日本、マレーシア、シンガポールの3カ国を巡る2015年夏のアジアツアーが大成功に終わったドルトムント。さらなる市場開拓を志すクラブは今夏、海外遠征第2弾の地に中国を選択した。世界最大の人口を誇り、サッカー熱も極めて高い同国で販路拡大を図ることは、クラブの巨大な利益に直結するだけでなく、ドルトムントとチャンピオンパートナー契約を結ぶ中国の大手通信会社『HUAWEI』にとっても、国内市場に向けて存在感をアピールする絶好の機会となる。
ユーラシア大陸の東端が“Schwarz-Gelb”(黒と黄色。ドルトムントの愛称)で埋め尽くされる――そんな光景を見られるのは、もう間もなくだ。
中国遠征は、7月21~29日の1週間強…香川と会えるチャンスも!?
ドルトムントの中国遠征期間は、7月21~29日の1週間強。この間にテストマッチ2試合が予定されている。先着60名が申し込み可能な観戦ツアー『上海4日間の旅』では、4つ星ホテル『ファティンホテル&タワーズ』に宿泊しながら、ドルトムント対マンチェスター・U戦をスタジアムで生観戦できるだけでなく、日本代表で10番を背負う香川真司(予定)と面会できるという、ファンにとっては垂涎もののイベントまで用意されている。
ブンデスリーガのシーズン中、H.I.S.ではドルトムント観戦ツアーを提供しており、その際にも香川と会うことはできるものの、ドイツまで足を運ぶほどのまとまった時間は、誰もが確保できるわけではない。しかしながら今回のツアーで訪問する先は、数時間の移動で到達できる中国。普段多忙な日々を過ごすファンにとっては、「1度でいいから“生”の香川に会ってみたい」という積年の思いを実らせる、またとないチャンスだ。
『上海4日間の旅』が難しい方も、諦めるのはまだ早い。なぜなら今回はマンチェスター・C戦をスタジアムで見ることができる『深セン3日間の旅』も用意されているからだ。残念ながらこちらのツアーでは、香川との面会イベントは用意されていないが、4つ星ホテル『センチュリー・キングダム』に宿泊しつつも、価格はリーズナブル。ホテルからスタジアムまでの送迎も付いているため、慣れない土地で不安を覚えることもないだろう。いずれにしても、ドルトムントのサッカーを満喫できる観戦ツアーになることは間違いない。
香川、古巣マンUと対戦…公式戦さながらの好ゲーム必至!
7月22日に開催されるテストマッチ第1戦は、香川真司もかつて在籍していたイングランドの名門マンチェスター・Uが相手だ。4日のチーム始動日以降、中国遠征までに練習試合4回を予定しているドルトムントだが、対戦するのはいずれもアマチュアやブンデスリーガ2部のクラブなど、いわゆる格下ばかり。つまり、このマンチェスター・U戦は、彼らにとって今夏プレシーズンで初の“骨のある相手”となる。
ましてや同クラブは、名将ジョゼ・モウリーニョが就任した直後であり、選手は定位置確保のため死にもの狂いで挑んでくるはず。テストマッチというどこか牧歌的な雰囲気ではなく、公式戦さながらの熱い好ゲームになることが予想される。
宿敵グアルディオラ相手にどんな戦いを見せるか!?
7月28日のテストマッチ第2戦は、こちらも指揮官が交代したばかりのマンチェスター・C。彼らを率いるのは、今シーズンまでバイエルンを指揮し、世界中のビッグクラブがこぞって獲得を目指したジョゼップ・グアルディオラだ。同監督がブンデスリーガに在籍していたこの3年間、ドルトムントは常にバイエルンを追いかける立場にあり、リーグ戦での対戦成績は1勝1分4敗。また、DFBポカール決勝で2度激突しながら、どちらもタイトルを奪われてしまうなど、グアルディオラはドルトムントの野望をことごとく打ち砕いてきた。
豊富な資金で大型補強を重ねる“シチズンズ”、そしてグアルディオラを相手に、ドルトムントはどのような戦いを見せてくれるのだろうか。
中盤の選手層は欧州屈指、トゥヘル体制2年目の新たな“化学変化”に期待
トーマス・トゥヘルが監督に就任し、数年後を見越してまずは土台作りに着手すると思われた2015-16シーズンのドルトムントだったが、終わってみればバイエルンをも凌ぐ得点力を誇り、クラブ史上2番目の好成績を記録。新監督が行った改革は、周囲の予想をポジティブに裏切る結果となった。そんな彼らは来たるシーズンに向けすでに6選手を補強し、そのうちMFが5人を占めるなど、中盤の選手層は欧州屈指のものへと変貌を遂げている。
主将を務めていたDFマッツ・フンメルスがバイエルンへ、攻守にわたり多大な貢献を残したMFイルカイ・ギュンドアンがマンチェスター・Cにそれぞれ移籍したことは、クラブにとって間違いなく痛い出来事である。ただし先述のように、我々の考えをはるかに超える成績を収めたのが今季のドルトムントであり、香川をはじめ、多くの選手がたった数カ月で新境地を開拓できたのは、紛れもなくトゥヘルの手腕によるものだ。2016-17シーズンも、きっと新たな化学変化を見せてくれる――そんな期待を抱かずにはいられない。
By 鈴木智貴