを強いられることが予想されていた。しかしいざ開幕を迎えると勝利を積み重ね、前半戦は10勝2分5敗の3位。特に守備は大幅に改善され、第17節終了時点でバイエルンに次いで少ない18失点だったことには、誰もが驚きを覚えたはずだ。
現在マネージャーを務めるミヒャエル・プレーツ氏、そしてパル・ダルダイ監督がともに現役プレーヤーだった1999-2000シーズン以来のチャンピオンズリーグ出場を、現実のものとして捉えるようになり後半戦へ突入したが、落とし穴は待っていた。
年明け直後の5試合を4分1敗とし、さらには第27節インゴルシュタット戦を最後に白星から見放されてしまう。前半戦に貯めこんだ4位とのポイント差は試合を消化するごとに縮まっていき、第30節でついにCL自動出場権の座から陥落すると、ヨーロッパリーグのプレーオフ出場権が得られる7位で終戦している。後半戦に限った順位表を見ると、ヘルタは16位という成績だった。
ただし、ダルダイ監督にとってトップチームを丸1年間指揮したのは今季が初めて。それを考慮すれば、昨シーズン15位だったチームを7位に押し上げた手腕は評価されても良いのではなかろうか。来季は戦力の充実をさらに図り、欧州カップ戦で旋風を巻き起こしてもらいたい。
■8位:ヴォルフスブルク(50点)
2014-15シーズンはブンデスリーガで2位に入り、クラブ史上初のDFBポカール優勝にも輝いたヴォルフスブルク。昨夏には、シャルケから3500万ユーロ(約43億円)でMFユリアン・ドラクスラー、ボルシアMGからFWマックス・クルーゼ、そしてバイエルン3冠の立役者の1人DFダンテを補強し、大成功に終わった昨季以上の強さを手に入れたかに思えた。
しかし開幕から5試合を無敗の3勝2分で終えたところまでは良かったが、第6節でバイエルンに1-5という大敗を喫すると、チームは下降線を描き9位にまで転落。その後、再び勢いを取り戻し、第9節から第16節までは3~5位付近に位置していたものの、第17節シュトゥットガルト戦以降はチャンピオンズリーグ圏内に1度も浮上できず、7戦未勝利を2回繰り返すなどして今シーズンの戦いを終えている。
確かにクラブ史上初のCLベスト8進出、しかもレアル・マドリード相手に1stレグで白星を奪うなど、ヨーロッパの舞台では立派だったが、そのぶんブンデスリーガが疎かになってしまったという印象は否めない。
■9位:ケルン(60点)
ブンデスリーガ優勝を2回達成し、かつては上位の常連だったケルンも、90年代中頃以降は低迷が著しい。しかし今季は1991-92シーズン以来となる1桁順位となった。
ノーゴールに終わった試合が13回と、シーズン全試合の3分の1以上に上るケルンだが、失点数はバイエルン、ドルトムント、レヴァークーゼンに次いで少なく、堅守こそが彼らの最大の武器である。ボールを失えば、今季15得点で同ランキング5位のエースストライカーFWアントニー・モデストだけを最前線に残し、その他の10人で守備ブロックを形成。最後尾には成長著しいGKティモ・ホルンがゴールマウスを守り、敵の攻撃をことごとく遮断した。決して魅力的なサッカーではないが、ペーター・シュテーガー監督の守備戦術はブンデスリーガの舞台でも十分通用している。
そしてもちろん、DFドミニク・ハインツ、MFレオナルド・ビッテンコート、先述のFWモデストなどを獲得したヨルク・シュマトゥケSDの存在も忘れてはならない。主軸となる選手がもう2~3人増え、層に厚みが生まれれば、来シーズンは欧州カップ戦出場権を狙えるかもしれない。
10位から18位はこちら
「これを読めばすべてわかる! ブンデスリーガ 15-16シーズン「全クラブ通信簿」(10位~18位編)」
(https://www.soccer-king.jp/news/world/ger/20160525/445952.html)
By サッカーキング編集部
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